風鈴が、鳴る
掲載日:2025/12/30
風鈴が、鳴る。
風鈴が、鳴る。
私の背後で、風鈴が、鳴る。
風もないのに、風鈴が、鳴っている。
こんな暗闇の中じゃ、見えない、どんな風鈴なのか。
私は、何も、していない。
何をしたところで、変わらない。
そんな諦めが、人間には、似合っている。
このまま、終わって、いくのだろう。
風鈴が、止まる。
あれほどずっと鳴り続けていた、風鈴が──
暗闇の中、たったひとつの、私でないものだった、風鈴が──
私を暗闇から切り離し、私として形づけてくれていた、風鈴が──
私には、わかった。
こうして、人間は、海の中へ、溶けていくのだろう。
みんなの中へ、私も、いくのだろう。
形は、消えて──
おおきなものに、取り込まれて──
風鈴が、鳴った。
私はまたここで、私として存在しなければならない。




