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魔王の産声(旧:翁な青年の異世界冒険記)  作者: 亜狸
第3章 再開、そして
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25話 冒険者協会本部と少女の不満

亜狸です。

宜しくお願いします。

 ガライの指さした先、冒険者協会の本部を見つめるシグルス。そこには、3国の国旗を掲げた、まるで王城のように大きな建物に、各々の文化が自己を主張し合うかのように装飾が施されていた。そして、その装飾の丁度中心の位置に翼の形のレリーフが高らかと掲げられている。


 シグルスは暫し、冒険者協会の建物を見つめ、ふと口を開く。



「なんとも、素晴らしい建造物じゃなぁ。まるで文化遺産じゃわい。この景色、婆さんにも見せてやりたかったのう。儂と婆さんは…」



「あ、そろそろ入りましょうか、シグルス様、こんな所で、ずっと立っている訳にも行きませんし」



 いつかのマグナの町の時のように、シグルスの昔話が始まる。ルミアは、このままだと、長くなると判断し、さっさとシグルスの話を遮り、冒険者協会本部の中へ入るように促したのだった。また、今日はガライもいる為に不自然に感じられる発言は慎むべきであると、シグルスにそっと意見する。


 シグルスは遠き日の想い出から帰ってくると、ガライとルミアの後に続き、冒険者協会の本部へと入っていった。



 冒険者協会本部は、全てにおいてマグナの町の冒険者協会とは規模が違った。建物の大きさ、受付の数、内装、そして何より冒険者の数が圧倒的に多い。リリアンユ公国の依頼関連で、平時より人数が多いとはいえ、それを差し引いても、冒険者の数が多いのだ。



 シグルスは、ガライの後に続き、マグナの町の冒険者達より実力者が揃っていると感想を抱きならがら、ガライの後ろを歩いていく。


 ガライは、入り口から引かれている赤いカーペット沿いに、まっすぐと歩いてゆき、本部内中心にあるカウンダ―にへと向い、女性に声をかけた。



「エルグランド王国の冒険者チーム、『鉄拳』に所属する3級冒険者のガライ=ダックスだ。俺の連れと、ここで合流する事になっているんだが……」



 ガライに声をかけられた女性は、すぐに名簿をパラパラと捲りながら確認を行う。そして、その中の一つから必要な情報を見つけると、ガライの仲間は既に集合している旨を説明し、ガライに東棟にある第3会議室へと向かうよう声をかけた。


 

 ガライに連れられ、冒険者達が集まる中央ホールを東に横切り、東棟へと向かったシグルス達は、第3会議室の扉を叩いた。



「お、着いたかガライ。そっちが、お前を伸したって奴か、宜しく頼むぞ。まあ適当なとこに座ってくれ」


「久しぶりだな、団長。ああ、コイツ等が前に話した奴等だ」



 部屋へ入るなり、一番奥に座っていた黒髪をオールバックにした男が、ガライに親しげに話かける。彼はこのチーム「鉄拳」の団長だとシグルス等に挨拶を交わすと、適当な位置に座ってくれと「鉄拳」のメンバーが座る椅子等を指さした。


 シグルスは、その中の空いている席に座り、ルミアもその隣の椅子に腰かけた。ガライは鉄拳の団長の隣にある席まで行き、そこに腰かける。



「さて、全員そろったようだな。まあ今回、お前等を呼びつけた理由については、先に文で説明した通りだ。リリアンユ公国の外れ、大森林を守護するシトラール砦へ、例年より遥かに多い数の魔物が押し寄せようとしている。俺達は、リリアンユ公国から冒険者協会に寄せられた救援要請に従い、シトラール砦への救援へと向かう。で、俺達は他のエルグランド王国に所属するチームと共に、第2旅団へと編制される事になった。ここまでで質問のある奴はいるか?」



 団長はそこまで、皆に説明すると、皆の顔を見渡す。

 すると、席についていた女性の一人が手を挙げた。



「お、ニナ。なんだ? 」


「団長ッ! 私は納得行きません!! どうして、そこのどこの馬の骨かも分からないような、ましてッ! チームにも所属していないような8級の冒険者なんて連れて行くのですかッ!?」



 声を荒げたのは、茶色の髪を二つに縛った、革製の防具を身にまとった女性だ、彼女はニナと言う4級冒険者である。ニナは得体の知らない男女が任務に参加する事に納得がいかないらしい。


 今回の任務に際し、自分達のチームに所属する4級より下の冒険者達は、町に残る事となっている。団長の説明では、冒険者が全て国から離れてしまうのは危険であり、大体のチームは中堅所の5級以下の冒険者達は残していく。理屈は十分に納得できるのだが、今回外されてしまった仲間の中にはニナの友人もおり、任務に参加できず悔しい思いをした友人の事を考えると、どう考えても、部外者であり、しかも8級の冒険者の男女が参加するなど納得いかない。



「だから、何度も言ってんだろ? 特に俺が認めない限りは5級以下の奴等は連れて行かないって。大体、5級以下の奴等全員連れて行ったら、誰がこの町の依頼を受けるんだ? ついでにコイツ等、ガライを倒したらしいぞ、多分、お前よりも強いんじゃねぇか? 」


「は? 4級冒険者である私が、8級冒険者に、劣ると言うのですか……? その話は確かに私も伺いましたけどっ、きっと何か卑怯な手を使ったに決まってますッ!」



 ニナはなおも納得が行かないといった表情で、団長に噛みついている。シグルスは、若いのうと呑気にニナと団長のやり取りを見守り、ルミアは少し困ったような表情で見守っていた。

 

 今回の件は借り(殺害未遂)があるガライにどうしてもと頼まれ、シグルスとルミアが依頼を断り切れなかった事が発端なのだ。このように揉め事に発展してしまうので在れば、断った方が良かったのかも知れないなとシグルスは苦笑いした。



「よしッ! それじゃあ、戦って実力をみりゃあ良いじゃないか。出発までまだ2日間あるし、今日、会議が終わってから戦おう。良いかな、シグルス君、ルミアさん。

 シグルス君の相手は俺だな、うん、ぜひそうしよう。ルミアさんは、ニナの相手をお願い出来るかな? 」



 チーム鉄拳の団長は、実はガライを倒したという男に興味津々であり、顔にこそ出さないが、実はシグルスと戦ってみたくて仕方なかったのだ。そう彼は所謂「戦闘狂」なのである。


 普段ならば、4級程度の団員の言葉など一刀の元に切り伏せるのだが、ガライを倒したというシグルスと戦える機会(口実)が出来た事を喜んでいたのだ。


 他の団員、特に団長と付き合いの長い3級以上の冒険者たちは、団長の意図に気づいているようで、団長の言葉に苦笑いを返している。



「別に構わんぞ、ルミアも構わんじゃろ? 」



 シグルスは、団長の言葉に承諾の返事を返すと、ルミアにも声を掛ける。ルミアは少し楽しそうなシグルスを見つめながら、まあ仕方がないかと頷いた。



「よし、決まりだな。ニナも異論は無いだろ? じゃあ、話が終わったら、チーム鉄拳は第1訓練場に集合な」

一部編集しました。

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