【屈辱】不老不死のワイ、エシカルな理由で古着(遺品)をチョイスする
「……なぁ、ドラゴン。さっきから言おうと思ってたんやけどな」
ワイはドラゴンの背中の、ゴツゴツした鱗に必死にしがみつきながら叫ぶように言ったんや。
結構早い速度で飛んでてゴォオオオオオって音にかき消されて普通の声量じゃ届かんかったからや。
超絶イケメンになり、細マッチョな肉体を手に入れたワイ。
でも、今のワイには決定的に足りないものがあったンゴ。
服や。
ドラゴンの攻撃で服だけなくなった。
ワイの身体は完全に無傷なんやが、服は炭になったンゴ。
「ワイ、素っ裸なんやけど!」
「だからなんだ」
ワイが素っ裸であることなんて、ドラゴンは全く気にしとらんかった。
いや、お前のせいやんけ。
ちょっとは反省しろや。
「隠すべき場所がフルオープンなんやけど!?」
今のワイは、文字通りの「生まれたままの姿」や。
風呂にもろくに入らんワイがこんな青空の下で素っ裸なの、めっちゃ恥ずかしいんやけど!?
てか、素っ裸で外いるのって犯罪やないんか!!?
「服がほしいんや! どこか、百貨店とかしま〇らとかないんか!?」
異世界にしま〇らがあるわけないやろうけど、ワイは久々に話す相手やからちょっとボケを入れてみたンゴ。
ドラゴンの重低音な声が、風を切る音に混じって返ってくる。
「……人間の服の場所など知らん。服を着ていないことなど誰も気にせぬぞ」
アホかぁああああああああ!!!
アカン、ドラゴンとワイの感覚が違い過ぎて話にならん。
そういえばドラゴンって服着てないよな。
服着てるドラゴンとかかっこ悪いわ。
「ワイが気にするんや!! 人間は普通、服を着るもんなんや! 素っ裸で空飛んでるドラゴンには分からんかもしれんけど、これは尊厳の問題なんやで!」
ワイが背中の上でバタバタと暴れて抗議すると、ドラゴンは面倒そうに息を吐いたンゴ。
「……チッ、やかましい人間だ。神の加護を受けていなければ、そのまま振り落としてくれるものを……分かった、一旦降りる。その辺りで勝手に探すがよい」
ドラゴンが降下したのは、かつて村だったと思われる場所の成れの果てやった。 家々は崩れ、石壁には蔦が絡まり、人の気配は微塵もない。
こんなところに服屋とかあるんか?
ワイは期待して周囲を見渡したけど、あるのは風化した瓦礫ばかりやった。
そんな中、ドラゴンが鋭い爪で地面の一部を指し示したンゴ。
「あそこに『服』があるではないか。それを着ればよかろう」
ドラゴンが指した先を見て、ワイは硬直した。
ファッ……!!?
そこにあったのは、ボロボロになった布を纏った……――――
白骨化した死体やった。
「し、死体やんけ。しかもガチの骸骨」
「そうだ。死体の服など、持ち主はもう使わぬ。我に人間の服を調達する術はない。嫌ならそのままでいろ」
そうだけど! そうじゃないンゴ!!
せめて他の何かがあるやろ!!?
なんでやねん!?
倫理観どうなっとるんや!!
『ナビゲーター:「草。 イッチ、世界の理から外れて不老不死になった存在が、今更そんな小さい倫理観に囚われてるのほんま草生えるわ」』
「やかましいわ! ワイは心までバケモンになったわけちゃうんや! プライドがあるんや!」
『ナビゲーター:「嫌ならそのままアークのところへ行けばええやんけ。神様もその素っ裸にはビックリやで」』
アークたその前に素っ裸で現れる……――――
それだけは、絶対に嫌や。
久々に会うアークたそにこんな姿は見せたくないンゴ。
アークたその前で裸になるにしても、全然こんなのエッッッッッな感じじゃないやんけ!
ワイは苦渋の決断を下した。
「……分かった。着ればええんやろ、着れば!!」
ワイは涙目になりながら、骨から服(らしき布切れ)を回収したンゴ。
布はボロボロで、何より……めちゃくちゃ臭い。
カビとか埃とか、腐敗臭が混じったようなめっちゃ酷い臭いやった。
清潔じゃない状態の服ってこんな臭いんか。
死体が着てた服やし当然っちゃそうなんやろうけど。
こんな臭い服で行ったらアークたそに嫌われるんやないかな……
『ナビゲーター:「今までずっと臭かったで。今は人体の代謝がないから無臭やけど」』
「ファッ……!!?」
そんなはずないンゴ。
アークたそに綺麗にされる魔法かけてもらって綺麗になっとったし!!
服(というかボロ布)を渋々なんとか身に着けたワイは、再びドラゴンの背に乗ったんや。
相変わらず乗り心地悪いンゴ。
移動中、ワイは気になっていたことをドラゴンに尋ねた。
「なぁ、気になってたんやけど。人間って、最近はそんなに珍しいんか?」
「……あぁ。数十年ほど前から、ほぼ見なくなったな。かつてはこの大地を我が物顔で歩いていたようだが、今や生き残りは隔離された場所で細々と生きている程度らしい」
……数十年!?
ワイは絶句した。
魔王城に引きこもっていた体感時間は、長く見積もってもせいぜい数年程度や。
なのに、外の世界では「数十年」の月日が流れていた……?
どうなってるんや?
「……どういうことや……?」
アークたそが「神」として覚醒したことで、人間の時代が終わったんか……?
だとしたら、アークたそは今何をしてるんやろうか。
ワイの頭の中は、またしても混乱でいっぱいになったンゴ。
でも、考える時間はたっぷりあったはずや。
今のワイは、疲れることも、眠ることもないし。
でも、ワイはアークたそが迎えに来てくれるかもってずっとおもっとっただけや。
なーんにも考えてなかった。
しばらくして、太陽が沈み始めたんや。
ドラゴンが「少し疲れた、地上で休む」と言い出し、ワイらは森の開けた場所に降り立ったんや。
ここまで人間は誰もみてへん。
ほんまに人間ってそんなにいなくなったんか……?
「……我は眠る。貴様も勝手にしろ」
ドラゴンはそう言うなり、丸まってすぐに寝息を出し始めた。
……不便や。
不老不死で眠る必要のないワイにとって、他人の「睡眠時間」は苦痛でしかない。
ただの待ち時間や。
数時間が、数日のように長く感じるンゴ。
東にある、『夜が明けない町』……
そこに行けば、アークたそがいるんかな。
でもそれは結構前の話みたいやから、そこにはおらんのかな。
「ワイが魔王城でダラダラしてる間に、アークたそは何をしてたんや……世界を壊したんか??」
最強の身体を手に入れたけど、結局ワイはアークたそに拾われた「無力なニート」のままやった。
中身はなーんも変わってへん。
魔法の技術も全然や。
「待っててや、アークたそ。世界がどうなっていようと、ワイは絶対に見つけ出すんや……」
【悲報】ワイ、何も分からず途方に暮れる。ワイの嫁、どこに行ったんや……?




