【第1章】葛藤と告白
前半ちょっとだけミーナ視点です。
ミーナは眠れないでいた。
「アルトさん・・・すごい人だと思ってたけど・・・」
アルトの前では表に出さないようにしていたが正直困惑していた。
当然だろう。昔失われたと思っていた力を持つ人が目の前にいたのだ。
しかも魔法は教会から異端とされており、もしこのことが露見すればアルトは教会から追われることになる。
でもアルトはどちらかといえば今はまだ情報が少ないからあくまで秘密、というような感じだった。
見たことはないが研究の内容を資料としてまとめているらしい。
いずれは公開するつもりなのだろうか。
「でもそれは・・・」
教会の敵になるということ。
教会は全大陸に根付く国家すら超える勢力だ。
それを敵に回すということは世界を相手にすることと同じだ
危険だ。
それらのことを考えるならミーナはすぐにでもアルトから離れるべきなのだろう。
彼の隣にいるということは彼の仲間として教会から追われることになる。
しかし彼から離れるということはありえない。
もともと彼に救ってもらった命であるし、私が見てきた彼はとても優しい。
それに危険だと知っても私に秘密を話してくれたことも嬉しかった。
それだけ私を信じてくれたということなのだから。
「私は・・・」
彼の力になりたい
彼のためになにかしたい
正直勝手に家を飛び出したこともあり私はおそらくクレセント家に追われているだろう。
追っ手がこちらに迫っている可能性もある。
彼の隣にいることで私の都合に巻き込んでしまう。
そう思うと彼のパーティに入ったのは失敗だっただろうか。
いろいろな感情が飛び交って頭がクラクラする。
「・・・よし」
アルトさんも全て話してくれたんだ。
私も信じよう。
決意を新たに安心したところでようやくミーナは眠りについたのだった。
次の日
「アルトさん。話があります」
朝の訓練を終えたところでミーナが話しかけてくる。
「どうした?改まって」
「私は・・・あなたのパーティにいてもいいのでしょうか」
「なんだ急に?その話ならもうとっくに終わったと思ったけど」
「でも私が一緒にいると・・・」
「公爵家の追手がくるかもって?」
「え・・・?」
当然だろう。
彼女は最初に公爵家であると名乗った。
そして助けたときの様子からして護衛などもつけていなかった
つまり何らかの理由で逃げ出してきたのだろう。
彼女がパーティに入った段階でそれは織り込み済みだ。
それにもう魔法の話をしてしまった以上、彼女を逃がすわけにはいかない。
仮に彼女が自ら姿を消したとしても俺は全力で探し出すだろう。
「君が公爵家だってことは最初に聞いてるし、パーティに入れる段階ですでに予想できることだ。それに・・・」
「俺は君に魔法のことを話せるくらいには君を信じてる。追手なんてどうにでもしてやるさ」
「・・・ふふっ」
「なんで笑うんだよ」
俺は本心から言ってるだけだぞ。
「いえ、やっぱりアルトさんは優しいです」
「なんだよ唐突に・・・」
いきなりそんなこと言われても困るんだが・・・
「さあ、そろそろギルドに向かいましょう!今日こそはクエストを受けるんですよね」
「あ、おい、待てって」
「ありがとうございます。アルトさん」
そのつぶやきは言った本人にしか聞こえなかった。
どうやら前回投稿日時指定を間違っていたらしいです。
更新若干遅れてしまい申し訳ありませんでした!
これにて1章終了となります!
次からようやく冒険者らしいことをしていくと思われます。