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【悲報】ニート ワイ、異世界でチートなし ~しかも1日12時間以上屋内にいたら爆発する呪いかかってるンゴ~  作者: 毒の徒華


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7/11

この世界ポリコレ棒にぶったたかれたんか?




 ワイは泣きながら虫を食っとった。

 もはや虫の味なんて分からん。

 ただ、「食わな爆死して死ぬ」という原始的な本能だけで動いとったんや。

 涙と鼻水で顔はぐしゃぐしゃ、見た目はもう完全に人生の敗北者や。


 ワイはなんでこんなことになったのか後悔しながら、まさに「苦虫」を食ってたンゴ。

 苦虫を嚙み潰したような顔って表現あるやろ?

 ような、ちゃうねん。

 まさに苦虫噛み潰しとるねん。


「……うぇっ……ミミズみたいな食感やめろや……最悪や……絶対チェックポイントを更新するで……」

『ナビゲーター:「おかわりはどうする? たんぱく質摂取チャンスやで」』

「誰が喜んでおかわりするかボケェ!」


 ワイの絶叫が森に響いたんや。

 そうしたら木々の奥から、パキパキと枝を踏む音がしたンゴ。


「ファッ!? な、なんや! 魔物か!?」


 ビビりながら振り向いたワイの視界に飛び込んできたのは――――ひとりの女。


 身長はワイよりちょい低い。

 服はどっかの民族衣装みたいにカラフルで、胸元には意味深なバッジがぎっしり。

 髪は七色で、メッシュ入り。

 訳の分からない仕組みのアクセサリーみたいなのつけとった。

 肌の色もなんとも言えん色しとる。


 な、なんやこの……多様性の権化みたいな人間は……!?

 っていうかそもそも人間!?

 異世界やし、別の種族か!?


 人間というか、ドワーフ……? 少なくともエルフではないことだけは分かるンゴ。

 それともオークなんやろか……?


「ひぃっ!? な、何してるのあなた!? 虫!? 虫食べてるの!? 生で!?!?」


 女は泣きながら虫を食ってるワイを見て悲鳴を上げて、一歩、二歩と後ずさったんや。

 人間語を話すオークみたいな女にそんな態度をとられて、不満や。


 それにワイは釈明したかったンゴ。

 好きで虫を食っとるわけちゃうねん。

 火を通したくても、火の魔法も使えないし火の起こし方もわからへん。


「いや……その……」

「ぎゃあああああああ!!!」


 その女は叫びながら全力疾走で逃げていった。


「……は?」


 あまりの展開に、ワイの脳がバグった。

 いや、逃げる? 逃げるんか? ワイがしていたことは叫ばれて逃げられるようなことなんか?


 ……まぁ、泣きながら虫食ってるやつがいたらワイも逃げるかもしれんけど。


「ちょ、ちょっと待ってクレメンス!? 別にワイ、襲ってへんやん!? 食べてたの虫やで!? 人やないで!?」


 女はワイに対して返事はなく、徐々に遠くなっていく悲鳴だけが残ったんや。


 ワイは情けなくて膝から崩れ落ちたンゴ。


 このシチュエーション、あれはワイの世界のヒロインなんか?


「……ヒロイン?」


 異世界に来てから初めての“人間の女”との遭遇や。

 これ、普通のラノベなら確実にヒロイン登場イベントやろ。

 主人公がボロボロの状態で出会って、そこから恋や絆が芽生える……って流れのやつや。


 でも現実は、虫食って泣いてたら悲鳴上げて逃げられた。


 ……ワイ、そんなにアカン見た目なんか?

 ポリコレ棒で殴られたような世界の人間……(オークの可能性もあるが)から見てもアカン見た目なんか?


 そう考えるとワイは涙がまた溢れてきた。

 虫の味よりも、この心の痛みのほうがずっと苦いンゴ。


『ナビゲーター:「まぁ、虫食ってる人間がいたら誰でも逃げるやろ」』

「せやけど、叫んで逃げることないやんけ! ワイだって好きで虫食ってる訳ちゃうんやで!」

『ナビゲーター:「知らんがな。行動がキモいのは事実や」』


 ぐうの音も出ない正論やめえや。

 このクソAI、ほんまムカつく。


 だが、ここでへこたれるワイではない。


「……いや待てよ? あんな奇抜なファッションのやつ、逆にヒロイン枠から外れてくれて助かったんちゃう?」

『ナビゲーター:「言うほどお前に選ぶ権利あるんか?」』

「うるさい! ワイの理想は清楚系金髪エルフや!」


 負け惜しみを言いながら、ワイは立ち上がった。

 とはいえ、心のどこかではまだもやもやが残っとったんや。


 ――あの女、絶対ワイの事悪口いうつもりやろ


 もしかして、ワイのことを“危険な野人”とか思ってるんやろか。

 それとも、今後ストーリーの重要人物として再登場するんやろか。

 ワイ的にはもう登場してほしくないんやが。


 考えすぎて頭が痛くなったワイは、結局スキル『安価は絶対』を発動したんや。

 やっぱり安価は絶対やで。

 ろくなことにならないと分かっていても、奇跡の安価を期待してワイはスキルを発動する。


【緊急】さっき森で出会った女に叫ばれて逃げられたんやけど、どうしたらええと思う? 助けてクレメンス


 安価>>5


 ワイの見ている画面を見ていると、瞬く間にレスがついていく。


 1:名無しより愛をこめて:追え

 2:名無しより愛をこめて:放置でええやろ

 3:名無しより愛をこめて:虫もっと食え

 4:名無しより愛をこめて:泣け


「いや選択肢ひどすぎやろ!? どれもワイに優しくないんやけど!?」


 次の瞬間、レスが確定する。


 5:名無しより愛をこめて:追いかけろ


「は?」


 追いかけてどうするんや?

 追いかけてどうなるんや?

 あんなのがヒロインやったらワイは普通に嫌やで?


 ワイだって選ぶ権利があるンゴ!

 可愛い金髪のエルフがええんや!

 あんな訳の分からん女は嫌ンゴ!


『ナビゲーター:「安価は絶対。行くしかないで」』

「いやいやいや、ワイ追いかけたら余計怖がられるやろ!? 追いかけた後どうしたらええねん!? 下手したらタイーホされるんちゃうの!?」

『ナビゲーター:「なら、追いかけた後の行動を安価で決めろや。何のための安価やねん」』


 安価したらろくでもないことになる事くらい分かっていたンゴ。

 でも、他に最適解はワイには思いつかないんや。


 ワイは頭を抱えた。

 安価がワイの運命を握っとる。

 とにかく、追いかける事からは逃げられへん。


「……行くンゴ」

『ナビゲーター:「早く行けよカスニート。イッチの体力じゃ追い付けへんで」』


 震える脚で、ワイは女の逃げた方向へと走ったんや。

 正直、虫を食ったばっかの吐き気もあって走れる状況やなかったけど、女を見失った瞬間にワイは爆死する。


 この世界……理不尽すぎやろ……!

 ワイの異世界生活、これからどうなってしまうんや!?


 これ、いつまで続くんや!?




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