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矛盾

小さい頃からわたしは、

「この子は甘やかされて育ったんで、わがままでわがままで…」

両親が他人にそう言うのを、毎日のように聞いて育った。

不妊治療の末にできた子だから、可愛がられて、愛されて、そしてわがままに育ったのだと。


あまりにも当たり前に、いつもいつもそう言われていたから、わたしも当たり前にそう思い込んでいた。

自分は可愛がられ、甘やかされて育ち、そしてわがままな子なのだと。


だけどおかしいのだ。

どんなに遡って思い出しても、わたしには可愛がられた記憶も、甘やかされた記憶も、わがままを言えるような雰囲気の記憶さえも、全くないのだ。


あるのは、母親のスカートの柄と、怒りで顔を赤くした父親の顔と、「おまえなんか産まなければ良かった」「おまえさえいなければ」「疫病神」という怒鳴り声と、泣いて、泣きすぎて吐いている小さなわたしの記憶。


父親や母親の優しい笑顔も、わたしは見たことがない。


わたしは愛されて、甘やかされて育ったはずなのに、過去の記憶はそれと一致しないどころか正反対なのだ。


この矛盾はわたしの中にずっとあった。

あったけど、それに気付いたら何かが壊れる気がして、ずっと気付かないふりで生きてきた。


だけど、気付いてしまったのだ。

その矛盾に。現実と嘘に。

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