序章
処女作品です。
出来心で出版社に投稿し、結果は二次通過三次落ちでした。
想像よりも高い評価を頂けた一方で、やはり素人として至らない点を多々指摘されました。
まだまだ、推敲するべき個所がありますが、駆け出しの素人作品として暖かく見ていただければ幸いです。
人の住まう大陸から、起伏の激しい山々と谷に隔たれた遠くの大地で、ドラゴンの雄叫びが響き渡る。
その地は、人々からは〝魔界〟と呼ばれ、数多の魔族や魔獣の巣窟と化している。
その魔界で今、一匹のドラゴンが怒り、咆哮をあげる。咆哮が向けられた先には、血の色のように真っ赤に染まった甲冑姿の人物が佇んでいた。
その甲冑姿の人物もまた人ならざる者、人の形をした魔族である。人々は、その姿からその魔族を〝魔人〟と呼び畏怖していた。
魔人は激昂するドラゴンにまるで動じる気配もなく、ただただ嘲笑っていた。
「最も神聖な魔獣と崇められるドラゴンも、所詮はただの獣ですね。たかだか仲間の一匹や二匹を殺された程度で、ここまで醜く狂乱してしまうとは」
その魔人の足元には、ドラゴンの死体がバラバラに切り裂かれ転がってる。
残った一匹のドラゴンは、同胞を殺した相手を噛み殺さんとばかりに、激しい咆哮を上げ続ける。
「それでも、力の差は感じているのでしょうねぇ。怒りで我を忘れて襲い掛からないだけ、まだ少しは利口とも言えますか。ですが……」
魔人は指先を指揮棒のように上下左右へと軽く振るう。瞬間、ドラゴンの全身から大量の血飛沫が吹き上がる。まるで鋭利な刃物で幾度も切り裂かれたように身体はバラバラになり、無残に地面へと崩れ落ちた。
「いい加減、耳障りで鬱陶しいのですよ」
バラバラとなったラゴンからはおびただしい量の血だまりが広がる。魔人は死体から溢れる血だまりに五本の指先で静かに触れる。すると、血だまりはまるで魔人の体内へと吸い込まれるかのように消えていく。
(うぅ~~ん。やはりドラゴンの持つ魔力は量、質、共に桁違いですねぇ。これで暫くは消滅する心配は無くなりましたが、さて、このような何もない場所では、魔王様に見つかってしまうのも時間の問題でしょうか。身を隠すとなればやはり、人間のいる大陸が一番なのでしょうねぇ)
その身も心も血の色に染め上げられた魔人は、ゆっくりと人間の大陸へと歩みを進める。
序章「魔界からの来訪者」 -終-