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 ずざぁ、と転んでしまいました。


 …着地は苦手です。

 プルプルと頭を振ると、草が上から降ってきました。頭についていたみたいです。あ、翼にもある。歩きながらくちばしで草を取っていたら、また転んでしまいました。

 止まってするべきでしたね。どんくさいですものね、わたし。

 どうせなら水鏡で見て格好を確認しましょう。

 水分補給の為に来た小川でのどを潤してから、わたしは水鏡に映るわたしと対面を果たしました。

 全体的には黒くて、おなかと腰回りが白色羽毛のわたし。顔のあたりがちょっと赤いです。全体的に小さいし、ツバメの特徴である尾っぽもあんまり長くないんです。初めてお会いしたとき、王子様に「インクを被ったスズメだろ?」と言われたほどです。その後にすぐ「いや、スズメの方がもう少し恰幅が良いか」とも言われました。

 スズメさんもそんなに太っている印象はないんですけど。そんなにちびでガリガリしてるでしょうか? 人間様と違って羽毛で身体のラインは見えないはずなんですけれど。

 大人…には見えないんでしょうか。

 水鏡に映る自分の姿に、思わずそう思ってしまいました。

 本当に小さいんですよね。わたし。で、でも、そうなるとわたしつがいが…。

 どうやってつがいを見つけるのかはわかりませんが、その後は知ってます。パパとママを見てましたからね。卵を産んで、赤ちゃんを育てるんです。

 ………どうしましょう。虫、殆ど採れないんですけど。

 今でこそ木の実や果物、それに少量の虫という食生活ですが、赤ちゃんだった頃は動物性たんぱくオンリーでした。それで急いで大きくなったわけです。

 ……わたし、育児できる自信ありません。って、ああ!

 それ以上に重要な事に気付いてしまいました。

 わたし、着地が出来ないんです。

だから、いつもは開けたところにとまるんですが、赤ちゃんを育てるためのお家って、木の枝とかに作るんですよね。

 思い出の我が家が蘇ります。お家が安定するようにとパパとママが作ったお家は、太い枝が何本も囲うように建っていました。

 どうしましょう。わたし、帰ってくるたびにお家に激突してしまう自信があります。下手したら、卵や赤ちゃんごとお家を落っことしてしまいそうです。


 ……嘆くどころか、本格的につがいは諦めた方が良いのかもしれません。うう、これさえ外せれば…。


 若干涙目になりながら見たのはわたしの足もとでした。王子様のお言葉曰く「小枝」なわたしの足。

その足首にはさっきわたしが食べた果実よりも大きな脚環がはまっています。生まれた時からあるんです。昔はもう少し小さかったのですが、わたしが成長するに合わせてこの脚環も大きくなっていきました。と言っても、最近は大きくなる気配がないので、これ以上大きくなることはないのかもしれません。不思議な脚環です。

 これが右足にだけあるせいで、バランスがとりにくいのです。飛ぶのは何とかできますが、着地はまだ難しい。ぐらついてしまうので、だから虫も上手く捕まえられないのです。


 お家…。当分は王子様の所で御厄介になるしかありません。あそこは開けていてわたし的には広いですし。

 詳しくは知らないんですが、金ぴか王子様の盗難防止とかで、あの空間は入れる者がかなり制限されているらしいです。人間様に限らず動物にも多少制限が効くのだとか。わたし的に蛇とか猫とか怖いですし、安全面から言うとお家を作る環境としては最高ですね。


 仮につがいが見つかってあそこにお家を作ろうとしても、つがいの相手が王子様の空間にはいれないかもっていう可能性もあるらしいんですけどね。


 とりあえず王子様に出て行けと言われない限りはもうしばらくあちらで御厄介になりたいと思います。


 王子様。本日より大家様という事でよろしくお願いいたします。






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