このクソイケメン、ワイを論破してきてムカつくンゴ
クソイケメン(アシェル)の「私をここから出してくれ」という縋るような言葉に、ワイは唖然としたんや。
いや、唖然としたというより、引いた。
ガチで引きまくった。
「……お前、まだアークたそのストーカーしとるんか!?」
もう数十年経ってるんやろ!?
こんな状態になっても、まだストーカーしとるんか!!?
元からイカレとったけど、まだイカレとる。
こいつは一生正気に戻らないんや。
可能なら関わりたくないンゴ。
思わず叫んだワイの言葉に、アシェルは首を傾げた。
「……すとーかー? 何だ、それは」
あ、異世界にストーカーなんて言葉はないんか。
せやな、ワイが見てた異世界ものでも普通に主人公とかヒロインを追い回してるもんやし、それって異常なことやないんか……?
でも、今のこいつの執念深さはそれ以外に形容のしようがないンゴ。
「アークたそにまだつきまといたいんかって聞いとるんや! こんな地獄に落とされても、まだアークたそに執着しとるんか!?」
ワイがドン引きしながら問い詰めると、アシェルは震える声だったけど、はっきりとこう言ったんや。
「……執着ではない。私は、神の真意を聞きたいだけだ。何故世界を滅ぼそうとするのか。何故私にだけ『老い』を残したのか。……それに、神につきまとっているのは君も一緒じゃないか」
つきまとってへんし!!!
ストーカーと一緒にすんなやボケェ!!
「はぁ!? 一緒にするなや! ワイは急にいなくなったからアークたそを探しとるだけや。お前みたいに自分の欲望のために付きまとってないわ!」
必死に否定したんや。
ワイとこいつは絶対違うンゴ。
ワイはアークたそと相思相愛や。
こいつはただの敗北者で、逆恨みのストーカーや。
でも、アシェルは冷静にワイに反論してきたンゴ。
「神からしたら……君も私も、大差はないだろうよ。もし違ったのなら、神は君を1人にせず、探しに出ずとも君の元へ現れていたはずだ。違うか?」
「違うし! ちょっと用事が長引いてこられなかっただけや!」
「神の目的は分からないが、何十年も君を放置するほどの用事とはなんだ。認めなよ。君は神にとって特別じゃない……私も、特別じゃなかった。潔く認める」
「…………」
ぐうの音も出ないンゴ。
クソイケメンが認めとるのにワイが頑なに認めんかったらダサいやんけ!
くっ……レスバでワイが負けるなんて……!
ワイはそれを一番考えたくなかったんや。
アークたそに見放されたなんて考えたくない。
アークたそと一緒にいた時間はワイにとって何よりも特別やった。
嫁と一緒に冒険したんや。
異世界をやで?
異世界をヒロインと一緒に旅したんや。
夢にまで見た異世界を。
それが嘘やったなんて信じられないンゴ。
胸の奥に突き刺さったままの「トゲ」をクソイケメンが抉り出してきた。
せやな……もしワイが特別なら、あの日、一緒に連れて行ってくれたはずや。
魔王城に何年も何十年も放置して、自分は外で世界を地獄に変えたりはせんはずや。
ワイはそんなこと受け止めれんかった。
「……じゃあ、アークたそにとって、特別な人っておったんか」
絞り出すように聞いたんや。
その答えを聞くのが、怖くてたまらへん。
もし「かつての勇者が特別だった」とか「他の誰かが特別だった」なんて言われたら……――――
ワイはもうこのボロボロの服以上に心がボロボロになって、そこらへんの町民と一緒に絶叫する自信があるンゴ。
聞きたくなかったけど、クソイケメンはワイの質問に答えたんや。
「……神にとって、特別な誰かなんていなかったよ。私の知る限り、神は常にひとりで行動していたし、親しい人間など1人もいなかった」
クソイケメンの返答に、ワイは少しだけ、ほんの少しだけホッとしたんや。
でも同時に、何でこいつはそんなアークたそのプライベートに詳しいんやと、余計にキショさが募ったわ。
やっぱりガチのストーカーやんけ。
『ナビゲーター:「イッチ、安心しとる場合か。それ、イッチも『特別じゃない』って言われとるようなもんやぞ」』
「うっさいわボケ! 今は1人で行動してても、昔はワイと2人で旅してたんや! それだけで十分やろ!」
脳内でナビゲーターとレスバしとると、これまで黙って見ていたドラゴンが、低く唸るような声を出したんや。
(※ちなみにこのやりとりしとる間もずっとそこらじゅうで絶叫が聞こえとる)
「人間ではないが、最後の生き残りの龍とは友好的な関係を築いていたはずだ」
もしかして、魔王城におった龍のことか?
「魔王城におった龍か?」
「あぁ。我ら龍族を復活させる際、その導き手として一頭の古龍を傍に置いていた。神はその龍の言葉には多少耳を貸していたようだ」
アシェルがガタガタと震えながら、ドラゴンの足元に這いつくばった。
なにを震えとるんやと思ってみとったけど、クソイケメンは歓喜で震えとるようやった。
ほんまにキショイ。
アークたそがドン引きするのもうなずけるわ。
「特別な関係でなくとも……その龍なら、神の事を知っていそうだな……ドラゴンよ、その龍がどこにいるのか、お前には分かるか?」
「奴はもう、相当な老体でな。今はどこかの静かな場所で安静にしているらしい……居場所の心当たりなら、ある」
その龍は不老不死にしてもらわへんかったのか。
なんか変な感じやな。
そんなことは置いといて……
「よし! 決まりや!」
ワイはパンと手を叩いた。
クソイケメンはじいさんやしめっちゃキショいし、周りは食人行為が横行しとる地獄やし。
一刻も早く、ここをおさらばしたいンゴ!
「とりあえず、こんなキショいところ出て、その龍のところに行くンゴ! アシェル、お前も連れてったるから、アークたその情報出し尽くせよ!」
「……あぁ。感謝する……」
クソイケメンをドラゴンの背中に(無理やり)乗せようとした時や。
ふと、ワイは重大なことに気づいた。
「……待てや。ここ、入ったはいいけど、周り全部が真っ暗な境界線やったよな。さっき『出られへん』とか言ってたけど、どうやって出るんや? 普通に出られるんか?」
振り返ると、さっき入ってきたはずの場所も、今はただの濃密な闇に飲み込まれていたンゴ。
空は相変わらず見えへんし、ここがどこなのかすら分からへんなっとる。
この町がずーっと地平線まで続いてるんやないかって感じるくらいや。
『ナビゲーター:「空間が歪んどるからな。フツーに歩いても元の場所には戻れへんで。アークが『閉じ込める』ために作った領域やから、中に入った者を逃がすようにはできてへんのや」』
「……ファッ!?」
なら、入る前に言えや!
フツーに入ってまったやんけ!!
『ナビゲーター:「フツーこんなとこ入ろうと思わんやろ。何も考えてないからや、アホすぎて草」』
「うっさいわボケ!!」
フツーならお前は助言するアイテムみたいなもんやのに、なんで何にも教えてくれないねん!!?
ほんまコイツ呪いのアイテムやわ!!
「お、おいドラゴン! お前飛べるんやから、上から行けるやろ!?」
「そう簡単にはいかないようだ。一定の高度以上は不可視の壁に阻まれる。この闇は、町を包む球体のような結界だな」
ならお前も簡単にこんなところ入るなや!!
意味わからへん!!
全部意味わからへん!
ワイの頭じゃ把握しきれないンゴ!!
ワイは真っ青になったんや。
不老不死で死なへんけど、アシェルみたいなストーカーイカレじいさんと、発狂した町民たちに囲まれて、ワイは一生この闇の中で食い合いをするんか……?
「そんなの嫌すぎるンゴぉおおお!!! 出してや! 誰か出してクレメンス!!!」
ワイの絶叫が、地獄の闇の中に虚しく響き渡ったんや……
【悲報】ワイ、せっかくお外に出られたのに、即行で「もっとヤバい隔離施設」に閉じ込められる。




