始まり
「うっわ~すごく広い…」
少年が見上げているのは一件の館
階層は20階はあるだろうか、横もかなり広く、その中世のヨーロッパを感じさせる館は不思議な雰囲気を醸し出していた
少年、柊 秋人は今日この館に引っ越してきた
その証拠に赤毛のストレートヘアが特徴の彼の右手には旅行カバンの持ち手が握りしめられていた
「ふぅ…さて…行くかな」
秋人は心の準備に無駄な時間をかけていたが、やっと決意を決め、歩き出そうとした
その時
(っ!?)
突如秋人は右に飛んだ、というか反射的に避けた
今自分のいた場所をみるとそこには刀が降り下ろされていた
「ほほぅ、背後からの攻撃を避けるなんて君、不審者にしてはやるじゃないか」
その刀を降り下ろしたと見られる犯人が一言間のぬけた感想を漏らした
「不審者とは何だよ、今日からここに引っ越してきた人ですけど!」
秋人がいうと少年はきょとんとした
「あ、そういえば人が来るとか言ってたねぇ、ごめんごめん、忘れてた」
(…えぇ、普通忘れて攻撃してくるかなぁ…)
あまりしっかりしているわけでもない秋人がこの思考にたどり着くのだから目の前の少年はよっぽどなのだろう
そんなことを秋人が考えているとすっと、右手が差し出された
「僕は蒼斗、この館、魔妖館の館長だよ。よろしく」
秋人は差し出された手に握手で答えた
「さて、秋人くんだよね、えーと、まぁ知っての通り、この館には君や僕同様、特別な能力を持った人間が集まる。」
「うん、僕もそれで呼ばれたんだよね、殺されかけたけど」
「うっ…ごほんごほん、で、えーとね、まぁとりあえず、この館に能力者が集められた理由は二つ、
1つはある人間が国や世界に能力者がいるということがバレるのを防ぐため
そしてもう1つは…」
蒼斗の次の言葉で秋人は自分の呼ばれた真の意味を理解した
「異世界、マスクノルマへの進撃」
館の1F廊下を歩きながら秋人は考えていた
異世界マスクノルマ、それは国の主要幹部レベルしか知らないとされるこの地球とは別の惑星の存在
そこでは違う生物がすみ、さらにその生物たちには特別な能力が備わっているとされてきた
しかしまだそれは確証のない情報のため、国のなかでも国家機密とされてきた
「あ、そういえばさ、秋人くん」
黙り続けていた秋人に蒼斗が突然話しかけてきた
「ん?」
「さっきさ、僕の攻撃を避けたあれ、どうやったの?」
あれとは、恐らく蒼斗との出会いとも呼ぶべき最初の刀での攻撃のことだろう、最悪の出会いかただが
「あ、あぁ、僕の能力『危険察知』だよ」
「危険…察知?」
不思議そうな顔をする蒼斗をよそに続ける
「人の攻撃は必ずしも僅かでも殺気を纏うもの。僕はその殺気を感知することが出来るんだ」
そう、それこそが秋人の特別な能力『危険察知』である。
「ふーん、つまり、便利系か、ということは、もう一個ありそうだね」
「うん、まぁ…」
便利系、能力は3つの種類に分類できる
その1つが便利系、攻撃手段としてはあまり役に立たないが、生活や、その他のことについて役に立つ能力のことである
次に戦闘系、その名前の通り、主に攻撃手段として利用される能力のこと
あと1つがチート系、または反則系と呼ぶのだが、その説明はまた次の機会に
「秋人くんさ、僕と模擬戦闘しない?」
蒼斗の突然の提案
秋人の能力では正直蒼斗の刀に勝つ自信は無かったが、秋人はこれを了承した、実際は、秋人が了承したわけではないのだが
廊下からでた広い庭、そこにはある程度の距離をおいた秋人と蒼斗がたっていた
「よーしやるよー、模擬戦闘だから殺しはしないけどある程度のダメージは覚悟してねー」
「わかったよ」
蒼斗が刀を抜刀する
同時に纏う空気も変わる
「試合開始!」
蒼斗が一気を距離をつめる
そのまま一太刀秋人に振りかざす
「はやっ…」
秋人はそれを辛うじて避ける、危険察知の能力は常時発動してるものなので、それによって早めに攻撃を感知していたが、それでも蒼斗の攻撃の早さはすごかった
「まだまだ!」
刀の連撃に避ける秋人
しかし次の瞬間
「……ぐっ!?」
避けたはずの秋人に攻撃が命中
軽く吹き飛ぶ
「これが僕の能力『妖刀~水無月~』さ」
妖刀~水無月~とは5km圏内の視界に捉えている場所に刀を降るだけで無条件で斬撃を発生させられるという戦闘系能力
故に危険察知を使用してる秋人でも避けることが出来なかったのだ
「どう?もうやめとくかい?」
その問いには応じず秋人が起き上がる……………
「秋人…くん…?」
秋人と思わしき人物は髪の色を黒に染め、さらに纏う雰囲気がかなり変わっていた
「面白い能力だ、試してやる」
その少年は鋭く走り出した
「くっ!」
蒼斗が近づかせないために水無月で少年に間接斬撃を与える
しかしなんと、少年はその斬撃すらも巧みにかわした
「俺の能力、それは…」
蒼斗は一発の蹴りで吹き飛ばされた
「反則系『戦闘能力』さ」