1話 マドンナに告白されたのにちんこがない
上手いこと出来ているなぁ、と思ったのは、俺のこの容姿の大変化にクラスメイトの誰もが気付かなかったことだ。
正確には、俺に何か変化が起きたのは間違いないのに、何が変わったのか全く分からないという皆頭が狂いそうな状況なのである。
いつも俺をからかってくる男子生徒達も、
「おい藤岡.......お前、あの、あれ.....髪切った?」
「つーかお前.........あれ、何か俺家帰りたくなってきた」
このザマなのである。
もっと極端な例もある。
隣のクラスのマドンナだ。
なんとわざわざ俺の席に近付いてきて、学校がざわめくラッキーイベント、古典の教科書貸して、を執行したのだ。
「はい。色々書き込みしてあるけど、気にしないで」
「うん、ありがとう!.......それと藤岡君.....なんか今日、いつもと違うね」
「そうかな?普段通りだけど」
「いつもより.....なんかちょっと、ドキドキする」
マドンナ、こと相澤杏奈はほんのり頬を染めて俺を見上げた。俺は鼻先をかいて、ほんの少しだけ口角を上げてみせた。クラスの隅で黄色い悲鳴が上がるが、これアルカイックスマイルだから。お前らが草つけて笑ったアルカイックスマイル。知ってはいたが、やはりイケメンの威力はすごい。
「なあロク、お前ってそういう感じだったっけ?」
「そういう感じ?」
昼休みに入ると、いつも昼食を共にする腐れ縁の柳瀬がおずおずと尋ねてきた。
「俺、いつもと何か違う?」
顔面は変えてもらった。
けど、性格をどうこう変化させなかったのは、彼女は欲しかったが友人は(こいつだけだが)失いたくないという強欲からだった。
「なんか嫌な思いとかさせてたら、謝る。けど俺は俺のままだよ」
柳瀬は俺をじっと見て、安心したように笑った。
「ほんとだな。勘違いだったわ」
「だろ」
「けどお前が突然モテだしたのはどういうわけなんだよ」
「.......洗顔した」