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第一部

はい。という訳で冒頭からとんでもないお願いをした俺ですが、これは私にとってフィクションではないのであしからず。


「ふぁあーあ。」


欠伸をしながら二階の階段から降りる俺は富士谷巴夜〈ふじたにともや〉高校一年生です。


「おはようございます。スルガさん。」


俺が挨拶を入れたのは俺の家で家事をこなしてくれている女性。スルガ………なんとかさん。


ひょんなことから彼女は俺の家にい住まうことになったのですが、それはまた別のおはなし。


「はいトモヤくん。沢山食べてね。」


スルガさんはそういうとテーブルの上にお魚と味噌汁、そしてご飯を置いていきます。


「はい。ありがとうございます。」


俺はスルガさんにお礼を言いながらビニールシートの上に腰を掛けました。


なぜビニールシートがリビングに敷かれているのかと言うと理由は………まあ、数分後に分かることでしょう。


「いただきます。」


両手を合わせ一礼、食材たちへの感謝と作ってくれたスルガさんへの感謝を混ぜた声がリビングに響き渡りました。


スルガさんもニコニコしながら台所の方へと戻っていきます。


「美味しい……。」


相変わらずのスルガさんの味に俺は感嘆の声を上げました。これが本当に美味しいんです。絶品なんです!


そんな幸せの朝の一時はガラッと開いた襖から一変しました。


「あ、起きたのリラちゃんおは………。」


ブシャアアアアア!!


俺の喉は唐突にそんな声を上げると朝一番の鮮血をリビング中にばらまきました。赤いものが味噌汁の中へ混入されてしまう瞬間を見た時、俺の涙腺は緩みました。


「おはようお兄ちゃん。」


碧色の瞳に艶のある滑らかなブロンド色の髪を持つ少女はその襖の中から現れました。


俺は喉に風穴を開けながら後ろへと倒れ込みます。そこには粉微塵にされた目覚まし時計の姿がありました。






はい。というわけで状況説明終了


「あのねリラちゃん。よく聴いてよ。俺の制服は朝汚したら大変なことになるから俺を朝に殺そうとするのは無しっていったよね?それに俺は死なないけど痛みはあるからね?分かってるよね?」


俺は俺のあぐらの上に座る少女を叱っていました。ちなみに彼女を膝に乗せたのは俺ではないですよ。俺が復活した時には既にそこにいたんです。決してロリコンではありません!


「うん。わかっているよお兄ちゃん。」


くるっと向けられた純真無垢な笑顔に俺の心は癒されてしまいました。いや、違う違う!癒されたらダメだろ俺!


そんな自分の甘い考えをどおにか振り切り、再び注意の声を上げようとした俺でしたがテレビが表示した8時05分という数字が俺を現実へと呼び戻します。


「あー!!もう時間だ!リラちゃんもじゃあね。あとのことは宜しくお願いします。スルガさん!」


「はーい。気を付けて行ってきて下さいね。」





春は過ぎ去りすでに季節は夏の色が見え隠れしています。


小鳥の囀りとともに俺は一人の獣と出会っていました。


「ケケケ、お前美味そうだな。」


どっかで聴いたようなフレーズに俺は首を傾げましたが、そんなことはどうでもよかったです。問題なのはこの現状でした。


場所は公園。男一人と獣?一匹。


獣の皮を被っているような獣のお兄さんは白くて美しい歯を輝かせながら僕を見つめてきます。あ、眩しいからその歯を閉まって!


俺はそんなお兄さんにおそるおそる物申しました。


「あのー。俺、これから学校なんですけど。」


俺の言葉が通じたのでしょう。お兄さんは口元に笑みを浮かべながらこういい放ちました。いや、だから歯が眩しいんだって!


「大丈夫だって、すぐに楽にしてやるからな。」


俺はその言葉に安心しました。このお兄さんは俺のことを考えてすぐに終わらせてくれると言うのです。でも、それなら忙しいこの時間帯に俺を呼び出さないのでは?


俺はお兄さんに背を向けました。


よし!


「ぐへへへ。いっただっきまーす!」


お兄さんのあついハグを俺は全速力で回避しました。


イヤイヤイヤイヤ!無理!こんな獣に喰われて死ぬなんて絶対嫌だよ!


「まってよー。」


愛しいものへかけるようにお兄さん〈仮〉はうふふと微笑みます。まあ、これは俺がデフォルメした姿ですが、みんなもこっちの方がいいでしょう?………だって


「まてやーゴラー!!」


ヒイイイ!!


餓えた獣そのものなんですもの。嫌だって言ったじゃないですか。


「あのお兄ちゃん達変なのー。」


俺がふと視線をそこに向けるとそこにはお母さんに連れられて歩くかわいい女の子の姿がこちらに指を向けてそう言っています。


「………。」


お母さんは終始無言のまま娘を抱いてその場を後にします。余程酷いものを視てしまったのでしょう。俺ビューで見ればお母さんの手は少し震えていたような気がします。失礼ですね。


俺は必死の形相で公園の外に走り抜けました。獣の脚力といえど所詮は二足歩行。同じ条件下であればギリギリできる芸当と言えなくもないでしょう。


「しっ、しつこいなぁ!」


流石に寛容な俺も息を切らせ始めるとそう言わざるを得ませんでした。だってそうでしょう?これはおそらく命懸けの鬼ごっこなんですから。


しかし俺の問いを返してくれる筈の獣の姿はもう後ろにはありませんでした。どこから見失ってしまったのでしょう。俺は激しく脈打つ心臓をどうにか抑えながら後方の道路を見ます。


ですがやはり獣の姿はもうありません。俺はいつまた襲われるのではないかと内心ドキドキしながら俺の通う学校へと足を向けていきました。



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