ワイはアークたそを信じる! 絶対に! 裏切らない!
イカれたじいさんの相手なんてどうしたええんや。
まさか、このじいさんを殺さないといかんのか?
いやいや、殺すなんて流石にワイはできへんで。
殺人なんてフツーはできへんやろ。
ワイは最強ニートやけど殺人なんて無理や。
そういう最強ちゃうねん。
そんなことばっかり頭の中でぐるぐる回ったんや。
それでもワイは息を整えて、目の前の得体の知れないじいさんに改めて警戒を向けたンゴ。
「……ワイは急いでるんや。話なら早めにしてクレメンス……」
じいさんは白い髭を揺らしながら、冷ややかな目でワイを見とった。
「お前は知るべきだ。この祠で朽ちた者たちの末路を」
じいさんは周りの骨の山を指した。
もしかしてワイもこの骨の仲間入りする可能性もあるんか……でも、話を聞くだけなら骨になることはないよな……?
「老いや死、そして無力さに耐えかね、己の魂を捧げれば、神の導きによって永遠の命を得られると信じた愚かな者たちの成れの果てだ」
やっぱり、宗教はさっぱりわからん。
永遠の命なんてあるわけないやろが。
と、思ったときにアークたそが「地獄」って言ってたことを思い出したんや。
不老不死の人たちがそこにおるって言ってたな……この世界では不老不死は実現していることなんか。
「アルカディアスは一部では神と言われているが、そうじゃない」
ん……? アルカディアスって誰や?
そもそもそんな知らん人の話をされても困るンゴ。
「誰やそれ」
「不老不死を実現した人間だ」
「人間なら神ちゃうやんけ」
「神は抽象的な呼称であり、奇跡を与える者は神と呼ばれるのだ」
もっと簡単に言ってクレメンス。
ワイの可愛い脳みそでもわかるように言ってくれないと、会話が成立しないンゴ。
ワイはとりあえずじいさんの言葉の続きを黙って聞いとった。
「本当に恐ろしいものは、種族関係なく取り入る。そして懐柔する」
ていうか、神がどうのこうのって魔王と関係あるんか?
神がいるなら魔王なんてカスみたいなもんやんけ。
そのアルカディアスって今どこにおるんや。
「神がほんまにおるなら、変な宗教がたくさんあるのは変やろ」
「アルカディアスを誰しもが崇めている訳じゃない。あれは恐怖の対象だ。恐怖は感覚を麻痺させる。そしてそれを盲目的に信仰して、考えることを放棄する」
ぽかーん……( ゜д゜)
アカン、ほんまに何言ってるか分からへん。
そういう哲学的な話されても全く分からん。
頭にファイアウォールがあって情報を全部遮断してるみたいや。
「あれは堕落させることを最も得意とする。善の仮面を被り、無力な者の心の隙間に巧みに入り込み、何もかもを支配する。自ら進んで奴隷になることを望むように仕向ける」
「……すまん、全く話が入ってこないンゴ」
ワイは素直にそう言ったけど、じいさんは全然ワイの言葉なんて聞いてなかったんや。
ワイをガン無視して話を進めとる。
「何人もの人間が、ここで偶像の神と同化しようとして、この祠で朽ちていった。知識を得ても、真実を悟っても、結局はその虚無に耐えられず、狂って崩壊した。何の意味もない愚行だ」
じいさんは静かに目を閉じた。
そのまま昇天するんかと思う程静かに目を閉じとった。
「お前は何をしにここへ来た? 真実を知るためか、それとも愚かに導かれて来たのか」
ワイはこの小難しい話を一刻も早く終わらせたい一心やった。
「ワイは魔王討伐が目的や。それ以上でも以下でもないンゴ。神がどうとか言われてもさっぱりわからへん」
じいさんはそんなワイを見て目を細めて溜め息をついたンゴ。
「完全に騙されてるな……悪魔の声に身をゆだねるのはそんなに快感を感じることなのか」
「アークたそは悪魔ちゃう! むしろ天使や!」
じいさんは顔をしかめた。
ワイの屁理屈は論理の外側にあるんや。
「アークとは真名ではない。以前あった災厄の名の一部を借りているだけの、全く異なる存在だろう」
「アークたそを知らんじいさんに何が分かるんや!?」
「それが災厄であることは分かる」
「そんなことない。ワイはこの世界にきてずっと酷い目に遭ってきたんや。でもアークたそはワイを地獄から救い出してくれたんやで!? 他の人間がなんて言っても、それがもし災厄でも、ワイには関係ないンゴ!」
アークたそがいなかったらワイは強制労働施設で未だに働かされてたかもしれん。
束の間の自由かも知れんが、ワイはアークたそに優しくされてる。
他の奴らがどうなっても知らん。
ワイはワイが幸せだったらなんでもええんや。
「……もうええわ。じいさんの話はもうええねん」
ワイは頭を掻いて、開き直ったんや。
「ワイはアークたそがどんな存在でも、ずっとついていくんや。悪魔でも、神でも、なんでもええねん!」
じいさんは目をカッと開けて、ワイを凝視した。
その目には、知識を探求する者の「論理」が宿っている感じや。
「それは……知恵を放棄し、愚かな盲信に身を委ねるということか。お前は真実を知る道を捨てるのか」
アークたそは信じてくれって言ってたんや。
それ以上何もないやろ。
真実なんて知りたくもないわ!
「捨てるんや! 知恵とか真実とか、腹の足しになるか! ワイの腹を満たしてくれるのはアークたそや! ワイを守ってくれるのもアークたそや! ワイはアークたそに必要とされとる! それが真実や!」
ワイがアークたそを信じていることを伝えると、じいさんは黙っとった。
「じいさんはその真実を知るために、何を得て何を失ったんや!? その周りの骨はなんや!? 知恵を得た結果、じいさんはそこで永遠に骨の番をしとるだけやろ! ワイはアークたそと添い遂げるんや! 人生の敗北者はお前や!」
じいさんは、その知識の全てを使っても処理できない、純粋な「屁理屈」に遭遇したのか、フリーズしとった。
「馬鹿な! 真実に対する冒涜だ! 愚行だ!」
「愚行でええわ! ワイの人生や! 他に生きる目的もないんや! この人生をアークたそに捧げることが、ワイの唯一の目的なんや! この目的を持てたことが、お前らが一生かかっても得られない幸福や! じいさんは結局、誰にも必要とされず、誰にも愛されず、真実に縋って孤独に死ぬんやろ! ワイはそんなのごめんやで! 価値観押し付けてくるなや!」
ワイの言葉は、じいさんの論理を一瞬で崩壊させたんや。
じいさんは愕然とした表情で、震える声を絞り出した。
「……考えるのをやめたか。それもある意味では賢い選択だな」
じいさんは力なく肩を落として、大きくため息をついた。
「分かった。お前は神に身を捧げに来たわけではなさそうだ。試練は終了だ。お前の信仰は、この世のいかなる論理も上回る。先に進むがいい」
じいさんがそう言うと、その奥の壁に埋め込まれていた祠の核らしき輝く石が露呈した。
それを受け取って、ワイは思い切り地面に叩きつけたんや。
そうしたら核みたいなのが粉々に壊れた。
そうなった後は、いつもの流れで祠がまた崩れ始めたンゴ。
「じいさん、そこにいたら生き埋めになるで」
「……構わんよ。もうここから出ても行く場所もない。ここから出ていく場所のあるお前は眩しく見えるものだな」
「…………ワイはもう行くで」
「その愚かさを嘆かない未来がまっているといいな」
もう振り返らなかったンゴ。
ワイは胸を張り、外へ向かったんや。
外でアークたそが待ってるんや!
【快感】最強のレスバ力でを変なじいさん論破! これでアークたそに褒められるンゴwww




