【第2章】迷宮と時元魔法
「・・・とさん・・・アルトさん!」
「!?・・・ミーナか」
「はい。どうしたんですか?なんだかボーっとしてたみたいですけど・・・もしかしてさっきの戦いで何か怪我を!?」
心配そうなミーナが俺の顔を覗き込んでくる。
あぁ・・・そうか。
「戻ってきた・・・!」
「え?戻ってきたって・・・?」
「あぁいや、なんでもないよ」
時の精霊と契約した俺はこれから起こる悲劇を食い止めるために過去へと飛んだのだ。
『時間遡行』
どうやらこの魔法は記憶だけを過去へと飛ばす魔法らしい。
しかし魂に刻まれた契約は残っている。
つまり今の俺は時の精霊の力『時元魔法』を使えるということ。
ミノタウロスなど敵にもならないだろうな。
「大丈夫だ。それよりも早く魔法陣を作ってしまおう」
「・・?はい」
ミーナが首をかしげているがあえて見ない振りをする。
『時元魔法』のことはまだ言えない。
特殊能力にも時間や空間に干渉する力は存在しない。
この力を表に出すとおそらく俺は全世界から狙われることになる。
前の俺なら問題ないが今はミーナがいる。
俺と一緒に行動しているというだけで彼女まで狙われることになってしまう。
そうこうしている間に魔法陣が完成した。
もっとも『時元魔法』を使えば罠も必要なさそうだが。
「よし、ミーナは治癒をすぐに使える位置で待機。ミノタウロスの動きを良く見ておくんだ」
「分かりました」
石像に近づく。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ────
そして俺にとっての第2ラウンドが始まった。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆
動き出したミノタウロスを罠へと追い込んだ。
『茨拘束』がミノタウロスの動きを止めた。
悪いが一瞬で終わらせる。
「『時間停止』!」
時元魔法の一つ『時間停止』
自分以外の時を止める。
しかし魔法といっているが魔力を使った感覚がない。
体には謎の脱力感。
何か致命的なものが欠けていくような感覚。
・・・分からないがあまりこの魔法は多用はできない。
周りすべての時が止まる。
ミーナを見る。
驚きと少しの怯えが混ざったような顔だ。
・・・今度こそ守るからな
ミノタウロスの周りに岩の槍を大量に作る。
モンスターハウスで使った『地母の涙』のような魔法。
数は10本程度。
槍には『付加』を使い爆発を仕込んである。
名づけるなら『爆竜槍』
魔法も俺の制御を離れると同時に時が止まる。
どうやら俺の制御下にあるものは『時間停止』の影響を受けないようだ。
準備はこれで十分だろう。
『時間停止』を解除。
ミノタウロスに『爆竜槍』が殺到する。
土煙が上がる。
ここで油断はしない。
1度目はここで油断してしまったためにミーナが殺された。
土煙が晴れると、そこにはぐちゃぐちゃになったミノタウロスが転がっていた。
念のためにミーナをかばえる立ち位置を維持しつつ近づく。
動く気配はない。
残っていた角を回収し、警戒するが何も起こらずやがて奥の扉が開いた。
ミーナが話しかけてくる。
「なんだか・・・一瞬で終わってしまって倒した実感がありませんね・・・」
「・・・そうだな」
彼女には一瞬で魔法を展開して一方的に倒したようにしか見えていないだろう。
いつか彼女にはこの力のことを話す時がくるだろうか。
この力を見た彼女はそれでも俺のそばにいてくれるだろうか。
考えても仕方ない。どうせすぐには解決しない問題だ。
「宝箱を回収して戻ろうか」
「あ、はい!」
俺達は奥の扉へと進む。
その様子を見ている者がいることに全く気づくこともなく───
次回2章エピローグ・・・の予定!
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