16話 冒険者協会 その4
ジャンル別日計ランキングで73位⁉本当にありがとうございます‼
今回は説明回です。
何とか無事(?)、試験に合格したシグルスとルミアはガライに案内され、冒険者協会2階にある面談室へと来ていた。面談室は調度品などは何もなく、簡素な造りの木製のイスとテーブルが置かれている簡素なものだ。
「悪い、俺はてっきりお前たちは実技で落ちると思ってたもんで面接はしてなかったんだ。まあそんなに時間もかからねぇし、ちょいと簡単な質問に答えてくれりゃあ良いからよ」
ガライが少し悪びれた風に笑いながら二人に謝罪し、面接を開始した。
「じゃあシグルス、出身地と、あとは愛用の獲物を教えてくれや」
「うむ、儂は日本という遠い島国から来たんじゃよ。儂の獲物はそこでのみ作られる刀と言う切る事のみを追求した片刃の剣じゃ」
ルミアが驚いた表情でシグルスを見つめる、横から助け舟を出そうと思っていたら、さっさとシグルスが自分の出身地を包み隠さず伝えてしまったからだ。
だが、シグルスにはそれなりの考えがあって日本出身という事を伝えたようだ。
この世界の文明レベルはどう見ても中世程度、少なくとも地球であればその時代の地図には自国周辺の事しか書かれていなかったり、宗教によって影響を受けたりとで、未知なる大陸があった所で不思議ではないだろうし、仮にある程度地図の技術が発達していた所で識字率すら高くない事から、この国では少なくとも教育などはそこまで発展していないのだろう。仮に知らない国の一つや二つあった所でまず疑問には思うまいとシグルスは考えたようだ。
ならば中途半端な嘘を吐いて後々中途半端な事になるよりかは、さっさと真実を話してしまった方が、後々起こるであろう感覚の違いや、文化の違いなどにも言い訳がしやすいのである。
「へえ、聞いた事無い国だな、ふぅん、それで変な形の武器をもってたのか」
シグルスの目論見はどうやら当たりのようである。ガライは今度はルミアの出身地についても質問した、シグルスはルミアは元々この世界の出身なのだからてっきり本来の出身地を答えると思っていたようだが、ルミアは自身もシグルスと同じく日本出身であるとガライに答えていた。
出身地や各々の使う獲物などを質問した後のガライの質問は、倫理的な問いが多く、恐らくはシグルス達が冒険者協会に所属した場合に問題行動を起こさないかを量っているのだろうと推測できた。
そうして全ての質問に答えた二人は、このままこの部屋で待っているようにとガライに言われ、部屋から出ていくガライの姿を見送ったのだった。
「のう、ルミア? お主はこの世界の出身であろう? なぜ日本出身などと言っておったのじゃ?」
シグルスが先程のルミアの言葉に疑問を感じたようで、問いを投げかけていた。ルミアは少し困ったような表情を曇らせシグルスに答える。
「あはは、まあ良いじゃないですか、私も一応、喜三郎様の世界の知識も持ち合わせてますし、それに出身地が違う二人が一緒にいるのも不自然でしょう?」
苦笑いをしながら答えたルミアは、もっともらしい事を言いながら答え、シグルスも特にそれ以上は追求するつもりもない。きっと答えたくない事なのだろうと早々に話題を切り替え、その後は他愛のない話などをして過ごし、10分くらいした所でガライが部屋に戻ってきた。ガライの手には銅色の札、兵士が死亡時に認証する為のドックタグのようなものを持ってきていた。
「ほい、これが冒険者証だ。これがあれば死亡時にまあ身元の確認がしやすいってのと、冒険者協会に所属している事の証明にもなるから絶対に失くすなよ? わかったな、失くしたら罰金があるだけじゃなくて、再度試験を受けてもらわないといけないからな?」
ガライに手渡された札はやはりドックタグと同じような役割を持つらしい。シグルスは手渡された札を観察する。
札はまさしくドックダグと同じような楕円形で、紐や鎖を通せるように上部に穴が開いている。名前と出身地と使用武器、あとはコード番号のようなものが刻まれているだけの簡単な作りだ。当然シグルスは字が読めないので刻まれている文字を隣にいるルミアに教えてもらい理解したようだ。
「刻まれてる事に誤りはないか? なかったらその札に魔力を通しながら、何か大切なモノを思い浮かべてくれ。悪用防止の手続きだ」
ガライにそう言われるがままに、昨日の失敗の事もあるのでおっかなびっくりしながら冒険者証に魔力を込め、婆さんの姿を思い浮かべるシグルス。ルミアは2回目なので手慣れた様子で魔力を冒険者証に魔力を込めている。二人が魔力を込め終わると冒険者証はうっすらと赤く光り、それを見ていたガライが二人に声をかける。
「よし、それで冒険者証の登録は完了だ。もう一度さっき考えたモノを思い浮かべながら魔力を通してみてくれ」
ガライの言葉に従う二人。魔力を通す事によって冒険者証が再びうっすらと赤く光る。
「よし、その冒険者証はだな、光る事で初めて身分を証明できるんだ。なのでどっかで野たれ死んでる冒険者の冒険者証を拾った所で、悪用は出来ないようになってるんだよ。まあ詳しい仕組みはしらねぇけどな」
ガライの言葉に驚くシグルス。考えようによっては現代日本より凄い「せきゅりてえ」だと感心しているようである。
「うし、それじゃあまあ今日はこれで終了だ。 それで明日だな、試験に合格した他の冒険者達と一緒にココの2階で週一回ある冒険者の心得や、注意事項の説明会があるんで来てくれ。その説明会が終わってから、初めて冒険者として登録されるんでな」
「うむ、今日は世話になったの。有難く思うぞ」
「有難う御座いました。それと、本当にすいませんでした」
今日一日の礼を述べたシグルスに、礼を言いつつガライに謝罪するルミア。彼女は本当に申し訳なさそうな表情をしている。
ガライは彼女の様子を見てワハハと笑うとルミアを安心させようと、彼女の頭を豪快に撫でた。
「大丈夫だっていったろ? 俺は体だけは丈夫なんだよ。たかが気絶くらいでどうこうなるような鍛え方はしてねぇんだ」
と、実際はどうこうなっていたガライが笑った。彼女はまだ少し申し訳なさそうにしているが、ガライはこの後に教習組の連中の試験を行わなければならないとの事でシグルス達に別れの言葉を伝える。
「まあ、10級からのスタートとはいえ、お前等には期待してるぞ。なんせ俺をのしちまうんだからな。その内一緒に仕事もするかも知れん、その時は宜しく頼むぜ」
ガライがニッと笑い、シグルス達に語りかける。シグルスも同じくニッと笑うと答える。ルミアも少し微笑むと軽く頭を下げてシグルスに続き答える。
「うむ、その時は宜しく頼むぞ」
「はい、その時は宜しくお願いします。でも、やっぱり少し休んだ方が良いんじゃないですか? いくら丈夫だからって、二回も死……、気絶したんですし」
まだ心配しているルミアにガライは大丈夫だって、じゃあなと言葉を残し、面談室を後にした。残されたシグルスとルミアも、冒険者として活動できるのも明日以降となるので今日はおとなしく、月の兎亭へと帰る事にしたようだ。
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