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魔王の産声(旧:翁な青年の異世界冒険記)  作者: 亜狸
第2章 冒険者として
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10話 異世界の食事

いつもお世話になっております。

 町に入る為の簡単な手続きを終えたシグルスとルミアは、無事に町に入る事が出来たようだ。手続きとは名前と出身地を用紙に書き込み、身分を証明出来る者はそのまま銅貨3枚を払って門をくぐり、身分証明書等を持たぬ者はそこに勤める衛兵に幾つか質問された後、銅貨5枚を支払うと門をくぐる事ができるシステムのようである。当然この世界での知識を殆ど持たないシグルスでは不可能な為、全ての手続きは門の直前でお姫様抱っこから解放されたルミアが行ったようである。


そして町に入るったシグルスは初めて見る光景に感嘆の声を漏らす。


「まるで中世ヨーロッパを思わせる町並みじゃのう。華美な装飾などはないにせよ随所に研鑽された機能美を感じるわい、うむ、見事じゃのう、出来ればこの美しい石造りの町並みを婆さんにも見せてやりたかったわい…」


ルミアは彼の隣の立って相づちを打っていたのだが、内心この世界に転生しているのだ恐らく普段から見ているだろうなと思ったが口には出さない事にしたようである。


「儂と婆さんはのう、儂が出兵する際に結ばれたもんで新婚旅行にも行っておらんのじゃよ…、唯一行ったと言えるのは二人で近くの砂浜を歩いたくらいじゃ。あの頃は金も物もなく、ゆっくり過ごす時間とてなかった。しかし、それでも儂にとってあの時間は何者にも替えがいものじゃった…」


遠い目をして婆さんとの馴れ初めを語り出したシグルスにルミアは相槌を打ちつつ、このまま行くと夕方まで昔話を聞かされてしまいそうだと早々に話題を切り替える事にしたようだ。


「シグルス様、とりあえず町の衛兵に野盗達の事を伝えに行きませんか?」


「おう、そうじゃったのう…。連中も悪事を働いたとはいえ、ずっとあそこに縛り付けておく訳にはいかんしのう」


 遠く過ぎ去った日々に思いを馳せていたシグルスはルミアの言葉によって現実へと引き戻され、彼女の言うように昨夜の野盗達の事を町の衛兵へと知らせに行く事にした。

 

 衛兵の詰所はこの街にある南門、北門の両側に出張所があり、町の中心に本部があるとの事だ。シグルス達は北門のすぐ近くで街を眺めていたので近くにある北門の詰所へと行き、事情を説明する事にすると詰所へ向けて歩を進めた。詰所は日本の交番のように簡素な造りで室内にはテーブルとイスくらいしかなく、そこでシグルスは衛兵に昨晩の出来事を包み隠さず説明したのだったが、衛兵は割とあっさりとした対応で2つ3つシグルス達に質問を投げかけると、シグルス達を下がらせた。

 ルミアの話によると通り掛けの冒険者達が犯罪者を捕えて来るのは特に珍しい事でもないそうである。野盗達を捕縛した事による報奨金などは基本的にはなく、その変わりに野盗達の持ち物は捕縛したものが自由にして良いらしい。但し冒険者に捕縛依頼や仇討の依頼などが行われる事があって、その際は謝礼金として報酬を受け取る事が出来るようだ。前者は被害を受けている商人が、後者は仇討ちを望むものによって依頼が出される事が多い。この国では仇討は認められているので、そういった依頼も少なくはないそうだ。


「さて、用事も終わった事だし、これからどうするかのう?」


「あ、そしたらご飯食べに行きませんか? 私もうお腹ペコペコで死んじゃいそうなんですよ」


 詰所を出た二人は飲食店を探しに町の中央へと向かう。町の中央と北と南の門を繋ぐ中央通りは色々な商店が並んでいて、行き交う人々も多く活気に溢れている。

 二人は通りに数多く存在する飲食店の一つへと入り、適当に空いているテーブルへと着いた。店内は丁度昼のかき入れ時だったらしく喧騒に包まれ、従業員であろう娘も忙しそうに動き回っていた。


「ほう、この店には「めにゅー」はないのじゃの」


「ええ、この世界はそこまで識字率は高くないですからね。こういう労働者が多く利用する店には基本的にメニューはないんですよ」


「なるほどのう、そういえば儂も言葉は解るが字は読めんようじゃし丁度良いのう。」


「いらっしゃいませぇ~、今日のメニューはグル鳥のローストか、ネモのステーキです。どちらになさいますか~」


 シグルス達が話ていると丁度、従業員の娘が注文を取りにきた。シグルスは両方を注文し、ルミアはグル鳥のローストを注文した。娘は注文を聞くと愛想良く返事をし厨房へと駆けていく。


「そういえばルミアよ、お主の言葉に度々出ておった冒険者とはなんなのじゃ?」


「冒険者とは、依頼を受けて商人を護衛したり、植物や鉱物を採取をしたり、魔獣を討伐したりする職業ですね、ああ、あとは先程も説明した犯罪者の捕縛や仇討ちの依頼なんかもありますね」


「成程のう、儂のいた世界にはなかった職業じゃな、しかし魔獣とな? それが女王から依頼を受けた儂の倒すべき相手なのかの?」


「いえ、魔獣は基本的には凶悪な動物なんですよ、なのでこれらの存在の討伐はシグルス様の仕事には入りませんよ。シグルス様の任務の対象となる存在が出現した場合、この世界の神から依頼される事になるかと思いますよ」


「成程のう、この世界にも神はおるのじゃのう、そういえば儂も一応は守り神的な存在じゃったかのう」


「ええ、シグルス様は現在は守護の神ですからね、その内に他の守護の神と出会う事もあるかと思います。たまに協力任務なんかもあるみたいですからね」


 シグルスは興味深そうにルミアの話を聞いていたのだったが、そこで先程の娘が食事を運んで来たので話を止めて、食事に集中する事にしたようだ。

 食事は先程、娘が言っていた主菜の他に簡単なお浸しやスープがついており、主食はトウモロコシのような穀物を潰して薄く焼いたものだった。


 普通、正体不明の肉や野菜などを食す事に抵抗がありそうなものだが、シグルスは前世の、大戦中に色々なモノを食べているので、対して抵抗はないようだ。

 それこそ、大戦中に正体の解らない蛇やトカゲ、動物などを狩り、食べていた事を思えばどうと言う事はない。人の手によって出されるだけでも安心感がある。


 ルミアはというと彼女は元々、この世界出身の人間である。懐かしい味に上機嫌で舌鼓を打っているようだった。


 そうして、昨夜一切食事を摂っていなかった二人は、ぺろりと食事を平らげ満足すると、一息つき、先ほど中断した話を再開するのだった。

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