マリン・ローズ・ヴァンチャントの考察
私には変な従妹がいる。
彼女の名前はアンジェラ。
母方の従妹である。
叔母様(母の妹)が玉の輿に乗り、公爵家に嫁ぎ、そこに生まれた末っ子。
母の本家は田舎の準男爵家で、お爺様はこれっぽっちも欲の無い人なので、母の姉等は平民の家にも嫁いだりしている。
かく言う我が家は士爵家。 騎士やナイトと呼ばれる家系だ。
「愛の無い結婚ほど不幸なものは無い」
いつもそう呟いているお爺様の過去に何があったのかは知らない。
そんな感じで母の一族は、とにかく身分差が激しいのだ。
彼女の父、フレデリック・ブレア・スペンフォード公爵は、よっぽど叔母様を愛しているのか、それとも尻に敷かれているのか、毎年新年には叔母様の親族全員をお屋敷に招いてくれる。
母方の親族では一番地位もお金もあるからこそできる事だと思う。
アンジェラとは1歳差なので、私もそんなに昔の事は覚えていないが、確か、彼女が5歳の頃、親族の男性が喧嘩をして、顔を近付けて睨み合っていた時に
「ちゅーするの? ちゅーするの?」
と目を輝かせていたことがあった。
おませな子だな、と思っていたのだが・・・・・・。
その後、会う度に彼女は、自分の兄と私の兄の「カップリング」なるものを披露してきた。
聞くだにおぞましい内容だった。
兄上に、煩悩は体を鍛える事で発散できる、と聞いたことがあったので、それから私はアンジェラを鍛える事にした。
それだけが理由では無く、彼女のような御令嬢は、いつでも護衛を引き連れているが、四六時中というわけでは無い。
最低限の護身術くらいは教えておくべきだと思ったのだ。
10歳になった頃、彼女はまた
「マリン姉様、机と椅子はどちらが攻めだと思いますか?」
と、頬を赤らめながら訳の分からない事を聞いて来たので、いつものように鍛えてやろうと思い、外に誘い出した。
ところがその年から、私はアンジェラに勝った事が無い。
頭を抑えられると、手が届かないのだ。
組み合う事さえ出来れば絶対に負けないのだが、私が背後から忍び寄っても、ヤツはすぐに反応する。
「私の中のロリレーダーが!」
と言って、すぐに振り向く。
私がどんなに護身術の重要性を説いても、ヤツは聞く耳を持たず、いつもゴロゴロダラダラしている。
「はいはい、筋肉最高! 筋肉筋肉~」
と、人を小馬鹿にした態度を取るのだ。
そんなアンジェラが今日、珍しく、一人の友人を紹介してきた。
素直じゃないアンジェラの事だから、きっとその友人に護身術を教えて欲しい、という事なのだろう。
そして、いつも学園では私を避けているアンジェラが、わざわざそんな事を依頼してきたという事は、その友人、ウメ嬢には、何か危険が差し迫っているという事なのだろう。
詳細は聞く必要が無い。 話したくなったら本人が話してくるだろう。
まあ当分の間は、私も陰ながらウメ嬢を見守る事にしよう。
食事を早々に切り上げて、私はウメ嬢に護身術を教え始めた。
ウメ嬢はかなり筋が良い。 そしてやる気に満ち溢れている。
次々に私の教える技を習得し、復習にも余念が無い。
この分であれば、早いうちに、護身術だけでは無く、攻撃術に移行できそうだ。
剣や槍など、武器を使った戦い方を教えてもいいかもしれない。
私やアンジェラとは違い、かなり頭の回転も速そうなので、もし彼女が望むなら、お父様に軍師としての教育をお願いしてみようか。
すみません、今日はここまでです。
思いの外たくさんの方々に読んで頂いていた事を知り、明日からは頑張るぞ~っ!と思っております。はい。次はもっといっぱい投稿したいな~、と。
ダイエットも明日から頑張るぞー_(:3」∠)_