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魔王の産声(旧:翁な青年の異世界冒険記)  作者: 亜狸
第2章 冒険者として
23/27

23話 鈴の音が聞こえる夜

2話投稿しています。

暫くエタってしまっていた事に対するお詫び等、前話前書きにてしています。


長らくエタってしまい。申し訳ありませんでした。

また、小説を書かせて下さい。


ちなみに、まずは完結させてから細かい手直し、修正などを行っていきたいと思います。文章表現やストーリーについては、ややおかしな所が出てくるかも知れませんが、修正前の作品という事でご容赦下さい。

 深夜になり、夜の番をザイルと交代したシグルスは焚き火に薪をくべながら、月を見ていた。

 今日は満月のようで、荒野の荒れた土地や、立ち並ぶ岩が月の光で照らされ、幻想的な光景をシグルスの瞳に映している。


 シグルスは月から目を逸らし、隣に未だ転がっている青年、アレフに視線を落とした。

 ザイルに痛めつけられた後、結局彼はこれまで目を覚ましていない。シグルスの見た感じでは脳に影響があったり、内臓を痛めたりした様子はなかったので、そのまま寝かせている。


 長い夜、荒野には生物の気配が殆どない、先の這竜の騒動で魔獣の類も逃げてしまったらしい。


 内心、暇と思いつつも気を引き締めたまま周囲の警戒をしていたシグルスの耳に、ふと、高く澄んだ音が聞こえてきた。



「ん? なんじゃ、誰かおるのか?」



 シグルスは音の気配に振り返るが誰もいない。もう一度今度は警戒を強め周囲を見渡すが、やはり誰もいない。



「気の、せいか? いや、しかし、確かに音が聞こえた……」


『チ…ン……チ…リン』 



 周囲への警戒を強めていたシグルスの耳に再び澄んだ音が聞こえる。シグルスはやはり人の気配が無い事を確認すると更に警戒を強めた。村正にそっと手を置き、いつでも抜刀できる姿勢でそのまま周囲の気配を探る。



「風鈴の音? いや、鈴の音か…? なんなのじゃ一体? 」


『チリン、チリリリン……」


「……ッつ! ちぃッ!!」



 周囲の警戒を強めるシグルスの耳にハッキリと音が聞こえたと同時にシグルスは言い様の無い、悪寒と頭痛、そして眠気に襲われる。

 シグルスは気力を振り絞り、立ち上がると村正を抜刀するが、音の正体は未だわからない。 

 しかし、これほどまでに嫌な気配を感じた事など今まで一度たりとも無い。それこそ、戦時中死にかけた時だって、ここまでの悪寒が走った事などは無いのだ。

 言うならば、蛇に睨まれた蛙。絶対的な強者を前にした草食動物になってしまったかのような気分だ。

 そう、この悪寒の正体は恐怖。シグルスはこの正体のわからない鈴の音に確かに恐怖を感じているのだ。



『チリン、チリリン、チリリン』



 気力で立ち上がったシグルスは、もう一度音が聞こえた時にはまともに立つ事さえも、ままならなくなってきた。シグルスは片膝を付き、揺れる視界で周囲を見渡す。



「………」



 シグルスは失いそうな意識の中で、表情が無く、まるで夢遊病患者のように、ふらふらとおぼつかない足取りで音のする方へと向かっていくアレフを見た。



「……ル……、シ……ス…」


 

 朝の光を瞼越しに感じ、微睡む意識が急速に浮上していく。

 耳には少女の声が聞こえるが、まだ微睡から覚め切っていないのか、はっきりと聞き取れない。

 声に意識を集中し、微睡から覚めようとするシグルスは酷く汗を掻いていた。



「シグルス様ー? シグルス様ー、朝ですよー、刀握ったまま寝てたら危ないですよー」


「……ルミア」


 ルミアの呼びかけによって目覚めたシグルスは昨夜の頭痛の余韻が残る頭を振り、ルミアへと声をかける。



「ルミア…、儂は一体…?」



 寝起きの気怠そうな様で問いかけるシグルスにルミアは、シグルスが昨夜の番の間に眠ってしまっていた事、そしてその手には抜き身の刀が握られていた事を説明した。



「一体どうしたんですか? 酷く魘されていたようですが?」



 流石に様子のおかしいシグルスを心配し、ルミアは一体どうしたのだとシグルスへと問いかける。

 シグルスは少し思案した後、ルミアには昨夜の事を話す事をやめた。自分自身何が起こったのか、ハッキリと分からない上に、特に今の所目立った害はない。


 音に連れ去られるかのように、フラフラと歩いていったアレフもシグルスの近くにいまだ転がっている。 昨夜の事が事実だったのかさえわからない。


 昨夜のはただの夢で、シグルスは久々の大怪我から魘され、変な夢を見て抜刀してしてしまったのかもしれない。尤も、その場合は危険極まりない寝相であり、正直、刀剣の扱いに長けたシグルスにはありえない事とも思えるのだが……。



「いや、ちと悪い夢を見ておったようじゃ。心配かけたの」


「本当、刃物を持ったまま寝てたら、何かあったのかと思いましたよ」


 そうルミアは少し不安そうにシグルスをまじまじと見つめていたが、シグルスが苦笑いをするとルミアも笑みを返したのだった。




感想・評価等頂けますと狂喜乱舞いたします。



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