旅立ちと『死神』の足音
まだ、あの出来事で世界中の混乱がおさまらない中で、僕ら兄妹は今絶賛、引きこもり中です。
いきなり人間が消失するという怪事件。こいつは、つい半年前に世界中でおこった出来事だった。どこにいても、誰でも、関係なくいきなり消失してしまう。
当然、引きこもりだろうが、ニートだろうが関係はない。そのおかげで、最近のネトゲは大盛況だ。まぁ、自分が消える前に楽しんで、少しでも特をしようという考えだろう。あまりに数が多くてサーバーがもたないのも最近は当たり前になってきた。本当ならこの時間にイベントを片付けるつもりだったのだが、サーバーがおちて、イベントに参加できない…なんてことは半年前から数えきれないくらいあった。
そして、今は外を見てもほとんど人がいない。健康など、この現象の前では無意味だからだ。消失した人がどうなったのかはわからない。そんなもの、確認できるやつがいないからだ。死ぬか生きるかわからない。どこへ行ったのかもわからない。原因不明、正体不明、何もかもが不明だらけのこの現象は事実上、半年で世界を征服したのだ。
そして、僕ら兄妹も例に漏れず、引きこもっている、と言うわけだ。
まぁ、まともに動いているサーバーなど、数えるほどしかないが。それもクソゲーの。
「にぃ…さっきから動いてない…」
「え?…あ!!やっべ!!」
「…もう終わってる」
画面には
『GAME OVER』
という文字が表示されており、その下に…
「…『Your Lose』…」
最悪だ。
「…にぃが考え事してるからわるい…」
「ぐぅ…すいませんでした…」
「たまには協力プレイしようぜ!!…って言ったのはにぃなのに…」
「ごめんて!!だから泣かないで!!お願いだから!!」
「…じゃあ次は真面目にやってよ…?」
「任しとけ!!」
僕ら兄妹は四ヶ月前くらいからこんな感じだ。
半年前には活発的だった妹は、五ヶ月前に両親が消失してから、ずっとこんな感じだ。すっかり引きこもりになってしまった…まぁ僕は元からだけど。
「にぃ…また動いてない…」
「あ!! 大丈夫、大丈夫、まだ負けてないから…」
「…残りの体力見て言える?」
「…あー…すいませんっした!!」
「…まったく…四度目はないからね…」
「おぅ!!」
こんな感じでこれから先のことなんて考えない生活が、いつまで続くだろうか?このあと、この先、考えずに楽しめる日々が続く限り、僕は妹を守り続ける。今はいない父さんとの約束を守る。まぁ、その話はまた別の話だ。今はまだ…
「ニィ……?(怒)」
「あ…しまった…」
「…もう許さないよ…?」
「あぁ…せめて最後にひと(ドムッ)」
「…成敗」
今はまだこの日々を、ただ、ゆっくりと…
あ、死ぬかも。
朝が来た。だが、朝の日差しなんて贅沢なものはこの部屋にはこない。カーテンを締め切ったこの部屋で朝を告げるのは当然…
「グゥゥゥゥ……」
我が妹の腹の虫が唸る音だ。
「お前さ…少しは恥じらいとか無いの?」
「…にぃに対して恥ずかしいことは…無い」
「へー、そりゃありがとう。ほれ、飯食うぞ」
「ムー………」
ほっぺを膨らませているが知ったことではない。それよりも飯を食ってから今日のイベントを片付けなくては…
先に部屋を出てから、妹を呼ぶ
「速くしろー」
「…にぃのデータ消しておくから…(怒)」
「すいませんでした!!」
まぁ、たまにはいいか…
なにせ最近はどこもかしこも人が減っている。当然、ネトゲの管理者、さらにはプレイヤーも減っている。と言うことは…ネトゲも機能しなくなってきた。と言うわけだ。
最近はオフラインのゲームを中心にやっているのだが…当然、レベリング(レベル上げ)には相当に時間がかかる、その為夜遅くまで起きているのも仕方はない。と言うわけで、その夜遅くまで起きていたのがまさに昨日なのだ。
「ん…そろそろ終わってるかな?…」
そー…っとドアを開けると…
「あ! …にぃ…(ピコピコ)」
「…なにやってんのお前?」
「…レベリング…」
「俺は速く来いと言わなかったか?」
「うぅー…言いました…」
「はぁ…俺もレベリングしたいんだから、速く飯食うぞ?」
「!!……わかった♪」
たまにはゆったりした生活も悪くないな。
「…そういえば、にぃ…なんで料理上手いの?」
「俺は家庭科はいつも成績満点だぞ?」
「にぃ…オール1じゃなかった…」
「うるさいわ。」
そう。ただ平和だったんだ、だから食器が落ちる音が聞こえても何も思わなかった。ただいつもの事だって、振り返った。
「あれ…?」
その日、僕の大事な妹は消失した。なによりも、誰よりも大事な妹は、僕の見てない間に。
『世界から消えた』
その日、僕は泣いて、悔やんで、諦めかけた。
だけど約束したんだ、父さんに。守るって、約束も妹も。
その日は僕の生きる目的が決まった。
そう、なによりも長い旅はここから始まった。
あの日の翌日
起きたら既に昼だった。
ベッドはぐしゃぐしゃで部屋はかなり荒れている。何故か、なんて愚問だろ?
部屋に散らかったものを避けながら、朝飯を食うためにキッチンに移動した。
このキッチンに立つたびに、あの時の後悔が襲ってくる。それでも、目は背けない。受け止めて、前に進まないと…
旅の支度は整っている。昨日のうちに済ませてあった。
「おっと…忘れてた…」
パソコンを避難させておかないと…
部屋が荒れているのは、何も僕が荒れ狂ったわけではない。もうすでに、物取りにあった…ように見せるためだ。大事な物は見つからないように隠してある。
「あれ…?」
パソコンの画面を開いてみると、メールがきていた。
「なんだろう…こんなときに…」
とりあえずメールBOXを開いて、メールを確認する。こんな大変なことになっていても、最低限のマナーくらいは守らなくては…
「え…?」
今メールを開こうとしたところで、おかしな事に気づいた。
「送信元…666@Z?」
送信元のアドレスがおかしい。どう考えても…こんなアドレスは存在しない。
「イタズラ…じゃないな。」
ここでやめるべきだった。いや、これでよかったのかも知れない。何故なら…
『僕はこいつのおかげで、「消失」の原因を知る』のだから…
そこは日の射し込む、どころか、日の射しつづける広い砂原だった…
そして、空は黄一色になっている。少なくともここは僕がいた世界ではない。
何故こうなったのか、僕にもわからない。だけどこんなことが起こるのはあの現象以外に考えられない。
「『消失』……」
僕は、どうしようもない喪失感と、希望に溢れた。
だってそうだろう?
『妹が生きている。』
そして、恐らくは
『両親もこの世界にいる。』
だったら、とる行動は1つだ。
「さて…まずは街を見つけないとな。」
探して元の世界に帰ろう。
届くはずのないメールがまた届いた。今度はしっかりと見た。
『GAME START』
「誰だか知らないが、上等だ!!やってや…る……」
ドサッ……
僕の体は、まさに今、砂に沈んでいく。
既に意識はなかった。
ただ、俺は死ぬかもしれない状況でただただ妹のことと…
『ついてねぇなぁ』と朦朧とする意識の片隅で、考えていた。
俺は、あの日のことをほとんど覚えていない。覚えているのは、耳元で誰かが喋っていたことと、輝音が俺のそばにいないことだけだった。
輝音が生まれてから、俺は輝音のそばを可能なかぎり離れないようにしていた。学校が終わってからすぐに輝音のところへ行って、輝音と一緒にいた。
学校じゃシスコンとか言われてたが、正直、どうでもよかった。どうせ、俺をいじって友達ごっこがしたい連中だと思ったからだ。現にそいつらは長続きしなかった。仲間内で揉め事おこして勝手に潰れていった。
俺のまわりに、マトモなやつなんて輝音しかいなかったのだ。ただそれだけの話だった。
どれだけ成長しても変わらない世界を、俺は見ていられなかった。俺が学生じゃなくなってからは、輝音を迎えに行く以外では外出しなくなった。輝音も、いつも通りだったんだ。
でも、今だけは違う。そばに輝音がいない。ただそれだけなのに。
俺にとって今は、生きることさえ。
『辛い』
「なにボソボソ言ってんだよ、このバカ!」
「いってっ!!!」
「やっと起きやがったか……何日寝てたと思ってんだよ、まったく……」
フライパンの一撃で目覚めさせられ混乱しっぱなしの俺は、その女性の指示に従うしかなかった。
「ほれ、さっさと飯食いな!、時間ないんだから!」
「いや……そのま「聞こえなかったかい?」いえ、すいませんでした」
並べられた飯はとても豪勢で、とても美味しかった。
食べている間に色々な事を思いだし、いてもたってもいられなくなった。
「あの、すいません」
「なんだい坊や、私は忙しいんだけどね」
「助けてくれてありがとうございます」
「礼ならいらないよ。どうせビギナーなんだろう?」
「ビギナー?」
「おいおい……あんた、まさかまだ飛ばされたばかりなのかい?」
「え、えぇ。砂漠にはいきなり飛ばされて……」
「まったく……とんだ貧乏くじね……、とりあえず、あんた。武器は持ってるかい?」
「武器ですか……?」
「あぁ。ストレージに入ってるはずだ。飛ばされた時に、自動で決められるからね。」
「ストレージって、どうやって開くんですか?」
「まぁ、そうなるわよねぇ……。ほら、こうしてここをこうやると……」
女性がやった通りの動きをすると、空中に『ストレージ』というタブが出てきた。
「おぉー!!!すごい!」
「はいはい。無駄口たたく前にさっさと確認する!」
「はーい……」
ストレージタブを触り、中身を確認すると……
武装『ジノ・タクティス』
そして、もうひとつ
特殊武装『α・カリス』
「ほれ、確認したら装備して。速く!」
「はい!」
なんか主従関係が定着してきた気がする……
そう思いながら、ジノ・タクティスを装備する……
表れたのは、『剣の柄』のようなもので、見た目にはとても武器とは思えなかった。
「……………………」
「………………………………」
沈黙の時が続き……
「……まさかとは思うが…これだけかい?」
「ストレージにはもう1つ入ってましたが……」
「そいつも出してみな」
「は、はい。」
もう1つの装備、α・カリスを装備する……
出てきたのは、赤い球だった。だが、中心に何かが入っている……
「くぼみがあるはずだ、いれてみな。」
言われた通り探してみると……窪みが見つかった。そして、球を入れてみると……
「うわっ!」
急に煙が吹き出し、明らかに柄の重さが変化した……
表れたのは、白刃の刀。
武器名表示は
『アラストル・ストレート』
俺の長い冒険の相棒との出会いは、
こんな小屋の、片隅で行われた。
俺はしばらく目を離せなかった。先刻まではただの柄だったものが、いまは神々しいまでの輝きを放ち、いざ敵を切らんとするまっすぐな刃と化したのだから。
「ストレートってことは…日本刀か。」
「………………」
「いいかげん反応しろっての(ドスッ)!!!!!!」
「ぐはっ!!」
「まったく……ほら、起きな」
「は…はい。すみません…」
ぶっ飛ばした張本人に掴まりながら起き上がる…なんか理不尽。
「さてと…とりあえず、自己紹介がまだだったな。私は『Bほたて』だ、よろしく。」
「…それって本名ですか?」
「アホか。こっちで使う偽名…もといアカウントネームだよ」
「そういえば…この世界ってなんなんですか?」
「……そこは空気を読んで自己紹介からしてくれないかな…」
忘れてました…なんて言えないので誤魔化します
「すいません…どうするにも、まずはこの世界を知ることの方が先かなって。」
「まったく…御託はいいけど、忘れてたなら正直に言いなよ?」
ばれてたのか…
「俺は、『アインズ』です…名乗るのが遅れてすいませんでした。」
「ふぅ…まあいい。この世界に関して説明しよう。」
この世界は『inbastant world』通称『交差世界』と呼ばれている。文字通り、現実と仮想空間が交差した世界だ。私達のやることは一つ。もとの世界に戻り、あの奇病を治すことだ。だが、残念なことに未だ治す術は見つかっていない…。それに、この世界から脱出する方法もだ。私達がいまわかることは、この世界はゲームのようなもので、こちらの世界で死んでも再生可能ということだ。この世界に入ったその時から、自キャラのステータスと武装が決まる。武装は個人でそれぞれ違い、お前のそれはラウンダーの武装だな。いろいろなスキルやレベルなどもあるが、基本的には現実世界と変わらない。お腹が空いたら食べればいいし、冷蔵庫なんかや、エアコンなんかもある。本当にそのまま、ゲームと現実を混ぜ合わせてるんだ。
ただし、この世界にNPCは存在しない。クエストを出すのもプレイヤー。倒すのもプレイヤー。管理するのもプレイヤーだ。そして、私達はこの世界で殺される度に寿命が縮んでいく。間接的に殺されるようなものだ。それに、おそらくだが、現実に戻れても減った寿命は戻らない。そういう世界だ…ここは。
「こんなとこかな…」
「………………」
「(流石にショックか…まぁいずれ慣れる…)…?」
「………………ぐぅ…」
「起きろこのバカがっ!!!!!!!!」
「はっ!!…おはようございます?」
「…どこから寝てた?(怒)」
「エアコンの話の辺りからですね。多分」
「一番重要なとこ聞いてねぇよ…」
「…まぁでも…」
「?」
「俺は家族を、妹を助けられるならそれでいいんです。」
「…(こいつ)…」
「俺はそのためにここに来たんだから…」
俺の手に握られた『アラストル・ストレート』が輝く。
俺は必ず助け出す。そのために、力を借りるぞ。
『相棒』
「バカやろう!!すぐに剣を離せっ!!!!!!!!」
「は?」
その時のことは鮮明におぼえている。俺は、ほんの少し力を込めただけだ。ただそれだけの動作で…まさか…
『この小屋が真っ二つになろうとは…』
俺は、あのとき手にちょっと力をいれてしまったばかりに、今アルバイトをしている。バイト先は『Bほたて』さんが働いていたところで…
【バイト代なし】という条件で強制的に働かされている。
バイト先は元の世界と同じようなレストランで、なぜ働いているかBさんに聞いたところ…
「食わなきゃ死ぬだろ。何言ってんの?」
とのこと…
どうも、まかないやその他もろもろ含めて、合理的な職業は【レストランで働く】だったようだ。仕事の成績もかなり良いらしい。
そして…肝心の俺はと言えば……
「ほれ、さっさと運べ【切り裂き魔】」
「そのあだ名いつになったら消えるんですかね…」
「お前が切った家の代金+家具代がバイトで貯まったときだ」
「遠くないっすか…?」
「お前が頑張れば速く済むんだから、そして速くいけ、客待たせるな」
「はーい…」
雑用とウエイトレスをやらされ、武装はすべて没収された。そして、真面目に仕事をしないと…
『この装備全部売るぞ』
って言われた。
本当に売られそうだったので、真面目に働いてます。とはいえ、さすがに仕事はそれだけではなく…
「やべ。材料足りん。」
「げ…」
「待て、なんで逃げる?(ニコッ)」
「どうせまた食材探しと確保に駆り出されるんでしょ?」
「わかってるじゃん、ほれ。」
そういって、俺の武器、アラストル・ストレートが投げ渡された。
「…ありがとうございます…」
「残り3日な」
「短いっすね…」
「今回は緊急だからな。」
もうひとつの仕事は、近くの洞窟で食材を集めることである。
基本的には6~7日かけて、俺は洞窟。Bさんは遠くの狩場まで食材調達に出かけるのだ。
いつもと同じように、武装を渡された瞬間から洞窟に向かう。
バイトを始めてから三ヶ月がたつ。その間にいろんなことを覚えた。
そのひとつとして、このアラストル・ストレートには…
『武装変異の能力』
というものがあるらしい。
そして、俺のスキル画面にあった特殊スキル
『剣道』
このスキルはいままで一度もでてこなかったスキルらしい。このスキルのおかげで、家を切り裂き、バイトをしなくてはならないんだが。
洞窟は街からかなり近場にあり、難易度も低いため、多くの人が狩場として使用している。
洞窟内などの小規模ダンジョンなどにも地図があり、先に迷いこんだ人達が地図を作ってくれている。スポーン地点は毎度変わるが…
探索を始めて少ししたころ、
「おっ…豚さんか」
おいしい肉を落としてくれるモンスターがスポーンした。どうもここが狩場になったようだ。
「そんじゃいきますか…」
剣を両手で握り、正面に構える。刀身に煙のようなエフェクトがかかり、俺の目が蒼に染まる
ほんのすこし力を込めて…
流れるように…
「…降り下ろす!!!!!」
洞窟内に轟音が響きわたり、豚さんは真っ二つになった(ちょっと可哀想)。
…同時に洞窟の壁も切れてしまったが
切れてしまった壁はあとで修復しておこう…
「さて、お肉回収っと…」
この世界では、モンスターが死んでも、自動でアイテムがストレージに入るわけではない。倒したあとに剥ぎ取る必要性があるのだ。
時間内に剥ぎ取れなかった場合は消滅してしまうため早めに動かなければならない。
しかし、俺は動けなかった。
切った壁の隙間から…
『さくっ……』
矢で射ぬかれたからである。
「ぐっ…」
この洞窟で弓を武装しているモンスターはゴブリン種だけだ。だが、ゴブリン種は洞窟内でも奥の方にしかでない。つまりこれは…
『人に射たれた』
その現実だけで俺は背筋が凍りそうだった。
だってつまりそれは…
「殺す気かよ…」
今まさに鳴り響く足音が俺にとって…
死神の足音に聞こえた。
そして俺は、足音混じりに、『我が思いを知れ…』と、そんな声を聞いた…
「………くそっ…」
刺さった矢には麻痺属性が付与されていたようで、体が思ったように動かない。
このままじゃ、殺される。
壁のすきまは大した大きさではない。どうやら迂回してくるようだ。ちなみに解毒アイテムは持っていない。
「逃げないと…」
その時俺の頭が考えていたことは少しでも遠くに逃げることだった。
(コツン…コツン…)
(足音の大きさから考えて…まだ距離はあるはずだ…)
俺は必死で這いずった。そりゃ、誰だって死にたくはない。例え、本当に死ぬのではなくても…
しかし、予想外というのは悪い方に行きたがるらしい
「こんなときに…!!!!」
モンスターのスポーン。
狩場に設定されていたことを忘れていた。
「万事休す…ってか…」
その時だった。
見覚えのある矢が、
『俺ではなく、スポーンしたモンスターを貫いた』
「……は?」
「いやぁ、ごめんねぇ!いきなり壁が割れるもんだからイベントかと思っちゃって!」
「は……はぁ…」
そこに現れたのは、先ほどまでのイメージとは違い、随分明るそうな女性だった。
彼女の名は「アルフ」
弓使いで、新しい武器の試し射ちがてらにこの辺りで狩りをしていたところ、いきなり壁が割れ、モンスター撃破数によるイベントの発生だと思ったようだ。
「壁割りの剣なんて聞いたことなかったからさぁw」
「…お褒めに預かり光栄です、お嬢様。」
「…皮肉だったんだけど」
「知ってます」
そうやってしばらく話をしたあと、俺達は目的が違えど、やることは同じだったため一緒に狩りをすることになった。
「足ひっぱらないでね?」
「こっちの台詞だ、今度は射つなよ?」
「それはふりかい?」
「…(剣を構える)」
「わかったってw」
先ほどまでの死の緊張感とは違い、楽しそうな空気が漂っていた…ある意味さっきよりも油断ならないが。
それよりも、俺には気になることがあった。
彼女の持っている弓の持ち手には、アラストル・ストレートと同じような宝石がついていたのである。
そして、なによりも、この顔は…
『テレビで見た、消失の最初の被害者なのだった』
「…そろそろ気づいてもいいころかな?」
「まさか、あのプレイヤーが王妃の兄上だったとは…」
「だが、まだ大丈夫だろう、我らの策はは完璧だ」
「しかし、あの女のことだ、今はレストランなどやっているが、いつ攻めこんでくるやら…」
「……どいつもこいつもビビりだね」
「なんだと!」
「……僕が行くよ、仕止めればいいんだろ?」
「くそっ…調子にのりおって…」
「やめておけ、一応我らの数少ない戦力だ」
「じゃ、楽しみにしててね…」
『兄上様♪』
「……!?」
「どうした?大丈夫か?」
「あ…あぁ、少し寒気がな」
「彼女に殺されないよう気をつけなよーw」
「いないから大丈夫」
「あぁ…ごめんね…」
『貴方の見る空はまだ青いのでしょうか、私の空は、冷たい、無機質な石の塊です。貴方がまだあちら側にいるのなら、どうか空を見てください。明日の空と、違うことを探して』 机の中の手紙…①
短編を無理やり繋げたものですw
粗が目立ちますが、楽しんでいただければ幸いです。