甘やかしすぎたんでしょうか
神父様、うちのドラ息子にはホント困ってるんです。わたしが甘やかしすぎたんでしょうか。わたしにはあの子のことが理解できません。
偏食がひどいし、そのせいか歯並びも悪くって。昼間は部屋にこもりっきりで、顔色は病的に青白いんです。
いえ、いわゆる、ひきこもりっていうんじゃなくて、夜中になると外に出て女の子と遊んでるみたいで、ときどき部屋に連れ込んだりしてるんです。
こっそりドアの鍵穴から覗いたことがあるんです。もちろんわたしには覗き趣味なんてありませんよ。あの子のことが心配で。
そしたら、あの子ったら、いやがる女の子の首すじにむりやりキスしてるんです。ホントねちっこいほどのキスなんです。あの子が首すじフェチだなんて知りませんでした。
女の子ははじめは抵抗してたんですが、途中であきらめたのかおとなしくなってしまいました。
見てられなくて、ドアの前を離れようとしたとき、部屋からあの子の声がきこえたんです。
――処女の味はこたえらんねえよ。
何もしらない女の子を凌辱しようとしてるんです。傍観してるわけにいかないじゃないですか。わたし、ドアを開けようとしたんです。そしたら、あの子のペットがわたしに噛み付いてきて。
ぞっとしました。どうしてコウモリみたいなペットを飼ってるんでしょう。それも、普通のコウモリとちがって変に凶暴なんです。
そうですね、神父様のおっしゃるとおり、わたしの甘やかしすぎなんでしょう。健康的な生活をさせるべきでしょうね。
わかりました、まずは偏食をなおします。今夜はニンニクをたっぷり効かせたペペロンチーノでも食べさせます。それから日光浴をさせて……、そうそう、今度、教会につれてきます。あの子のために十字架を買わなきゃ。
その前に、あの歯並びを矯正しなきゃいけないですね。それにしてもどうして犬歯だけ発達してるんでしょう。
わたしにはあの子のことが理解できませんよ。
《終》