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本文中に表記がないのでわかりにくいですが、ツバメの夢の話です。
ビューって風を切る様な音が微かに聞こえて、翼をはためかせる音も、確かに聞こえました。
それだけで分かるのです。
だから、閉じていた瞳を開いて、わたしは声をあげます。
兄様姉様で満員御礼で狭かったはずのその場所に今は一人きりで、空腹を抱えて。
「おなか減りました……さみしいよぅ。パパ、ママ、帰ってきてください」
寂しいです。兄様姉様、もう誰もいないです。みんな先に行ってしまいました。パパとママがいないと、わたし一人ぼっち。
パパかママの帰宅を知らせるはずの羽音は確かに聞こえたはずなのに、だからこそ声をあげて呼んだのに、お家には誰も帰ってきてくれません。
「パパ! ママ! 帰ってきてください! すぐに大きくなるから、置いていかないでっ」
ボロボロと涙をこぼして、声を張り上げていました。
だって、本当はもう国を渡る頃。早い仲間はとっくに国を出て行ってしまったと聞きます。大人になったばかりの若鳥達は渡りに不慣れだから早めに発った方が良いって出発してしまいました。もう、この国に残っている仲間の方がずっと少ないけれど、わたしはまだ飛べないのです。
どうしてこんなに不安になるんでしょう?
ああそうです。パパとママのお友達が、そろそろ発たないとって言って行ってしまったからです。
寒くなると飛べなくなって死んじゃうよって。
死んじゃうってなんですか? 諦めなよってなんですか? わたしを諦めた方が良いって、どうして?
――パパとママが諦めたら、わたしはどうなっちゃうの?




