表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/23




「うるさいっ!!」


 綺麗なボーイソプラノの声が、荒く乱れてわたしの脳裏に鳴り響きました。

 開いたはずの視界は暗くて、しかもどうやらぼやけているようでした。鳥目なはずなのに視界がぼやけているのが分かったのは、暗闇でも微かに金色の物体が見えたからです。ぼやぼやですが。


「…王子様?」

「お前、寝穢いしうるさい」

「いぎたないってなんですか?」

 首を横に振って眦にたまった涙を払えば、視界の潤みは少しマシになりました。

「寝相が悪いって意味だ」

 不良すぎる視界をそれでも凝らしてみれば、確かにと頷かずにはいられませんでした。

 思いの外王子様の近くにいます。記憶が確かならば、もっと端で眠ったはずです。寝返りを打ったんです、と言い訳するにしても、移動距離が……わたしの身体五つ分くらい、ここよりも端で寝ていたつもりなのに。

 それでも、夜の間、台座にさえ触れていれば自由に動ける王子様の活動範囲への侵入はしていませんでした。王子様の手も足もまだ届かない範囲なので直接的にご迷惑はおかけしていないと思いますが、お目汚ししたのだと言われればそうなのかもしれません。

「寝てるくせにぐずぐず泣いて、うるさいったらないな」

 それ以上にお耳を汚してしまったようです。

 すみません、と謝った声は鼻声で、それがご不快だったのか王子様のサファイアが細くなりました。満月が半月になるくらいの変化でした。王子様の胸のあたりでしょうか、ぶんぶんと揺れるルビー…杖を振っていらっしゃるご様子。

 ご不快にさせてしまっただけではなく、怒らせてしまったのかもしれません。

「おい、なんで泣いてたのか」

「も、申し訳ありませんでしたっ」

 ものすごく居たたまれなくて、何か言おうとした王子様を遮って丁寧なごめんなさいを伝えて、今がまだ夜で、わたしが鳥目である事は充分わかっていたのだけれど、気付けば王子様のいる方向とは真逆に飛び出していました。




 だからどうか、あなたもわたしの事をいらないとは言わないで。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ