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6.マヒルと時間旅行


「っていうか、さっきから気になってたんだけどマヒルは何でパジャマのままな訳?水玉パジャマってちょー可愛いんだけど!ぷぷーっ!」


 突然笑い出したサキの言葉に俺はハッとする。そういえば着替えてなかった。

 というか着替えのことなんか考えてもなかった。言われてみれば確かに、サキは研究員っぽいワイシャツと黄色のネクタイに、白衣を羽織っていた。


 最初に会った時に偉人だと勘違いしたのは服装のせいだったのかもしれない。


「う、うるせぇな。っていうかそんな服どこにあったんだよ。」

「部屋の棚を開けたら入ってたじゃない。もしかして見てないの?」

 そう言ってサキがニヤつく。


「俺はお前と違って物事をすぐ信用したりしない用心深い男なんだ。突然連れてこられた施設の棚を簡単に開けたりしないんだよ。」

「何よその言い方!あんたなんかずっとパジャマでいれば良いんだわ。このマンネンミズタマっ!」

「何だと?来世ではキノコなんかに騙されないように忠告してやってんだろ。このヘッポコアンポンタン!」


 そんな事を言い合ってほっぺたをつねりあっている俺たちに、マリさんが微笑みかけながら言った。


「さっそく仲良さげでなによりだ!山田くんの言う通り、2人作戦は良かったかもしれないね。そこで2人に今後の方針について相談があるんだけど、聞いてくれるかい?」


 俺とサキはお互いの頬から手を離さないまま耳を傾けた。


「君たちは、まだここに来て本当に間もない。2人は大丈夫そうだが、今まで招集した現地調査員の中にはこんなのは信じられないと部屋にこもりっきりになってしまった人もいた。だからまずはこの環境に慣れてもらう為にも、偉人探しより先に仲間を増やしてもらいたいんだ。同時進行は流石に難しいだろうからね。」


 なるほど、確かに俺の予習とサキの謎の順応力がなければ、一般人にはこの環境変化は耐えられないかもしれない。


「あの、ちなみに俺たちはなんでその現地調査員とやらに選ばれたんですか?」


「ん?それは完全に時の運さ!前の代がリタイアしてしまって人員が必要となった時にたまたま先着順で死んでしまったのが君たちだ。」


 うーわ、なにその天文学的な確率。


「そりゃあそうよね。何かしらの審査があるなら、フライパンも知らないマヒルが選ばれるはずないもの。」

 俺は無意識に指に入れていた力を強める。

「いーたい!いたい!ほっぺが伸びちゃう!可愛い顔が伸びちゃったらどうしてくれるのよ!」

 確かに顔だけは可愛いので反論できないのが悔しい。


「本当は、私と山田くんはこのランダムな制度が嫌いでね。なんだか君たちを使い捨てているような気がして。でもなかなか、今までの習慣や制度を変えるのは大変な事なんだ。君たちが元気の良い子で良かった。」


「と、話が逸れてしまったね。というわけでまず君たちには新しいお友達を見つけてきて欲しい。お友達も、ここに慣れる時間が必要だしね。」


「あの、見つけてくるのは良いんですけど、そもそも俺たちどうやってここから移動するんですか?」


「おおそうだった!大事な説明を忘れていたよ!」


 本当に大丈夫かこの人。

というよりこの人が大丈夫なら次の長官は誰でもいい気さえしてきた。


「君たちには私の自室にある転移用のカプセルに入ってもらう。そこから好きな時代の好きな場所に転移できるっていうスンポーさ!さっそくやってみるかい?」

「マリさん待ってください。この人は面倒くさがりだから省略したけど、転移には大事なルールがあるんだ。僕らが仕事をする"8限"は、地球でいう24時間だ。だから、1日という限られた時間で、君たちはここへ戻らなければならない。」


 なるほど、のんびり旅行とかは出来ないって訳だ。

結構大事な話だ。

 山田くんがいてくれて本当に良かった。


「つまり、マリさんと山田さんがこっちを監視していられる24時間の間に話をつけなきゃいけないって事ですね。」

「そういうことだ。」

「でもでも!一度戻ってきて、また次の勤務時間に続きに飛べば良いじゃない!」


 本当にコイツは、話を聞いていないようでたまに核心を突く。


「そういう訳にもいかないんだ。さっき長官は好きな時代の好きな場所へ飛べると言ったがそれは違う。僕たちは()()()()()()()()()の事は()()は出来ても()()は出来ないんだ。つまり、君たちは歴史的な事件や大きな災害、大きな事故が起こった場所の近辺へ飛ぶ事になる。そして時間も、事が起こる24時間前が限界だ。だから君たちが見つけた友人や偉人が次に飛ぶ時に生きている保証が無いんだよ。」


「なるほど…。ちなみになんでマリさんは()()()()()()()()とか、話を盛ったんですか?」

「だって…。その方がなんかカッコイイと思ったし…。それに!私にはフォローをしてくれる優秀な助手がいるからね!」


 ダメだこの人は。

しかし、今の説明で仕組みはわかったが、これって―。

「常に俺たちは危険なことが起こる24時間前に飛び込んで行くってことじゃないですか。」


「そういう事だ☆」


 なんだろう、すごく殴りたい。


「まぁでも安心してくれ。君たちは帰りたい時にいつでも帰ることが出来るからね!ただし、一度関わってしまった事象は、再び関わることはできない。つまり、やり直しは無しだ。」


「…これはホントですか?」

「信じてよっ!」


 俺の質問に、山田くんは静かに頷く。


「あぁ、今長官が言ったことは本当だよ。チャンスは一度きりだから、戻るタイミングも重要だ。ただ、こちらとしては命に危険が迫る前に戻ってきて欲しい。」


 いや、もちろんこちらとしても命の危険が迫る前に戻りたいです。

というか、結構大変じゃないのかコレ。


「難しい話はよく分からないけど、要は24時間以内に友達を作って一緒に帰ってくればイイわけよね?簡単じゃない!早速どこへ行くか決めましょう!」


 命の危険すらある旅の相棒がコイツか…。

まぁでもコミュ障の俺より、友達作りには向いているような気はする。


「そういうことさ!理解が早いね!で、早速1人目のお友達の提案なんだが…。魔法使いなんてどうかな?☆」



……魔法使い??


こんにちは。YUmi(ゆうみ)です。

最新6話更新です。

今回で時間旅行のルールが明らかになりました。

次回は初めての旅行の計画が提示されます。

果たしてマヒルたちがその計画に乗るのか、今から楽しみです。

それでは、この小説がみなさまの1週間を頑張る活力の一部になればと願って。

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