【第1章】パーティと公爵家
「私をあなたのパーティに入れてもらませんか?」
部屋に来たミーナは唐突に言う。
この子はついさっき魔物に襲われていたことを忘れたのだろうか。
さっきの様子を見るに戦えるとは思えない。
まさに貴族のお嬢様といった感じだ。
「ミーナ、冒険者とパーティを組むことの意味が分かるか?」
「え?」
パーティを組むということは利点も多いが危険も多くなる。
相手がそれなりの実力者ならば自分を自分で守ることができるがミーナがそうだとは思えない。
「冒険者は常に危険が伴うし、戦いになればお互いの命を預けることになる。それがパーティだ。」
「まず聞くが君は戦えるのか?」
「戦いの経験はありません。」
そうだろうな。
そうでなければDランクの魔物とはいえオークから逃げることくらいできるだろう。
「・・・ですが私には治癒能力があります!」
治癒能力だと!?
治癒能力はあらゆる能力の中でもかなり稀有なものだ。
Eランクなら軽い傷や風邪などを治すことができる。
高くなるにつれて効果が高くなり、Aランクならば死ななければすべての傷を治すといわれている。
しかしAランクの治癒能力者は教会の聖女以外には存在しないとされている。
聖女の素性は謎に包まれており、教会内でも姿を見たものは司祭くらいしかいないらしい。
内心で驚きつつさらに問う。
「・・・ランクは?」
「・・・Aランクです。」
聞き違い・・・・ではないよな。
つまり彼女はその聖女だとでも言うのだろうか?
聞いて素直に答えるとは思えないが聞くべきだろう。
「君は聖女なのか?」
「いいえ。私は聖女ではありません。」
ミーナははっきりと告げた。
嘘をついているようには見えない。
「改めて自己紹介をさせていただきます。私の名はミーナ・クレセント。クレセント公爵家の一人娘です。」
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貴族──王家、公爵家、男爵家、準男爵家の4階級からなるその国の重鎮だ。
男爵、準男爵は国に対して大きな功績を残した者に国王が与える。
それに対し公爵は国の中枢を担い、国王に代わり国を動かしている。
つまり国王の次に階級の高い貴族だ。
公爵家の一人娘ということは本当に貴族のお嬢様だったということか。
公爵家のお嬢様ともあろうお方がなんでこんなところに・・・?
なんだか只事ではなさそうけど・・・まあいい。
「わかった。ただし条件がある」
「条件ですか?」
「条件は大きく二つだ。まずパーティでの行動中は基本的に俺の指示に従ってもらう。」
「それから現状ミーナは戦いの経験がない。だから君は後方で俺のサポートに徹してもらう。」
これだけは絶対に譲れない条件だ。
ミーナの能力を最大限活かして、且つ俺の邪魔にならないようにしてもらわねばならない。
俺は魔法で戦い始めてからあまり近接して戦うことがなくなったが前は剣で戦ってたしな。
近距離での魔法戦闘というのも試してみたいし。
あとカッコいい。
「この二つの条件を守れるのならパーティを組もう。」
ミーナは少し俯き考え込んでいたが
「わかりました。これからよろしくお願いします。アルトさん!」
こうして俺に初めてのパーティメンバーが加わったのだった。
すいませんリアルが忙しくて今回の更新は少し短めです。
予定通り次回は幕間を挟んで投稿します。
世界観に関してですが、アルトの過去話と一緒に少しずつ出していこうかなと考えております。
想像しずらいところもあるかもしれませんがこれからもよろしくお願いします。