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魔王の産声(旧:翁な青年の異世界冒険記)  作者: 亜狸
第2章 冒険者として
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18話 初めての仕事

に、日間ランキング3位に、ジャンル別日間ランキング2位、ですと……?

まるで夢でも見ているようです。

 冒険者協会一階の受付窓口の脇には、冒険者が依頼を受注する為の掲示板が設置されている。冒険者は掲示板から依頼の掛かれた紙を剥がし、受付にて受注印を押して貰う事によって、依頼を受注する事が出来るのだ。


 ちなみに、字が読めない者などはフロアに待機している職員に銅貨1枚を支払い、自分の受けたい仕事等を伝え、職員に条件にあった依頼を探してもらう事が出来るようになっているようだ。


「ふむ、最初の仕事は、ソレにしようかの?」


 一度嘔吐し、少し休んだ事によってスッキリとした表情のシグルスが、ルミアに掲示板に書かれている依頼書の内容を読み上げて貰いながら、頷き言葉を掛けた。


 薬草採取依頼。これがシグルスが最初に選んだ仕事だ。この依頼は、町の外側の城壁の脇に生える薬草の新芽を30程積んでくるだけの、まさしく新米冒険者が行いそうな依頼である。


「へぇ、意外ですね、シグルス様の御力なら、てっきり魔獣討伐かなんかの依頼を受けるかと思ってました」


「うむ、まあそれも魅力的ではあるんだがのう。 儂はこれから、この世界で冒険者として生きてく訳じゃろう? 念の為に、突然の怪我や病気に備え、薬としての効果を持つ植物などを学んでおく事は必要かと思っての」


 シグルスの言葉に、流石ですねと関心するルミア。確かにその通りだ。冒険者の仕事は長期に渡る事などもあり、止血効果のある薬草や、毒消しなどについての知識は非常に重宝する。実際に、この世界の騎士などが長期任務などに出る時なども、薬草学を収めた人間は必ず一部隊に一人は配置されているのだ。

 ちなみにルミアが薬草などについての知識があまりない事は、ルルの森を彷徨っていた頃に確認済みだ。


「確か一度に受けれる依頼は、3つまでと言っておったな? ならこの近辺で取れる、他の薬草採取関連の依頼も探してもらえるかの?」


 ルミアが返事をし、掲示板と睨めっこを始める。薬草採取の依頼はそこそこ多い割に、目立ちたがりの新米冒険者には敬遠されがちな為に、特に探すまでもなくすぐ見つかった。


 ルミアが手にとった依頼書の内容をシグルスに説明するとシグルスもうなずき、二人は依頼を受注するために受付へと向かった。受付の女性に依頼書を手渡すと、女性は依頼書に受注印を押し、二人に軽く激励の言葉を送ってくれた。


 依頼を受注した二人は、冒険者協会を出ると、南門から町を出て、町を囲む城壁に沿って北門の方へと移動しながら、薬草の採取に専念する。


「あ、これ痛み止めの薬草じゃないですかね、シグルス様」


「ん、間違いなさそうじゃのう。お、こっちは下痢止めかのう?」


 依頼書を片手に地面に目を向け、歩きまわる二人は順調に依頼の品を集めていく。依頼のあった薬草は意外にもすぐに数を集める事が出来、シグルスは思ったより簡単な仕事に、わざわざ冒険者に頼む必要があるのかと疑問に思うが、ルミアに稀に魔獣が出て危険を伴う為と、説明を受けて納得したようである。

 

 日没までに若干の余裕を残して、採取を終えた二人は町の北門をくぐり、冒険者協会へと報告へ赴く。

 依頼の報酬は全部で銀貨1枚と、やや少ないものの、シグルス達が採取した薬草は、下痢止め、止血、鎮痛作用のあるもので、これからの生活に役立ちそうな知識を得たシグルスは満足そうだ。


 そして、報酬を受け取った二人は、大分日も沈んできている事もあり、特に寄り道もせずに月の兎亭へと帰っていった。


「あ、おかえりなさい。ご飯の準備できてますよ~」


 月の兎亭へと戻った二人をエレナと、やや顔色の悪い店主が迎えてくれる。シグルスは昨夜の事に対し、改めてエレナに騒がせて済まなんだのうと侘びを入れたのだったが、エレナは特に気にしてない様子だ。


「いえ、ここでは、いつもの事なので、あまり気にしないで下さいね~。酔っ払って転がっていたお客さん達も、昼前には起きて店の片付けを手伝ってくれましたから、お昼の営業にも何とか間に合いましたしね~。それに今回は、備品が壊れたりしてないから、まだいい方ですよ」


 エレナはシグルスに笑顔で答えると、カウンターの奥でスープを温め直していた父を一瞥し、同意を求める。店主は少しバツが悪そうに「お、おう」とエレナの言葉にやや詰まりながらも答えつつ、カウンターに出来上がった料理を並べていく。

 

 そうして、店主に出された胃に優しい野菜中心の料理を頂いた二人は、夜が更けるまでエレナ親子との会話を楽しんでから、2階へと上がり床へとついたのだった。





 その頃、完全に日が沈み、すっかりと暗くなってしまった町の南門前で立ち呆けている二人の男がいた。男達はシグルスとルミアが薬草採取の依頼を受けた事を盗み聞きしていたようで、南門から出て行った二人が戻ってくるのを待ち伏せしているのである。


「ねぇ坊ちゃん? もう帰りましょうよ、こっそりと後を付けた挙句に待ち伏せなんて、もう、なんていうか立派な変質者じゃないですか」


 二人の男のうち、背の高い方が遠慮なしに口を開き、坊ちゃんと呼ばれた男が甲高い声で怒声を上げる。


「うるさい!! 僕を変質者扱いするなっ‼ 僕はただ…、あの美しい少女、ルミアさんとお近づきになりたいだけだっ!」


「一目見ただけで、ここまでする時点で十分変態っぽいじゃないですか、ほら、旦那様がそろそろ心配すると思うんで早い事、屋敷に帰りましょうよ?」


 呆れた表情の背の高い男が、坊ちゃんと呼ぶ人物に声をかける。


「うるさい、僕はここに残るっ! 帰りたいならお前一人で帰れっ!!」


「あ、良いんですか? じゃ、お疲れ様っしたー」


 そう言うと、背の高い男がスタスタと歩き出す。甲高い声の男は去っていく男を見て次第に不安そうな表情へとなってゆく。


「ま、待てっ! 僕を置いていくなッ!!」


 結局、甲高い声の男は耐えきれず、慌ててスタスタと帰っていく男の後を追い掛けて行ったのだった。


「くそぅ、明日こそ、明日こそルミアさんと話を……!」

ご意見、感想など聞かせて下さいますと嬉しいです。


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