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授業の開始を知らせる時計塔の鐘の音が鳴り響き、教師が梅ちゃんを連れて教室に入ってきた。
梅ちゃんはおどおどしながらも自己紹介を終え、私を見つけると嬉しそうに手を振ってきた。
「昨日はありがとうございました。 私、ウメ・マツタケ・フォスターです」
「ごきげんよう、アンジェラ・レベッカ・スペンフォードですわ」
「アンジェラ様、こちらの席、座っていいですか?」
この学園では特に決められた席というのは無い。
皆それぞれに、空いている席に座る。
私が頷くと、梅ちゃんは私の隣に座った。
なぜか私の斜め前に座っていたジークフリート王子が、わざわざ振り返って舌打ちする。
ごめんね、梅ちゃん。 この子、悪い子では無いのよ。 ちょっと甘やかされて育ってしまっただけで……。
「あ! 昨日の! 昨日は本当に申し訳ございませんでした」
梅ちゃんが慌てて立ち上がり、頭を下げる。
あまりに勢いよく頭を下げたので、思い切り顔面を机に打ち付けた。
ああ、梅ちゃん、鼻血が!
そっとハンカチを渡す。
梅ちゃんは照れながら「えへへ」と笑ってハンカチを鼻に詰めた。
私は聞き逃さなかった。
それを見たジークフリート王子が「変な女」と言ったのを。
「変な女」
それは、恋愛フラグ。
ジークフリート王子の態度があまりにも悪いので、ジークフリートルートは無いかなぁ、と思っていたのだけれど、アリなのかしら?
頑張れ、ジークフリート王子。
そして、なぜか私の前の席に座っていたエイリーク王子が、椅子を完全にこちらに向けて、私達の座っている机に頬杖をつきながら、梅ちゃんにやたらと話しかけ始めた。
既に授業は始まっていて、教師がこちらをチラチラと見ている。
注意したくてもできないよねぇ。 王子だもんねぇ。
「ウメ嬢は、フォスター子爵家の養女なんだって? 親戚なの?」
「え、ええ、まあ」
エイリーク王子は目を細める。
梅ちゃん、そいつは腹黒王子よ! しかも嘘を見抜けるチート野郎なのよ! 気を付けて!
「この国の出身なの? 今までどこの領にいたのかな?」
「ええと・・・・・・そのぉ……」
「エイリーク殿下、初対面の女性に、そのように根掘り葉掘り聞くものではありませんわ。 それに、もう授業が始まっていましてよ」
思わず助け舟を出していた。
「アンジェラ嬢は、何か事情を知っているのかな?」
「そんな事ありませんわ」
「へぇぇ~、ふぅ~ん、そう、そうなんだね」
エイリーク王子が悪い顔で笑っている。
しまった。 墓穴を掘った
すみません、今日はここまでで。
今度続き書いたらまた載せますね。
それではまた逢う日まで!あでゅ~!