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メモリー  作者: syara
#02 動き出す鼓動
18/46

戦場

「・・・・・冗談だろ」

 戦いの場が見えた、丁度その時だった。視界に飛び込んできたのは、おびただしい数の死体。その過半数がグランド兵のものだった。

 ヘル兵はほぼ犠牲なし。数の力で押し切られたのだろう。

 チラッっとフィーナの方を見る。彼女はヘル兵を強く睨み付け、握りしめたこぶしは震えていた。

「兵力差は圧倒的。敵兵は百前後。少数部隊にしても、こんな夜中の奇襲には十分な数だ。・・・・・やるんだな、フィーナ」

「当たり前よ。死んでいった兵士の無念を晴らす。そして、壁は絶対に守る」

「・・・・・・・わかった、僕も覚悟を決めるよ」

「ありがとう」

 一瞬の沈黙。敵がこちらに気付いたそのタイミングで、馬から飛び降り敵へ駆ける。

「私が魔法で薙ぎ払う!あなたは、援護をお願い!」

「わかった!」

 とはいえ、正面から向かってくる敵兵すべてを相手に出来るわけもない。工夫して戦わないと。これだけ敵がいればやれるはずだ。

 敵の集団の中に、短剣を両手にとって駆け込む。この短剣をもらった後セドさんと話したのだが、この2本の剣の有効的な使い方が見つかった。

『双剣?』

『そうだ。君は相手の虚をつく戦いができるし、身のこなしも軽い。その流れるような動きは、同時に2本の剣を扱うのに適していると思うよ』




「はぁ!」

 2本の剣で敵の剣をはじきながら、敵集団の中へ突入する。

「こいつ、ちょこまかとっ!」

「おい、待て。うわぁ!」

 これだけの数の人の中に、攻撃するべき人間は一人。だったら、かき乱してやればいい。自分の身を守りながら、敵同士で潰し合わせればいい。

「ハミル!防壁魔法!」

「了解!レゾナンス!」

 フィーナの指示通り、レゾナンスで防壁魔法を張る。直後、炎の波が敵をさらっていった。

 それでも、反応して身を守った兵士は数人いる。僕はそこへ駆け込み、短剣で斬りつけていく。

「・・・・・ふぅ。今ので3割ってところか・・・・・」

 敵はまだまだいる。今の戦闘を見ていたわけだから、簡単に同じ戦法が通じると思わない方がいいだろう。





「これが、戦場か」

 人を斬る感覚。覚悟していたつもりだったが、その生々しい重さが、人を殺しているのだと実感させる。倒れていくヘル兵。その返り血を浴びた僕の右腕は真っ赤に染まっていく。その色は皮肉にも、フィーナの眼と同じ赤。深い深い、深紅。

「それでも、戦うって決めたんだ」

 迷っても、止まらない。命を預けた友達のために。振り向かず、ただただ斬り殺す。この異常な戦場で生き抜くには、それしかないのだから。






 あと半分くらい、か。でも、最後まで体力が持つかどうか。フィーナの援護があるとはいえ、敵の真ん中で戦うという緊張は体力を異常に奪っていく。

「あの短剣使いと魔導士を分断しろ!個別に戦えば数で押し切れる!」

「ちっ!こんだけ減ればさすがに手を打ってくるか」

 むしろ半分減らせただけでも上出来か・・・・・。




 周囲を兵士に囲まれる。先ほどの戦いを見てのことか、無闇に攻めてくることはない。奥には魔導士が控えている。おそらく壁を急襲した連中だろう。フィーナが近づけないよう、遠距離から邪魔をしてくる。爆発音でフィーナの声も聞き取れない。取り囲んでくる兵士のせいで、僕らは互いを視認することもできない。どういう戦術を取るかはある程度想定できても、アイコンタクトもできなければレゾナンスのタイミングは合わせようもない。

「だったら、これしかないだろ!」

 背後から突き刺すように剣を放つ兵士を確認し、ギリギリのところでそれをかわす。その兵士の胸倉を掴み、流れに任せて地面に叩きつける。

 それを踏み台に、思い切り高く飛ぶ。そうすれば当然・・・・・。

「今だ!あの少年を狙え!」

「そりゃ、標的が目立つところに現れれば狙うよな・・・・・。でも!」

 僕がセドさんとの、文字通り死にかけるような特訓の中で身に付けた技。お前らに見せてやるよ。

「氷の弾丸。わざわざそれにしてくれて感謝するよ。それはもう見切ってる!」

 体を回転させながら、2本の短剣で氷の弾丸を撃ち落としていく。イリーナさんの魔法の方が、よっぽどギリギリのところを狙ってきて殺されかけた。

 そして、高所に飛んだ目的を果たす。敵の魔法を防ぎ切った後、フィーナの方に目配せする。それを見たフィーナも、こちらの意図を汲み取ってくれたようで、すぐに防壁魔法を使ってくれた。

 僕がレゾナンスで防壁魔法を展開すると同時に、上空にいくつもの魔法陣が現れる。そこから何度も雷が落ち、ヘル兵を攻撃していく。そして、残った兵士を僕で討つ。

「後は、残った魔導士だ・・・・・け・・・」

 そう、残っている魔導士の残党を倒せばいい。そう思っていた。しかし、着地して確認した先にいたのは、先ほどの10倍以上にも見える兵団だった。

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