【悲報】ワイ、次から次へと絶体絶命になる(不死やけど)
ワイは大混乱しながらあわあわしとった。
なんでこんな次から次へとイベントが起こるんや。
魔王城でアークたそを待っててスローライフしとった頃が嘘のようやった。
制作者さんイベント詰め込み過ぎやで!
休息タイムも必要や!
ゲームバランスが滅茶苦茶になっとる!
「早くしてクレメンス! 奴ら、もうそこまで来とるんや!!」
ワイは恐怖で絶叫しながら、右手に魔力を練り続けたんや。
ワイはクソイケメンの調整頼みやった。
滅茶苦茶に空間転移魔法を発動させたらクソイケメンと唯一の移動手段のドラゴンがバラバラになってしまうンゴ。
でもワイにはそれをどうにもできんかった。
「分かっている! 今やっている! だが、君の構築した魔法式がデタラメすぎて……っ君は、一体何をどうすればこんな基礎も何も無視したメチャクチャな発動ができるんだ!?」
クソイケメンがワイの腕を掴み、必死にその指先から微細な魔力を流し込んで魔法の構成を書き換えようとしとる。
でも、クソイケメンは顔を真っ青にして困惑しとった。
「知らんわ! ワイは魔法なんて勉強したことないんや! アークたそがしてるの見て、イメージしただけや! フィーリングや、フィーリング!!」
「ふぃーりんぐとはなんだ!? 何かは分からないがそんな曖昧な状態で空間転移を!? 宇宙どころか、次元の狭間に消えていないのが奇跡だ……!」
ヒエッ……
ワイってそんな無茶苦茶なことしてたんか……?
確かにどこなのか分からへん場所に転移したりしてたけど、あれが次元の狭間だったりしたんか……?
ワイは色んな恐怖でもう完全に硬直しとった。
そんな中、やっとクソイケメンはGOを出したんや。
「よし、魔法式の書き換えを強制的に完了させた! 発動しろ!!」
ほんまにわからへんかった。
これでええんやろか。
このクソイケメンを信じてええんやろか。
でも他に方法はないンゴ。
ワイは「ええいままよ!!」と全魔力を解き放ったんや。
そしたら、視界がぐにゃ~って歪んだ。
真っ暗な「地獄」の景色が、一瞬でパッと変わった。
あ、出られた……!?
そう思ったのも束の間……
次の瞬間、めっちゃ強風と、ゴォオオオオオオ!!! って音。
と、内臓がひっくり返るような感覚。
「う、うわあああああああああ!!!?」
出られた。
確かに「地獄」からは出られたんや。
でも、ワイらの足元には地面なんてどこにもなかったンゴ。
そこは、雲より高い上空やった。
ワイとクソイケメン、そしてドラゴンも突然の事で対応でけへんかったのか、重力に従って真っ逆さまに落下しとったんや!!
「な、なんでこんなところに転移するんや!? 座標指定してくれたんちゃうんか!!」
ワイは怖くて魔王城から飛び降りる事だけはせんかった。
なのに、今まさにそんな状態になってるんや。
こんなのいくら不死やからって叩きつけられたらどうなってしまうんや!!?
「私たちの、身体が! バラバラにならないように、安全性を最優先したんだ! その分……転移先の、詳細な座標が狂ってしまったようだ!!」
確かにクソイケメンも生きとるし、ドラゴンも生きとる。
でもこんなの結局死ぬやんけ!!(不死やけど!)
めっちゃ怖いンゴォオオオオオ!!!
「冷静に言っとる場合ちゃうやろ!! このままやと、バラバラになる前に地面と衝突して『ミンチ一丁あがり』やで!!」
いくらなんでもこの高さから叩きつけられる衝撃なんて想像しただけで失禁もんや。
それで死ぬことがないって事実がもっと怖いンゴ。
一瞬で死ぬならそれで諦めもつくかもしれんが、ワイは不死の身体なんやで!?
超衝撃でマントルまでめり込んだらどうなってしまうんや!!?
ワイがもう気絶しそうなその時、クソイケメンとワイの身体を巨大な「爪」がひっ掴んだンゴ。
「空を制する我がいるのを忘れていないか」
ドラゴンがワイらを掴んで翼を大きく羽ばたかせると、隕石の如く落下するのが止まったんや。
ドラゴンンンンンンンンンンン!!!
お前が主人公やでぇえええええええええ!!!
胃袋がひっくり返るような浮遊感のあと、ようやく身体が水平になったからめっちゃ安心したんや。
やっぱりドラゴンって世界最高の生き物やな!
アークたそが見込むだけあるわ!
「……死ぬかと思ったンゴ……不死やけど」
「あぁ。心臓が止まるかと思ったよ。もっとも、止まっても死ねないのだがね」
不死のギャグネタかぶり鬱陶しいわ。
なんやねんこいつ。
改めて見ると腹立ってくるわ。
「サンガツ、ドラゴン。お前がおらんと詰んどったわ」
「礼などいらん。神の加護ある者を放り出しては、我の面目が立たんからな」
「ありがとう、君のおかげでやっと長い地獄から出られた」
クソイケメンが素直にワイに礼なんかいうもんやから、ワイはむずがゆい気持ちになったんや。
ワイはクソイケメンが嫌いや。
そんなクソイケメンがワイに礼を言っとる。
なんとも言えない気持ちやった。
「別に、お前に色々アークたそのことを聞きたいから連れ出しただけや」
「神を探しに行こう」
見上げれば、そこには地獄にはなかった「本当の空」が広がっとる。
太陽の光が、やけに眩しくて目に染みたような気がするンゴ。
もう二度とあんなとこ行きたくない。
出られたはええけど、問題は山積みやった。
「……なぁ、ドラゴン。ここどこや?」
ワイは周囲を見渡した。
下に見えるのは、見渡す限りの赤茶けた荒野と、枯れ果てた森……ただ、乾いた風が吹き抜ける、死の世界が広がっとる感じやった。
ワイが魔王城に引きこもってる間に世界はこんなに変わってしまったんか?
「……わからん。我が知っている大地とは違うのかもしれないな」
「クソイケメ……じゃなくてアシェル、お前はどうや? 見覚えあるか?」
「……無茶を言わないでくれ。私はずっと、あの闇の町に閉じ込められていたんだ。外の世界がここまで荒廃しているとは知らなかった」
クソイケメンは呆然と、荒れ果てた地上を見つめとった。
「アークたそが世界を滅ぼしとるのは分かったけど……本当に、生き残ってる人間はおらんのか?」
まぁ、仮に別の人間が生きとったとしてもワイはどうにもできへんのやけど。
別に生き残ってる人間と話したい訳ちゃうし。
「とりあえず、ドラゴン。お前が言ってた『古龍』の居場所には行けるんか?」
「……あぁ。太陽の位置から大体の方角は分かる。このまま飛び続けるのは少々骨が折れるな。地上で休みながら向かおう」
ワイは、ドラゴンの硬い鱗を軽く握りしめたんや。
不老不死で最強の身体を手に入れたはずやのに、結局ワイは、この広すぎる世界で迷子になったガキみたいな気分やった。
クソイケメンを勢いで連れ出してしまったけど、これで良かったんやろうか。
アークたそはこいつのこと嫌いそうやったし、ワイと再会した時にこいつが一緒だったら絶対嫌な顔されてしまうよな?
こいつなら放り出しても逞しく生きていくやろ。
死なへん身体やし。
……って考えたけど、もうじいさんになってもまだアークたそのことばっか考えてるクソイケメンにはちょっと同情もするンゴ。
ワイ、アークたそに切り捨てられたんやろか。
人間同士なのに、そんなに簡単に切り捨てられるもんなんやろか。
まぁ……探し続けたらアークたそ見つかるやろ。
不老不死やし、気長にアークたそを探せばええ。
それに、このクソイケメンがアークたそに危害を加えようとしたらワイが止めるンゴ。
……まぁ、アークたそに危害を加えられる存在なんておらんのかもしれんけど。
【悲報】ワイ、地獄を脱出するも、自分が今どこにいるのかすら分からない「究極の迷子」になる




