熱帯夜
雨の季節が終わると、いきなり酷い暑さだった。
一年前はこんなに暑かったか?
と考えて、もしかして老いによる体力の低下だろうか。それとも食事が雑になっていて疲れやすくなったのか。
答えはわからないが、とにかく暑い。
何が一番辛いって、それは夜だ。
熱帯夜。
滲む汗と格闘しながら、寝付けない夜は最低だ。
ふと時計を見ると深夜三時を過ぎている。
眠れない焦りも入り混じる真夜中で、時間の経過の音を僕は感じた。
幼い頃から出会ってきた人の顔が浮かんでは通り過ぎ、もう会うことのできない祖父は微笑んでいたり、父は気難しそうに分厚い本を読んでいる。
やがて会おうと思えば会えるけれど、よっぽどの偶然でもない限り現実では再会しない彼女の顔が浮かんでは、泣いていたり、笑っていたり、それから母の顔がぱっと表れて、寂しそうに俯いていた。髪の分け目の根本は真っ白い。
暑さで朦朧としていた僕は、そうした光景を永遠に見続けながら、あるとき目を開けると、夜は開けて夏の太陽が部屋の中に飛び込んでいた。
半分の意識で起きていたのか、眠っていたのかもわからない。
時間の音だけは確かな記憶として残っていた。
携帯電話をとって、日付を確認する。
その表示に驚きはない。当たり前に時間は経過していて、戻ってはいなかった。
過ぎた時間に、焦りだけが募った。




