ワイ、暇すぎて空間転移したら宇宙に放り出されたンゴwww
魔王城に(ほぼ)閉じ込められてから、どれくらいの月日が流れたんやろうか。
囚人とかが牢屋の中で日にち数えたりするやろ?
ワイはそんな面倒なことせえへんかった。
だから何日経ったかまったくわからへん。
普通の人間やったら発狂しとるレベルの孤独やけど、ワイは最強のニートや。
お外に出られないなんてことは、ワイの人生において何の苦にもならへん。
「……まぁ、そのうち誰か来るやろ」
最初はそんな軽い気持ちやった。
曲りなりにも魔王になった(らしい)んやから、順当にいけば勇者パーティが乗り込んでくるとか、白聖盟の残党が空から攻めてくるとか、そういう「イベント」をダラダラしながら待っとったんや。
でも……――――
一か月が過ぎ、半年が過ぎ、1年が過ぎた……ような気がした。
雲の上やから天気も変わらんし、季節もさっぱりわからん。
時間の感覚が全くないンゴ。
窓から見える雲海は相変わらず綺麗やけど、もう見飽きた。
誰も、この城にくる気配がまったくないんや。
「……暇や。暇すぎて死にそう(死なへんけど)」
気づけば、数年という時間が溶けて消えとった気がする。
正確にはどのくらい経ったか全くわからんのや。
ナビゲーターと話しとったのも最初だけで、途中からナビゲーターはなんも言ってこなくなった。
壊れたんかな?
と思って外そうと思ったんやが、全然外れんかった。
ワイの元のデブボディにがっちり食い込んでたのが、細マッチョになっても取れる気配が全くないんや。
まぁ、別に邪魔になるもんでもないしと思ってつけっぱなしにしとった。
話し相手もいないとほんまに自分がなんなのかすら分からなくなった。
ワイはなんでここにいるんやっけ?
不老不死ってことはこれが永遠に続くんか?
アークたそはこのままずっと帰ってこないんか?
フラッと帰ってくる気がずっとしてたけど、流石にもうこないやろうと薄々感づいたんや。
流石のワイも、アークたそに会いたい気持ちが限界突破した。
***
探しに出よう。
なんとか出られる方法を探すんや。
出ることは完全に諦めとったけど、よく考えたら崖から飛び降りる以外にも方法はあるやろ。
「せや、アークたそがしとったみたいに、空間転移魔法を使えばここから出られるんちゃうか?」
ふと思いついたンゴ。
魔法の理論なんてさっぱり分からんけど、今のワイにはアークたそから貰った無限の魔力がある。
格ゲーのコマンド入力みたいな感覚で、なんとなく「ここじゃないどこか」をイメージして手を突き出したんや。
「ええいままよ! テレポート!!!!!」
ズガァン!!!
と目の前が真っ白になった。
成功や!
ついにこの退屈な城から脱出――――……
「……!?!?(声が出ない)」
次の瞬間、ワイの目に飛び込んできたのは一面の銀世界……じゃなくて、一面の銀河やった。
真っ暗な闇の中に、キラキラ光る星みたいなのが沢山ある。
そして下には、青い惑星があったんや。
ワイが自分がどうなったんか分からずに大混乱しとると、久々にナビゲーターが喋ったンゴ。
『ナビゲーター:「イッチ、位置座標の指定もせんと発動させるから、とんでもないところに転移したな。ここ、宇宙やぞ」』
宇宙!!?!?
「(ア、アババババババ!!!)」
『ナビゲーター:「久々に行動起こしたと思ったら、ほんまにアホやなイッチは」』
ナビゲーターの声は耳から聞こえとると思ったけど、宇宙は空気がないから声なんて聞こえないはずや。
つまり、ナビゲーターの声は脳内に直接響いとることになる。
空気がなくて息ができへんかったけど、不死身のワイには呼吸すら必要なかったんや。
宇宙放射線とかいうヤバそうなもんも浴びとる気がするけど、ワイは無傷や。
そんなことよりこの空間がめちゃくちゃ怖い。
地に足がついてない状態がこんなに怖いものやって知らんかったわ。
『ナビゲーター:「地に足がついてないニートがそう思ってるの草」』
久々に煽られた気がしたンゴ。
正直、こんな憎たらしいナビゲーターでもいるのといないのじゃ全然違うんや。
話し相手がいるのは嬉しいもんやで。
でも、それを喜んでる状況じゃないンゴ。
「(戻れ! 城に戻れ!!)」
パニック状態で魔法を連発したんや。
不老不死なのをいいことに、デタラメな魔力を込めて空間を切り裂きまくった。
ワイは目まぐるしく場所を何度も転移したみたいやった。
気づけば、ワイはどこかの草原にひっくり返っとった。
なんとか地球(っぽい惑星)には戻ってこれたみたいやけど、そこは魔王城とは全く違う場所やった。
「……死ぬかと思ったンゴ……死なへんけど」
『ナビゲーター:「不死身ジョーク面白くないで」』
「まだ不死身の感覚があんまりないわ」
『ナビゲーター:「長い時間過ごしてまだ実感湧かないとか鈍感すぎるで」』
とりあえず、立ち上がって辺りを見回したワイはあることに気づいた。
生命の気配がなさすぎる気がするンゴ。
あちこちに転移して分かったんや。
町がない。
道がない。
なんか文明的なものが全部なくなってるンゴ。
かつてワイが旅したあの世界にあった「人間」や「亜人」の文明が、どこを探しても見当たらへんのや。
ワイが変なところに転移しまくっただけなんか?
それともここはワイが生きてた惑星とは違う惑星なんやろか……
唯一見つけた生き物は虫以外に、空を飛んでいる巨大なドラゴンの姿だけやった。
「……どういうことや? 絶滅したって言ってたドラゴンが飛んでるんやが……」
数年の間に世界がリセットされたんか?
情報のなさに絶望しかけたワイの前に、一頭の巨大なドラゴンが舞い降りてきた。
ファッ!? なんやねん!!?
「グルルルル……人間か。珍しいな、まだ生き残りがいたとは」
人間が珍しい……?
ワイが考えとると、そんな間もなくドラゴンはワイを見るなり、容赦なく魔法をぶっ放してきたんや。
以前のワイなら一瞬で消し炭やったけど、今のワイは不死身の存在。
ゴォォォォ!
という炎に包まれてもワイは無傷で、むしろ「ちょっと温かいな」くらいやった。
でもワイの服は全部燃えてなくなってもうた。
全裸や。
ワイは羞恥心で自分の股間を両手で隠した。
「ファッ!!? 何するんや!? 服なくなってもうたやんけ!!」
「……何ッ!? 我が炎を浴びて無傷だと!?」
服は無傷で済まなかったけどなぁ!!!
「このボケ! 消し炭にされたいんか!!?」
不老不死という最強のバックボーンがあるから、ワイは強気に啖呵を切ったんや。
ドラゴンはその圧倒的なワイのオーラと、ダメージを一切受けない姿を見て、震えながら頭を下げたンゴ。
「……失礼した。その身に宿る気配……神の加護がある人間だったか」
「分かればええんや。それより、アークたそ……いや、美しい神様を知らんか? 探しとるんや」
多分、その“神”ってアークたそのことやろ?
それをワイは探しとるんや。
「……神の居場所までは分からぬ。だが、数年前、この地から遥か東にある『夜が明けない国』に向かうのを見たとの噂がある」
なんかわからんけど、手がかりがまったくないんやからそれを手掛かりに探すしかなさそうや。
「東の国か……ワイ、アークたそに会いたいんや。1人で行くのは大変やから、協力してクレメンス」
ワイがそう頼むと、ドラゴンは少し困ったような顔をしたが、最終的には頷いた。 神の加護を受けた人間を無視するのは、マズいと思ったんやろう。
「よかろう」
ワイはでっかいドラゴンの背中に頑張って乗った。
ドラゴンに乗るとか最強の移動手段やで。
アニメとかだと結構快適そうにドラゴンに乗ってるようやったけど、ドラゴンの背中なんて掴まるところもないし、鱗が固くて座り心地悪いし、全然慣れへんかったわ。
「待っててや、アークたそ……! ワイが会いに行くで!」
【爆走】ドラゴンに乗って東の国へ! 最強のイケメン魔王ワイ、ついにお外を満喫するンゴ!




