イベント起き過ぎやろ!!
「はっ……!」
ワイは気絶しとったみたいや。
意識が戻って、横になっとった身体の上半身を起こした。
頭がガンガンするわ……後頭部に岩みたいなんが直撃したのが最後の記憶やった。
横を見ると祠が完全に崩れ落ちて、石の粉塵が空に舞い上がっとった。
「いったぁぁ……後頭部痛っ……」
痛いけど触ってみると、血とかは出てなかったンゴ。
結構痛いんやが、表面がかさぶたみたいになってるみたいや。
アークたそが回復魔法かけてくれたんやろか?
「真太郎、見事だったね」
アークたその声がすぐそばから聞こえた。
アークたそはいつも通り無表情で飴舐めながらワイを覗き込んどった。
相変わらずどの角度から見ても美人やで……
「あ、アークたそ……ワイ、生きてるで……ギリギリやけど……」
「無事に祠が破壊されて、凄い。私だけじゃできなかったよ」
褒められて嬉しい反面、ワイの方は死にかけすぎて頭がぼーっとしとった。
あの崩落から生き残っただけで儲けもんやけど、よく考えると後頭部以外の身体も痛い気がするンゴ。
「アークたそ、ワイ……もう帰りたいンゴ」
「そうだね」
アークたその手がさりげなく差し出されたんや。
手、繋いでくれるんか!?
ワイはその手をおずおず握って、ふらふら立ち上がったんや。
アークたその手、ひんやりしとって冷たい。
でも、その冷たい奥に凄い熱があるような気がしたンゴ。
あれや、冷たすぎるんに触ると反射的に「熱い!」って言ってまうような、そんな感じや。
そんな感じなだけで、フツーに冷たい手の範疇ではあったんやけどな。
なんて説明したらええかわからへん。
アークたそが空間移動魔法を展開すると、すぐにワイらは宿に移動したんや。
目の前にベッドが現れたのを確認したワイは勢いよく飛び込んだ。
ふかふかや……もうここから動きたくない……
部屋につくとワイはベッドに倒れ込み、アークたそは椅子に座ったンゴ。
「真太郎、残りの祠はあと1つだよ」
唐突にそう言われて。ワイはまた上半身だけ起こしてアークたそを見た。
「……そうなんか?」
「うん。あと1つで全部終わるよ」
そうか……終わるんか。
アークたそは特に何も考えてないっていうけど、魔王がいなくなったらこの世界って良くなるんかな?
せや、絶対そうや。
魔王がいなくなったら力の絶対信仰なんてもんはなくなって、平和になるに決まっとる。
あれや、あの、核ミサイルを禁止するっていうか、そういう無茶苦茶な暴力を廃止することで平和が訪れるんや。
そうに決まっとる。
「……アークたそ」
「なに?」
「全部終わったら……ワイ、ご褒美欲しいンゴ」
アークたそは少し首を傾げた。
「なにが欲しいの?」
「え、なんやろ……」
例えばちゅーとか、エッッッッッなこととか……ぐへへ。
そういうのがあってもええんちゃうか?
でも、それを面と向かって言ったらアカン。
ここは紳士的に、紳士的に……
「ご褒美の内容は任せるけど……」
「任せるって言われても、どんなのがいいのかな」
アークたそは腕を組んでちょっと考え込んでるようやった。
でも、少し考えた後に何か閃いたような様子で――――
「うん、いいよ」
って返事してくれた。
「えっ!? ほんまに!?」
「真太郎は頑張ってるから、ちゃんとご褒美あげるよ」
ワイ、嬉しすぎて泣きそう。
何をくれるのかは分からんけど、アークたそがご褒美をくれるんや。
どんなものでも大事にしようと思ったンゴ。
よく考えたらワイ、アークたその奴隷やし何かもらえるのはかなり特別なことなんやないか?
アークたそは奴隷にも優しいンゴ!
***
次の日。
ワイは爆睡した後に目を覚ましたんや。
アークたその部屋に行くと、急にポンて小包みたいなん渡してきた。
「アークたそ……これなんや?」
「お小遣い。昨日のご褒美じゃないよ。純粋に生活用」
中を見ると、金貨が何枚も入っとった。
これが日本円でいくらなんか全く分からんけど、絶対高額や。
「マジか!? 使ってええんか!?」
「いいよ。好きなもの買ってきて。今日は息抜きでもしてきなよ」
よっしゃ!
異世界探検や!
そういえばこっちの世界に来て観光みたいなん殆どできんかった。
もともと観光とか興味ないけど、ここは日本やない。
異世界やで!
異世界を満喫するスローライフやで。
そういえばドラゴンとかおるんか?
ゴブリンとか、オークとか、そういうの定番やろ?
危なくないんか?
「そういえばさ、この世界ってドラゴンとかおるの?」
「いないよ」
「え!? おらんの!?」
え……なんか、イメージと何もかもが違うわ、この異世界。
でもドラゴンって概念は通じとるけど……どういうことや?
「ドラゴンは絶滅したからね」
「ファッ!!?」
ドラゴンって最強ちゃうんか!?
絶滅したってどういうことや!?!??
ワイがパニックになっとると、アークたそは静かに解説してくれた。
「ドラゴンってさ、昔は恐ろしいものだったらしいけど、それが逆に災いになったっていうか。多くの種族を敵に回して絶滅させられたんだよね」
「そ、そうなんか……」
「今は力の絶対信仰なんてあるけどさ、ドラゴンがいた時代はドラゴンはただの災害でしかなかったから」
「えーと……でも、そんなことしたら生態系っていうか、壊れるんとちゃうんか?」
いくら異世界の設定が雑やったとしても、あのー、あれや、食物連鎖みたいなのが壊れるんと違うんか?
知らんけど。
「真太郎は難しい事知ってるんだね。まぁ、生態系っていうかドラゴンがいなくなってから、各種族が次のトップになろうと戦争もしてたし、ろくなことにならなかったよ。今は各種族が共存してるけどさ、それは表面的なことで差別意識は根強く残ってるしね」
待ってクレメンス。
難しいことを一気に言われても分からへん。
一個一個頼むわ。
「だから力の絶対信仰は各種族の差別意識をなくすため――――」
「ちょ、ちょっとたんま。そんなに一気に喋られてもワイにはキャパオーバーやで。理解しきれん」
「そう。まぁ、つまるところドラゴンはもう存在しないってことだよ」
うーん……まぁ、なら安心でええか!
ドラゴンに襲われたら大変やからな!
『ナビゲーター:「相変わらず脳死プレイで草」』
「やかましい! ワイはお小遣いで買い物に行くんや!」
「ゆっくり買い物してくるといいよ。でも、変な物買ってこないでね」
「変な物?」
「呪物みたいな置物とか」
「流石にそんなの買わないで!?」
ワイはお金を握りしめ、ふらふらと市場へ出かけた。
ワイは意気揚々と外へ出た。
「なに買おうかな~♪ お菓子でもええし、飲み物でもええし……あ、焼き菓子ええな? 欲しいもんいっぱいや!」
『ナビゲーター:「そんなに買ったら食あたりするで」』
「せんし!」
でも、なんか市場に着いた瞬間、空気がおかしかった。
通行人がワイをめっちゃ見る。
めっちゃジロジロ見てくる。
また臭いんかな……?
でも、着替えもしたしアークたそに綺麗にしてもらう魔法かけてもらったし、臭くないはずやけど……
なんで皆、ワイを変な目で見るんや?
「ナビ、なんでなん?」
『ナビゲーター:「知らん方がええで」』
「素直に教えろや!」
ほんまに可愛くないわ。
なんで旅のお供がこんな無機質な呪われた腕輪やねん。
そこは美少女やろ。
せめて萌え萌えな口調で可愛く喋れや。
『ナビゲーター:「気w持wちw悪wいwでwすwごw主w人w様www」』
「もうええ! ワイの中の美少女象を壊すなや!」
ナビゲーターと話し(話しって呼べるんかこのレスバ)とったら、急に背後から声をかけられたンゴ。
「あなた、少し来てもらいますよ」
振り返る間もなく、そのまま背後から腕を掴まれたんや。
「え? 誰や――――」
口を布で塞がれ、
ドンッ!
腹に強烈な衝撃が走った。
あまりの衝撃と苦痛に呼吸が止まったンゴ。
「……!?」
衝撃とともに視界が揺れて、ワイは強引に連れ去られたんや。
「確保。対象を連行する」
掠れる視界で捉えたのは白いフードの男ら3人。
白聖盟の連中や。
なんで……白聖盟の奴らがワイに何の用や……
市場の人はざわついとった。
「白聖盟か……」
「あんな服のまま外に出て、おかしいと思った」
「関わらない方がいいわよ」
そんな声が飛び交う中、ワイは何も分からんまま意識が遠のいた。
ア……ークたそ……
呼ぼうとした瞬間、視界が暗転した。
***
「……い……起きろ……」
頭が割れそうな痛みで、ワイはゆっくり目を開けた。
周りは薄暗い石造りの部屋やった。
地下牢っぽい感じや……
身体が自由に動かん。
閉じ込められてる。
『ナビゲーター:「イッチ、爆死カウントあと3時間42分30秒や」』
「ファッ!? 嘘やろ!?」
ワイが気絶してる間にそんなに時間が経ったんか!?
「やっと起きたのかい」
ワイが声のする方をかろうじて見たら、そこにはいけ好かない顔のやつがおった。
白聖盟のアシェルや。
椅子に座って足を組んだまま、殺気すら感じる視線でワイを見とった。
なんやねん!?
このイケメン狂っとるんか!!?
ワイの金目当てか!?
ワイはお小遣いで買い物することすら許されんのか!?
「ワイに何の用や!? なんでこんなことするんや!!?」
「…………」
「な、なんやここ……!? なんでワイ拉致されたんや!?」
いけ好かないイケメンは静かに立ち上がり、ゆっくりとワイに歩み寄ってきた。
近づけば近づくほど、なんか変な圧がエグい。
なんや?
ワイ、このイケメンに何かしたか?
いや、ワイがこのイケメンを気に入らんことがあっても、イケメンはワイなんて全く眼中にないはずや。
イケメンはワイの前に立ち、深く息を吐いた。
「……君、彼女のなんなんだい?」
声は静かやけど、完全に怒りを必死で抑えてるトーンやった。
彼女ってなんや……?
アークたそのことか……?
「か、彼女って……アークたそのことか?」
イケメンは鋭い目をさらに細める。
「あーくたそ……? 彼女がそう名乗っているのか?」
「アークって言っとったけど……それが何やねん」
イケメンはワイの隣りの壁を拳で殴りつけた。
バゴォッ!!!!
石壁にでっかい亀裂が走ったのを見て、ワイは絶句したんや。
軽口叩いたら殺される……!
「親がまともだったらそんな名前はつけないと思うけどね」
アシェルは静かに、しかし怒りを抑えきれない声で続けた。
なんのことやかワイはさっぱりわからん。
この世界でアークって名前をつけるのは相当な非常識なことなんか?
アークってキラキラネームなんか!?
「わ、ワイはそうとしか聞いてないンゴ! そんなこと言われても知らないわ!」
「彼女のなんなんだ、君は」
ワイはアークたその騎士……!
って言いたかったけど、変なこと言ったらこのイケメンがキレそうや。
っていうかもうすでにキレ気味や。
なんでなのかさっぱりわからん。
素直に奴隷やっていうか……でも、前に手首の奴隷紋を見られたらまた切断されるかもしれん。
ど、どどど、どうしたらええんや!?
【悲報】ワイ、買い物すらまともにさせてもらえない




