最後の祠の周り、ヤバすぎてワロエナイ
翌朝、ワイとアークたそは静かに宿を出て、次の祠があるという町へ向かったんや。
昨日は散々な目に遭ったし、ワイは寝た気がせんかったけど……アークたそはいつも通りスッと準備してなんも疲れた様子もない。
やっぱり化け物やな……(褒め言葉)。
「空間転移の魔法で行くと目立っちゃうから、馬車で行こう」
「おかのした!」
なんか、この世界って結構利便性が高まってる感じするのに、馬車とかいう古典的な移動方法がまだ残っとるんやな。
もっとこう……車みたいなのないんか?
「馬じゃない移動方法ないんか? もっと便利なもんとか」
「あるよ。あるけど……あいにくそれは持ってない」
「馬って、ちょっと古典的すぎんか?」
「変に魔法で便利にしちゃうより、馬は風情があっていいと思うけどな」
確かに、日本では馬車に乗ったことなかったし。
ワイはデブだから乗馬とかできんし。
仮に機会があったとしても、落馬して馬に頭を踏まれて死ぬ未来しか見えないンゴ。
まぁ、これはこれでいい経験になるンゴ。
……と、最初は思ってたんやが……
馬車がでこぼこ道を進むたびにワイは揺れて、ウッと吐きそうになとった。
「酔うなら寝てれば」
とだけアークたそは言うんや。
優しい!!
ほんまにワイのことよく考えてくれとる!
こんなに優しい言葉をかけてくれるのはアークたそだけや。
『ナビゲーター:「勝手に好意変換すな」』
「いや、これは優しいんや!! 絶対そうや!!」
『ナビゲーター:「草」』
……まあ、ワイ自身、幸せやと思っとるからそれでええやんけ。
ワイは酔いながらもうとうとしてもうて、気づいたら馬車が止まってたんや。
***
「着いたよ」
アークたその声でワイは目を覚ました。
目の前に広がっとったのは、見たことないぐらいごつい町やった。
と言うか、入り口からして雰囲気が異様や。
門の周辺には白いローブの奴らがウヨウヨいて、そいつらは全員、なんか呪文のようなものを唱えたり、空見てブツブツ言うてたりする。
何があったらあぁなってしまうのか全く分からないンゴ。
「なんやここ……宗教都市か?」
「そうだね。力の信仰が強い場所だから」
アークたそは表情ひとつ変えずに言う。
ワイは正直、この時点で帰りたい気持ちがMAXやった。
変えるって言っても別にどこにもワイが帰る場所なんてないんやが。
「アークたそ、この町……ワイ、ちょっと嫌やわ……」
「真太郎は宿にいれば大丈夫。町の中一人で歩いたらたぶん死ぬけど」
「ファッ!!? こっわ!!!!!!」
『ナビゲーター:「たぶんじゃなくて確実に死ぬな」』
そんなサラッと命の危険を言うなや!!
ワイは震えながらアークたそにくっついて町に入ったんやけど、ワイらが通るたびに道ゆく人々がワイを見てひそひそ話してくる。
ワイをやで?
アークたそは注目されてへん。
「なんでワイを見とるんや……?」
「信仰が強い町ほど、弱者は奇異の目で見られるんでしょ。ステータス至上主義だしね」
まあでも、価値あるならええ……いやよくないわ。
弱い者=救うべき存在みたいな扱いで優しくされるどころか、むしろ監視されてる感じや。
ワイは野盗から“カモや”と思われたときのあの目を思い出した。
こいつら、ワイに変な布かぶせてどっか連れていきそうな気がするンゴ。
本当にこの場でワイとアークたそは無事に祠の破壊までできるんか……?
***
宿に着くまでの数分で、ワイの胃はキリキリ痛んだ。
宿はやたら豪華で、床も壁も白基調で清らか~って感じやのに逆に落ち着かん。
やっぱり屋内判定やけど、アークたそが爆死の呪いを封じてくれとるからワイは爆死せずに済むんや。
アークたそがおらんかったら毎日12時間も外におらなあかん。
それがないだけでワイの生活はかなり楽になったんや。
「ここが今日泊まる宿。明日祠に行く」
「お、おお……アークたそ、明日はもう祠に行くんか?」
「ここでのんびりしたくないしね」
わ、分かるで……ワイもここには長居したくない!!
だって、さっきからワイの背中がなんか寒いんや。誰かの視線がついてくる感じがする。
アークたそは部屋に荷物置くとすぐに窓の外を確認してた。
外には物々しい祠が確かに設置させられてたんや。
それを取り囲むように色んな宗教っぽい連中がいる。
これじゃ、全然近づけないやんけ。
「厄介だな。案の定囲まれてる」
ヒエッッ……!!?
「アークたそ囲まれとるってどういうことや!? ワイら誘拐されるんか!? 変な儀式にされるんか!? ワイまた貞操危機なんか!?」
ワイは大混乱の状態でアークたそに尋ねたンゴ。
ワイはどんな危険な思いをせなアカンのやろか。
「落ち着いて。ただ祠を監視してるだけだと思う。もう他の4つが破壊されてるってニュースになってるし、多分ここにくるだろうって思ってるんだろうね」
「こわ!!!!!」
アークたそは何も気にしてへんように見えるけど、ワイは気にしまくりや。
「でもさ……アークたそ、白聖盟は200人ぐらいおるかもしれんって言うてたやん。こんな監視されてる場所で正面から行けるんか?」
「行けるよ。むしろ裏からの方が危険。罠が多いだろうし、相手も裏に回ってくると思ってる」
ほんまアークたそ、サラッとすごいこと言うな。
ワイは素人やからよう分からんけど、アークたそはちゃんと戦略立てとるっぽい。
そしてアークたそが続けた。
「真太郎は明日、私から離れないようにして」
「おかのした!」
即答や。
どうせワイが離れたら即死やし。
フツーに脳死プレイしてアークたその恩恵を受けるンゴ!
***
アークたそが椅子に座って飴を舐め始めたタイミングで、ワイは前から気になってたことを聞いた。
「そういやアークたそ……あのクソイケメン、今はここにおるんやろか?」
ワイは聞くだけで胃が痛くなる。
ほんまに嫌や。あいつにまた会うとか悪夢や。
「いるだろうね」
「幻術魔法でワイはイケメンに見てるやろうが。それでも怖いわ」
「狂ってる人間はなにするか分からないからね」
あのクソイケメン、ワイが色々話を聞き出そうとしても全然話聞かないし、完全に詰んでる。
人間の形はしとるけど、人間的な会話ができる訳やなかった。
『ナビゲーター:「どんだけ天然のイケメン怖いねん。幻術魔法の偽物のイケメンじゃやっぱり本物のイケメンは怖いんかwww」』
「うっせぇ!」
なんやねん、イケメンなら色々良い事ばっかりやったやろ。
なんであんなに性格歪むねん。
アークたそは話を戻して話し始めた。
「白聖盟もそうだし、他の宗教徒も私たちが来ることを完全に読んでる。祠の入口を包囲してるはずだよ」
「じゃあどうするんや?」
「でも、真正面から行くのが一番安全だと思う。正面が手厚い歓迎があるだろうけど、一瞬で通れば行けそうだし」
「はえ!? 正面が!? 包囲されてんのに!?」
「真正面は警戒してる分、動きが読みやすい。裏は罠がある」
ワイには理解できひんけど、アークたそには見えてるんやろう。
ワイはゴクリと息を飲んだんや。
「正面突破……ワイらやからできるんやろな……」
「うん。真太郎が迷わなければね」
「迷わへんで! アークたそを信じるだけなんやろ?」
「そう」
そう言ってアークたそは飴を口で転がす音だけを響かせながら窓の外を見つめる。
ほんま何考えとるかわからん。
けど、ワイはこの背中が好きなんや。
***
「真太郎。今日は外に出ないこと。私は少し調べたいことがある」
「アークたそは……ひ、ひとりで大丈夫なんか?」
「大丈夫」
その言葉に理論的な根拠はない。
でもワイはアークたその言葉を信じてまう。
不思議な存在や。
「アークたそ……明日、ちゃんと付いていくからな。祠でも信じる心の試練とかあるみたいやけど、ワイはアークたそだけ信じて進むわ」
「うん。それでいい」
***
アークたそが部屋を出ていき、静かになった宿でワイはベッドに寝転がって天井を見た。
明日は白聖盟200人+クソイケメンとの対面、さらに祠の試練や。
フツーに死ぬかもしれん。
それでも――
「アークたそがおるなら大丈夫や……!」
『ナビゲーター:「アークが一番危ないって気づけよ」』
「うるさいわ!!」
ワイは布団を被って震えながらも、アークたその背中を思い出した。
あの背中についていけば、絶対なんとかなる――――そう信じとる。
【予告】
白聖盟とかの大群に囲まれて正面突破できるんかwwwww
ワイ、ついに死ぬのか!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?




