【第2章】迷宮と魔刻印
風歩の効果を試したあと第2層の探索を再開した。
そして4時間。
広い。この階層、マッピングしている地図を見るとかなり歩いているが終わりが見えない。
俺もそうだがミーナの顔にも疲れが見え始めている。
「ミーナ、そろそろ野営しようか」
「私はまだ大丈夫ですよ?」
「前にも言ったかもしれないが、大丈夫だって考える頃には体はすでに限界なんだ。冒険者は冒険をしない。」
もし今戦闘になった場合ミーナを守りきれない可能性がある。
「でも・・・」
「それに俺も疲れたしな。休むことも大切だ」
「・・・分かりました」
納得してないって顔だな。だが今はそれでいい。冒険者として経験をつんでいけばいずれ分かってくるだろう。
「じゃあ場所もちょうどいいしここで準備しよう」
迷宮での野営で重要なのは見つかりにくく、見張る場所が少なくてすむ場所だ。
迷宮の壁はそう簡単には崩れない。今回は通路の行き止まりだから警戒するのは1方向だけでいい。
試したいこともあるしな。
そこらで石ころを拾ってきて、石にあるものを描く。
名づけて『魔刻印』
魔法を図形にして描くことによって効果を発揮できる・・・はずだ。
ミーナに『風歩』をかけたときに『付加』の応用で魔力の供給をしないで魔法を発動させる方法を考えていた。
『付加』は常に魔力を供給しなければならないが、『魔刻印』ならば図形そのものが魔力を持つため、最初にある程度の魔力をこめればしばらく使える。
図形に大きな意味はないので自分が分かりやすいような形にしておいた。
石に刻んだ魔法は『幻影』。
術者の周りに幻覚を見せて認識を阻害する魔法だ。
気配に敏感な魔物や人間などには気づかれる可能性があるが魔物をやり過ごすときに使える。
今回は石に『幻影』を刻印化して描いた。
これをおいておけば魔物は俺達に気づかない。
「アルトさんこの石は?」
「魔法を刻んだ石だ。『魔刻石』とでも呼ぼう。これを使えば魔力をこめるだけで魔法が発動する」
「今回は野営用だから認識阻害の魔法を刻んだ。この魔法が発動している間は魔物に見つかることはない」
「そんなこともできるんですね、これなら街の外や迷宮でも安心して休めます。ところでアルトさん」
「ん?」
「この『魔刻石』・・・は誰でも使えるんですか?」
「そうだな・・・今は魔法を発動させるために魔力をこめるようにしてるけど、発動の条件を変えれば誰でも使えるようになるな。もっともそれをするつもりはないけど」
「どうしてですか?これを売ればお金にも困りませんし、助かる人も多いと思うんですが・・・?」
「考えてみるんだ。突然こんなものを売り出せばどこから手に入れたんだ?って話になる。いずれは俺が作っていることもわかるだろう」
「そうなったら話は簡単だ。俺はどこかの貴族や教会に捕らえられてひたすらこの石を作る羽目になる。俺はあくまで研究が目的だからな。お金は冒険者をやってればある程度は稼げるさ」
ミーナは優しすぎる。
それは美徳ではあるが同時に危うさもある。
冒険者同士の騙し合いなんてよくある話だ。
そういう意味ではミーナの考えは危険だが、それは俺が気をつけてやればいい。
ミーナはミーナのままでいてほしいからな。
「いずれこの力を世界に知らせるときがくれば売ればいいさ。そろそろ休もう。起きたらすぐに探索を再開しよう。できれば早めに次の層に降りたい」
「はい!」
魔刻石に魔力を流し『幻影』を発動する。
『熱源探知』であたりを調べてみると近くにグリーンデスサイスがいる。
こちらまで歩いてきたが、俺達に気づく様子はない。
問題なさそうだな。
魔力は半日程度もつくらいにこめておいた。
「よし、ミーナ。この石のそばから・・・・」
「すぅ・・・すぅ・・・」
よほど疲れていたんだな。
当然か。初めての実践。初めての迷宮探索。
ミーナにとってはどれも新しいことばかりだ。
「おやすみ」
明日こそ次の層への階段を見つけないとな。
遅くなってすいませんでしたっ!
仕事で週末しか帰れないのに週末に家をあけることが多く書く暇がなかったもので・・・
なるべく予約投稿で少しでも早く新しい話を届けられたらと思います!