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【悲報】ニート ワイ、異世界でチートなし ~しかも1日12時間以上屋内にいたら爆発する呪いかかってるンゴ~  作者: 毒の徒華


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ワイ、ついに勝ち確定する




 ――次の魔王になるのは真太郎だよ


 アークたそのその一言が、ワイの頭の中で何回も反響しとった。

 意味が分からへん。

 ほんまに、何一つ分からへん。


 ワイの脳みそは完全にオーバーヒートしとった。

 巨大なドラゴンがアークたそを「主」と呼んでて、魔王を倒しに来たはずが、ワイが次の魔王になるって言われとる。


 ほんまにワイの理解が及ばないことの連続や。


「……ちょ、ちょっと待ってクレメンス……」


 声を出したつもりやったけど、声が震えすぎてまともな声にならへんかった。


 魔王?

 ワイが?

 このワイが?


 ついさっきまで、ドラゴン見てビビり散らかして、足すくませとった最強ニートやぞ?


 勇者ですらない。

 英雄でもない。

 ましてや魔王って、なんやねん。


 頭の中がぐちゃぐちゃになって、思考が完全に停止しとったワイに、アークたそはいつも通り淡々とした声で続けた。


「……真太郎に、ひとつ嘘をついてたことがある」


 逆に驚いたンゴ。

 謎が多いとは思っとったアークたそは、たったひとつしかワイに嘘をついてなかったんかって。

 もう全部嘘なんじゃないかと思ってたんや。


「今まで壊してきた祠、あれは魔王の力を増長させる祠じゃない。神と呼ばれるものの力を封じるための祠だったんだ」


「……ファッ……?」


 ワイは間抜けな声を出すしかなかったンゴ。

 いや、変な声出るやろ。

 出ない方がおかしい。


 で……祠は魔王を弱体化させるためのもんちゃうかったんか?


 もうワイの頭の中には、新しい情報を処理する余地なんて一切なかった。

 脳みそが「これ以上無理です」って白旗上げとる感じや。

 もうワイの頭では処理しきれん。

 何を言われてもこれ以上はキャパオーバーやで。


「それで、その“神”って呼ばれてるのが……私」


 ……ファッ……?


 一瞬、言葉の意味を理解できんかった。

 いや、理解しようとしたけど、脳が拒否したんや。


 アークたそが、神?

 祠に力を封じられてた存在?

 世界をどうこうできる存在ってことか?


 何を言ってるのか、ほんまに全く分からへんかった。

 分からなさすぎて現実味がなかったンゴ。

 もしかして、ワイは長い夢でも見とるんか?

 夢オチってほんまに存在するんか?


「……えっと……」


 口を開いたけど、続く言葉が出てこん。


 そんなワイを見て、アークたそは少しだけ――――ほんの一瞬だけ、ワイを観察するみたいな目をしたんや。


「真太郎は力に憧れてるよね。綺麗な見た目にも」


 胸の奥をグサッとナイフで刺された気がした。

 いや、刺されたことないから分からへんけど。


 でも、そらそうや。

 ワイは、チビで、デブで、ハゲで、不細工で、ニートで……何も持ってへんかった。

 唯一持ってるのはレスバ力くらいやった。

 この世界に来てからも、力のある奴らに踏みにじられてきたンゴ。


「それ、全部叶えてあげるよ」


 ワイは返事できんかった。

 理解が出来へんかったからな。


 次の瞬間、何が何だか分からんまま、ワイはアークたそに魔法をかけられたんや。


 ゾワッ……


 身体の奥から、何かが噴き出す感覚がしたんや。

 血液が沸騰するみたいな感じ。

 でも痛くない。

 むしろ、気持ちええ感じがした。


「……な、なんやこれ……」


 力が、溢れてくるってこんな感じなんやろうか。

 全身に何かがみなぎる感じがして、それから今まで重りを付けられてた身体が、スッ……と軽くなった。


 違和感を覚えて自分の腕を見た瞬間、ワイは言葉が出なかったンゴ。


 細マッチョや。

 ワイの身体が細マッチョになっとる。


 無駄な脂肪が全部消えて、引き締まった身体になっとる。

 下を向いたときにつま先が見えることに感動したで。

 いつも出てる腹で自分のつま先が見える事なんてなかったからな。


 どうなったのかあたふたしとると、アークたそが空中にどういう原理か分からんが鏡を作ってくれた。


 恐る恐るそれを覗き込むと……そこに映っとったのは――――……


「……イ、イケメンや……!」


 幻術やない。

 本当に、ワイ自身がイケメンになっとった。

 自分の身体とか顔とか髪とか触って感触を確かめたけど、それは確かにワイやった。


 ほんまにワイはイケメンになったんや。

 これぞ異世界転生って感じのイケメンになったんや!


 うひょおおおおお!!


 それだけでワイはテンションマックスになってたのに、更にアークたそは言葉を続けた。


「力も与えた。魔法使ってみなよ」

「え……? いや、ワイ魔法使えないやで……?」


 そう言ったワイに、アークたそは当たり前みたいに言った。


「それは前の真太郎でしょ。今なら使えるよ。やってみて」


 やってみてって言われても、魔法の使い方なんて分からんで。


 でも、言われるがまま、ワイは前に手を突き出した。

 正直、半信半疑やった。

 力はみなぎってきてる気がするけど、突然魔法使えるようになったりするんか……?


 アニメとかの知識でしかないけど、ワイは手に力を込めて技名を言ってみることにした。

 詠唱とかの中身は知らんから、もうやけくそやったで。

 ええいままよ!!


「……ファ、ファイアーボール!!!」


 ワイがそう叫んだ瞬間、ワイの手のひらから轟音と共に、灼熱の炎が放たれたんや。

 炎は一直線に天井へ向かって伸び、魔王城の天井そのものを蒸発させた。


「!!?!?」


 口が開いたまま、塞がらへん。

 唖然、という言葉がぴったりやった。

 何も魔法が使えなかったワイが、安価は絶対とかいうクソスキルしか持ってなかったワイが、ファイアボールを使えたんや!

 しかもチート級破壊力!


 ワイはそのまま昇天してしまうかと思う程舞い上がったンゴ。


「希望するなら、不老不死にもしてあげるよ」


 その言葉を聞いた瞬間、ワイの頭は完全にお花畑になった。


 チート級魔法、チート級イケメン、そしてチートステータス。

 まさに完全無欠の存在になれるやんけ。


「た、頼むやで!!」


 考える間もなかった。

 即答や。


『ナビゲーター:「あーあ……」』


 ナビゲーターのそんな声が聞こえた気がしたけど、ワイは気にせんかった。


 アークたそが再び魔法をかけると、身体がじんわり温かくなって、すぐに何も感じなくなった。


「もう真太郎は、死なない体になったよ」

「うおおおおお!!」


 ワイはテンション爆上がりで、思わずガッツポーズを取っとった。


 最強や!

 イケメン!

 魔法使える!

 不老不死!


 最高やんけ!!

 これ以上何を望むんや!!


 しばらくその場で1人、興奮し続けとった。

 ほんまに、浮かれきっとったんや。


 ……でも……


 ふと、我に返ったときのこと。


「あれ……?」


 そこに、さっきまでいたアークたそも、ドラゴンもおらんかった。


「……アークたそ?」


 呼んでみたけど、返事はなかった。

 広い魔王城に、ワイ1人の声だけが虚しく響いた。


 どこを見渡しても、誰もおらん。

 さっきまで確かに、そこにおったはずやのに。


 ワイは何が何だか分からないまま、魔王城にぽつんと1人になった。


『ナビゲーター:「とんでもない悪手をとったな、イッチ」』

「……なんでや?」


 チート魔法手に入れて、イケメンになって、不老不死やぞ?

 最高やんけ……?


 でも、アークたそはどこに行ったンゴ?


 その答えが分からないまま、ワイはしばらくの間、魔王城の中を彷徨い続けて、アークたその姿を探し続けた。


 でも……どんなに探しても、呼びかけてもアークたそは見つからなかったんや。


 え……どういうことなんや?


【???】もしかして、このままワイは魔王城に居座って魔王になるってことなんか……?




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