誤算
ギルドへポーションを納入し帰宅した私は、頭を悩ませていた。
「どうかしたのかい?」
心配したラインハルトが直ぐに近付いてきてくれる。
「買い取り価格がね……」
つい先程に1度に十本入る鞄を用意し、意気揚々とギルドに向かったのだ。
全てを買い取って貰い鞄は軽くなったのだけれども、私はガックリと肩を落とすことになった。
何故かと言うとポーション一本辺りの買い取り価格が、思ったよりも高くなかったのだ。
売って利益は出るには出るのだけれども、それで大人二人と一匹を養うのは厳しい。
更にはポーション作りに忙殺されて、のんびりとコーヒーを飲んでいる時間なんてなくなるだろう。
「もしかして、また高い素材を買いすぎましたか?」
「ううん、そんなことはなかった。気になって、色々と値段を調べてみたんだけど、どれも同じような値段だったよ」
そう、材料となる薬草などの費用の問題ではないのだ。
だからこそ問題は深刻で、今のまま多くの利益を上げるためには、それこそ馬車馬のごとく頑張らなくてはいけない。
でもそんなことはしたくないし、フェリ君が許してくれないだろう。
「何かいいアイデアは無いかな……」
品質を落としたり水で薄めると利益率は上がるだろう。
でもそんなことをすれば、きっと直ぐにギルドにバレて買い取っては貰えなくなるかもしれない。
どうすべきか頭を悩ませていると、フェリ君が口を開く。
『エリスはこの草が欲しくて悩んでいるの?』
「うん……」
『それならこの草は、町の外に生えてたよ?』
「えっ、本当なの、フェリ君!?」
『うん、エリスがいつも使ってるから匂いを覚えてるし、間違いないよ』
「そっか……そうだよね。高くて買うのが駄目なら、自分達で取ってきてもいいんだ!」
自分達で集めてしまえば、当然に材料費はタダだ。
フェリ君が匂いを辿って見つけられるなら、集めるのもそう大変な話ではないだろう。
「よし! そうと決まれば今すぐ取りに行こう!」
善は急げ。こうしてグズグズしている間にも、他の冒険者に採集されてしまうかもしれないものね。
「ちょっと、待って、エリス。行くってエリスもか?」
「ええ、そうよ。私がいかないと、必要な薬草がどれなのか分からないでしょ?」
「確かにそうかも知れないが……外には魔物もいるんだぞ?」
「うっ……」
薬草のことで頭が一杯で、魔物の存在をすっかりと忘れていた。
確かに私なんかが安易に町の外に出て魔物に襲われちゃったら、ひとたまりもないに決まっている。
「なら私は留守番するしかないよね……」
せっかくやる気になっていたのに、こればっかりは仕方がないか……と、そう思っていたら、フェリ君が再び口を開く。
『大丈夫だよ、エリス。君の事は僕が守るからね。魔物なんかに指一本触れさせないよ』
フェリ君は当然とばかりに、鼻から息を吐く。
それを見て私は思わずに笑ってしまう。
「ありがと、フェリ君。ねぇ、私も行ってもいいよね、ラインハルト?」
「はぁ……分かりましたよ。ただ一つ条件があります」
「条件?」
「ええ、絶対に私とフェリの側から離れないこと。勝手に走り出したりしては駄目ですからね」
「何よそれ……まるで私が子供みたいじゃない。そんなことするわけ……」
そう口に出して、最近の私の行動を思いだす。
令嬢という枷を取り外したということもあるけど新しい町での生活が楽しくて、ことあるごとにラインハルトを連れ回していたのだった。
確かにそんな姿を見ていたら、忠告の一つもしたくなるよね。
「大丈夫かい、エリス?」
「ええ、大丈夫よ。町の外に出たら大人しくしてると誓うわ」
「うん、頼んだよ。それと外に出るなら、格好を何とかしないといけないね」
「格好?」
「ええ、万が一に備えて革の防具は身に付けて貰います」
確かに私が魔物に襲われたら、一撃で殺られちゃう自信はある。
少しでも防ぐことが出きるなら、確かに防具は必要だ。
ラインハルトもフェリ君と魔物を狩りに外へ出る時は、しっかりと防具を身に付けている。
「わかったわ。それならまずは防具を新調に行きましょう!」
「ええ、この町で見つけた良い武具屋はあるので、案内しますよ」
「ええ、お願いね」
こうして私はタダで薬草を手にいれるべく、まずは装備を準備することになったのであった。




