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「魔法使いが、銅像に思いを込めたもの?」

「ああ、それが余達だ。銅像が動くなど普通はありえん」

 王様のお話を聞くためには、どうやら知識が必要なようです。

「幽霊とは違うのですか?」

「あれは魂が入り込む。余は『幾度も思いを重ね掛けたもの』で、魂は入っていない。魂を込める作り方で余の方に魂が入っていたら、王子像の方はピクリとも動けん」

「本当に同じ方なのですか?」

「陽が登ったら見比べてみるといい。面影位は分かるだろう」

 素直に頷きつつも、思考は大分混乱気味でした。


 金ぴかの王子様と、目の前にいらっしゃる王様は、どちらも同じ方をモデルに作られた銅像という事。

そして、どちらにも国一番である魔法使い様の魔術が施されていて、魔力が高まる夜の間だけ、台座の上限定で、自由に動く事が出来るそうです。台座はそう大きくはありませんから、寛げる程度の自由というのが本当の所であるのだとか。

 王子様は一度、王様は幾度も思いを込めて出来ているのだそうで、回数の違いは記憶の量には関係するけれど、性格諸々には無関係なのだとか。


「王様、昔は王子様みたいだったという事ですか?」

「余も若かったのだ。あれの言動に不快を感じたなら許せ」

 指で頭を撫でられました。先程わたしが泣きながら話したことを覚えていらっしゃるのでしょう。慰めてくださっているようです。

「思っている事が素直に口からこぼれる性格ではなくてな。公務には支障をきたさない分プライベートでは大概だった。ま、周囲が余の性格をしっかり把握していたから傷つくものも少なかったが」

「そ、そうなのですか?」

「あれと交流を続けるつもりなら、その辺を先に理解しておいた方が良い。でないと要らん気をもんでばかりで疲弊するだけだ」

「お話の仕方が違うのは…」

「ああ意図して口調を変えたのだ。子供じみた喋り方では侮られるからな。特に余の王政だった頃は、周辺国同士、色々きな臭かった」

 お話して分かった事は、王様が人間のお姿で本当に王様だった頃というのがずっと昔の事だという事でした。人間の王様は、もう亡くなられてしまったそう。


「で、だ。そろそろ夜明けも近いし、本題に入ろう」

「はい?」

「そなたと知りあえたのは僥倖。協力してもらいたい事があるのだ」

「協力? ですか?」

 日の出はまだですが、空はもうずいぶんと明るいです。

 鳥目が支障にならない視界に映る王様は、確かに王子様に似ていらっしゃいました。




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