【第2章】迷宮と悲劇
クラスタの迷宮第3層
おそらくは最下層であるだろう場所へとたどり着いた。
そこにいたのはミノタウロス。
罠を仕掛け、俺達は迷宮のボスへと挑む。
先手はミノタウロスだった。
斧を振り上げ真っ直ぐ突っ込んでくる。
思っていた以上に早い。
3メートル近い体からは想像もできないほどの速度だ。
だが俺から見れば遅い。
「『風歩』《エアライド》!」
風を纏って加速、相手の右へと回りこむ。
身を低くしすれ違いざまに剣を振る。
足首を狙って動きを遅くするつもりだったが・・・・浅いか。
「ヴォオオオアアアアァァァァァ!!」
傷つけられたミノタウロスが怒る。
斧を引きずりながらこちらに向かってくる。
そうだ。こっちに来い。
後10メートル・・・・5メートル・・・・
今!
ミノタウロスが魔法陣を踏んだ瞬間、仕掛けた魔法陣が光を放ち、ミノタウロスに無数の茨が襲い掛かる。
「ア”ア”ア”ア”ア”ア”!?」
暴れるミノタウロスに茨が絡みついていく。
『茨拘束』
茨が相手を拘束、動きを止めさらに無数の棘が暴れる相手を傷つける。
茨は植物で本来ならばミノタウロスクラスの魔物ならすぐに突破するだろう。
しかし今回の魔法陣は茨に『付加』を加えている。
茨がどんどん石化していく。
変化した石の棘がミノタウロスに突き刺さり、ミノタウロスが苦しそうな声を上げる。
『付加』の中身は・・・『変化』
物質を別のものへと変化させる魔法だ。
魔力消費が少なく使い勝手の良い魔法だ。
だが弱点もある。
変化させる物質のイメージが明確でないと再現できないのだ。
石や鉄といったものは再現しやすいが炎などのイメージが曖昧になりやすいものはどうしても再現度が下がる。
これでミノタウロスの動きは完全に封じた。
ここで一気に決めさせてもらう。
動けないミノタウロスに剣を差し込む。
そして・・・
「『炎爆』」
剣先から魔法を体内に直接叩き込む。
「ア”ア”ア”ア”ア”ア”」
ミノタウロスが苦悶の声を上げるが力尽きる様子はない。
1発では足りないか・・・なら!
「『炎爆』『炎爆』『炎爆』!」
連続で『炎爆』を叩き込む。
やがてミノタウロスは動かなくなった。
同時に『茨拘束』の効果が切れた。
死体を確認するがミノタウロスは動かない。
無事に倒したらしい。
思ったよりもあっけなかったな。
ミノタウロスから剣を引き抜く。
「この剣はもう駄目だな・・・」
刃がボロボロになってしまっている。
おそらくさっきの『炎爆』で無理をしすぎたのだろう。
「アルトさん!」
ミーナがこちらに駆け寄ってくる。
背後から先ほどとは比べ物にならない重圧を感じた。
同時に――――――
俺のすぐ横を何かが飛んでいった。
「っ!!ミーナ!避けろ!!」
「えっ?」
飛んでいった何かがミーナに直撃した。
ミーナが吹き飛ぶ。
「ミーナ!」
俺はあわててミーナに駆け寄る。
ミーナは動かない。
それはそうだろう。
ミーナの下半身がそこにはなかった。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
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