5.マヒルと現地調査員
現地調査員
アドミニで中心となって働いているのは歴史に名を残した偉人達らしい。
その偉人を連れて来る前に、偉人たちの施設への適性度を直接会って確かめてくる役だそう。わかりやすく言えばスカウトマンだ。
俺たちが近くからしかわからない偉人の情報を集めて、それを基に長官たちが適正を判断する。
何だか危険な匂いしかしない。
「戦争のど真ん中とかに置き去りにされたらどうしよう…。とかそんなこと考えてるだろう?大丈夫。安心してほしい。君たちの様子はこちらでしっかりモニターしてるから、危険はないよ。」
人の考えている事を読み取る力だけは抜群な長官が、ちっとも安心できないセリフを言ってきた。
そして俺のもう一つの不安要素。長官の横でビスケットを食っているソイツが久し振りに口を開いた。
「フライパンを知らないマヒルでも大丈夫!私は結構頭が良いから、私についてくれば良いんだわ!」
本当に不安でしかない。
「あの、偉人に会いに行くのは俺とサキの2人って事ですか?」
俺はこの中で唯一信頼できそうな山田くんに問いかけた。違うと言ってくれ。
「うん。そうだ。君たちには2人でまず乗り込んでもらう。君たちの前の代までは4人だったんだけど、長官と話して試しに2人にしてみようって事になったんだ。」
心の底から4人が良いと思った。
が、山田くんが続ける。
「実は4人を一度に集めると、内部の分裂が毎回起こったんだよ。2人なら、仲良くやるしか方法はないからね。僕が長官に進言したんだ。」
なるほど。言っていることはわかる。
わかるのだが、この短時間でも判断できる。
サキは間違いなくヘッポコだ。あのヘッポコと仲良くやるしか俺に道はないのか。
「そこで、君たちには偉人への接触ともう一つ、自由に決められる権利がある。2人まで、新しい人物の勧誘を許そう。ただし、一般人に限るけどね。」
希望の光が射したように思えたが、
ヘッポコと俺の2人と、今の生活を捨ててまで一緒に来たいと言う変わり者がいるとはとても思えない。
異世界生活を半ば諦めかけた俺は続けて質問をする。
「あの、ここって俺たち4人意外に人はいるんですか?」
「ああ、もちろん。アドミニは3つの班から構成されていて、それぞれの班が長官と副官1人ずつと、現地調査員4人の計6人から構成されているんだ。うちの班は特例で今は4人だけどね。」
「そしてその3つの班がここでの1日にあたる24限ある勤務を8限ずつ分担して行うんだ。8限働いて、8限を生活して、8限睡眠する。だから君たちの部屋の時計も24に分かれていたろう?」
偉そうなイスからこちらへ来て突然話に割り込んできたマリさんが長官ヅラをして付け足した。
なるほど、あの時計はそう言う意味だったのか。確かに日が昇ったり沈んだりしないのなら時計が12分割されている意味はない。
むしろ勤務時間がわかりやすい方が好都合だ。
すると突然サキが大きな声を出した。
「私!頭が良いから気付いちゃったんだけど、3チームで固定されてるなら新しい人を連れてくる必要ってないんじゃないの?」
いかにも頭が悪そうなのはさておいて、確かに良い質問だ。言っていることは間違ってない。
「実は長官と副官は任期が10年なんだ。つまり、24限を3650回繰り返すまでに、代わりとなる新しい偉人を見つけなければいけないって事さ!」
「さすがの我々も人口調整をしながら次の偉人を探すのは難しい。だから君たち現地調査員の出番ってわけだ!」
なるほど。大体の仕組みがわかってきた。
「ちなみに俺たちは任期とかあるんですか?」
「君たち現地調査員は基本的には2年の任期だ。まぁ、そこまで長続きする事はなかなか無いんだけどね。だいたいが仲間割れして辞退したり、遠征先で信号が途絶えたり、まあ色々だ!もって数ヶ月ってところかな!」
いや、ドヤ顔で言うことじゃない。前者は自害で、後者は事故死じゃねぇか。
「でもまぁ、君たちなら長くやっていけると思うよ!私の勘がそう告げているから間違いない!」
「長官は毎回これ言うから気にしないで。まぁ辛くなったら無理強いはしないから言ってね。」
優しい言葉をかけてくれる山田くんには言いづらいが、既にツライです。
「まぁとにかく、一通り説明も終わったしお仕事は明日からにするとして、今日は時計が次に16を指すまでゆっくり休んでくれ!あ、ちなみにウチのチームは3班だから、呼び出しがかかったらよろしくね。完璧な説明だったと思うけど、何か質問あるかい?」
自信満々なマリさんに、俺が言う。
「任期が終わったら俺たちはどうなるんですか?」
「残念だけど、生きていた頃とここでの記憶を消去して新しく生まれ変わる事になる。だからみんなにやる気がなくて、長続きしないのかもね…。でもまぁ人生の延長戦とでも思ってくれればいいよ!」
「出来るだけ君たちが楽しく出来るように心がけるから、私たちの後継を見つけてくれるのが君たちだと嬉しいな。」
そう言ってマリさんは、どこからか見つけてきた間違い探しの本を睨みつけているサキの隣に戻っていった。
どうせこれも―。
「マリさんがここまで言うなんて珍しいよ。実は僕たちの残りの任期が2年なんだ。次が見つかれば後は本業に専念出来るんだけど、見つかるまではああ見えて落ち着かないんだよ。君たちに期待してるのは本当だと思うよ。」
「どうなんすかね…。」
とりあえず出来ることだけやってみるか…。
そう思った。
こんにちは、YUmiです。
5話目です。
今回も読んでくださりありがとうございます。
マヒルたちのお仕事内容がついに明らかになりました。
これからが本番です。次回は時間旅行のルールが明らかになります。時間旅行には付き物ですからね。お楽しみに。