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書くのが遅いので、文字数少なめで小出しでいきます。
王子様、とわたしはお呼びしていますが、本当は『王子様』ではなく『少年王』らしいんです、あの方。
正確に言えば、あのお方のモデルになった方が、少年王だったという事ですが。
でも、王子様が少年王であるというのもあながち間違いではないのです。
なんて事を考えながら、わたしはただ今お食事中です。
メニューは紫色の果実です。ちょっと酸っぱいですけど、食べられなくはないです。
聞いた話、他の仲間は木の実や果物は食べないらしいです。動物性蛋白質オンリーな食生活だとか。
虫だけを食べる生活………三日で飢え死にしそうです。虫が採れなくて。
否定しようがないので認めますが、わたし、どんくさいんです。しかもちび。
なぜかというと、わたし、生まれるのがとっても遅かったんです。
時期的にこの国を離れて次の国へと渡るような、他の子供達がそろそろ独り立ちするかなって頃に生まれたんです。
で、慌ただしくパパとママに育てられて、大分大きくなった兄様姉様にもまれて育って(自分のことながら、よく潰されずに生き延びたと思います)、仲間達がみんな国を出て行ってしまった頃に、辛うじて飛ぶことが出来たんです。
パパとママに「先に行きなさい」って言われて、わたしが飛べた頃には兄様姉様は誰も残ってはいませんでした。最初は一緒だったはずのパパとママも、いつの間にかはぐれてしまっています。心細かったけど、向かう先も帰る場所も同じなんだっ! って言い聞かせていっぱいがんばりました。
初めての渡りは分からない事が多くて、それでも何とか故郷に帰ってくることができた事が誇らしいです。パパとママに報告したい! …相変わらず着地は下手くそですけど。
身体が小さいのは、生まれてから巣立ちまでの期間が短かったのがたぶん原因。飛ぶ様になったら自分でゴハン採らなきゃダメですからね。お口開けて待ってるなんてありえませんから。
それにゴハンの採り方もしっかり教えてもらえなかったんです。どんなところに虫がいるよ、とか。大きくなったら教えてあげるねってパパ言ってたのに。
それに、つ、つがい、の、見つけ方、も。こっちはママが教えてくれるって言ってたのに。
小さなわたしよりもずっと小さい果実を食べるのは、そう時間のかかる事ではありませんでした。
食事は採ったその場で食べるか、安全な場所に移動して摂るのが普通です。安全な場所っていうのは外敵のいない所です。寝泊まりさせてもらっている王子様の所じゃありません。そんなことしたら怒られちゃいますからね。
胃を膨らませたわたしは飛んで移動します。胃は果実でいっぱいでしたが、お水が飲みたくなったからです。




