まだ試練あるんか!? 絶対殺すマンやんけ!
ワイは祠の入り口に立って、深呼吸を3回した。
アークたそに右腕へ書いてもろた「レーザーの正解レーン」のメモもあるし、これで攻略できるで。
うん……いける気がするで。
いや、いける気がするだけや。
実際には全然いける気せんのやけど、それ言い出したら一生挑まれへん。
アークたその運のステータスがカンストしてても、でも運なんやから外すこともあるんちゃうか?
それともアークたそが宝くじ買ったら毎回当たるんか?
じゃあアークたそと元の世界に戻れたらワイは無双できるんか?
そんな邪念がワイの頭の中に浮かんだんや。
ワイ、元の世界に戻れるんやろか?
転生系の主人公ってあんまり戻ろうとせんけど、ワイは家でぬくぬくしてたいし、爆死する呪いなんてないマッマとパッパのいる家に戻りたいで。
でも死んだんやったら無理なんやろうか。
ネットがない世界は退屈や。
魔法が使えたらもっとこの世界でいい生活ができるんやろか?
『ナビゲーター:「どこまでも楽をすることしか考えてなくて草」』
ワイが考えとったらナビが茶々入れてきたンゴ。
ほんまこの呪われた装備鬱陶しいやで。
「マッマとパッパには製造責任を取ってもらいたいやで。ワイは生まれたくなかったし」
『ナビゲーター:「成功してない人間の言い訳乙」』
「ワイはコミュ障の社会不適合者や、しゃーないやんけ」
『ナビゲーター:「怠けてるだけや。精神的な病気を言い訳にしたいんやろうけど、それでも働いとる人間はいるんやで」』
そんなクソみたいなレスでワイに勝てる訳ないんやで!
甘いわナビゲーター!
「ふん、働いてればなんでもええんか? 働いた方が迷惑な人間もおるやんけ。それがワイや」
『ナビゲーター:「これだけ酷い目にあってもその性根は変わらんのか。呆れるわ」』
「こうなったのはワイのせいやない、社会のせいやし、マッマとパッパのせいや」
ワイは悪くない。
ワイは生まれながらに劣等種なんや。
それにうちは貧乏やった。
習い事だってしてへんかったし、子供のころはゲームとか買ってもらえなかった。
ワイが友達おらんかったのはゲームの話とかアニメの話についていけなかったからや。
ワイにカッノができんかったのはマッマもパッパも不細工だったから、ワイも不細工に生まれたからや。
ワイのせいやない。
ワイは悪くない。
ワイは被害者や。
くっそ、試練の前なのに嫌なこと考えさせよって。
やる気がそがれるやんけ。
でも、アークたそが“ワイでも、いつかアークたそみたいになれるかもしれん”って、そう言ってくれた。
その言葉が、ワイをここまで押し上げてくれたんや。
自己肯定感ないワイが頑張ろうとしてるんやろうから、大きな一歩やんけ!
「ほな……いくで、アークたそ! 待っててくれや!」
「うん、真太郎ならなんとかできるよ」
無感情っぽいけど、ほんの少しだけ優しい声やった。
それがワイの背中を押してくれたんや。
よし、頑張るで!
ワイは再び祠の中へと踏み込んだンゴ。
ワイの心のHPはフル。
まさに“やれる男”の気分やった。
***
まずは爆発タイルや。
これはもう1回突破できたし、ワイの腕にはアークたそが書いてくれたメモがある。
この試練は余裕やで。
でも、爆死したときの激痛はしっかり脳裏に焼き付いとる。
正直言ってトラウマや。
爆死に慣れるはずない。
「ぜ、絶対間違えたくないンゴ……!」
1歩進む。
床、爆発せず。
2歩進む。
大丈夫、大丈夫。
途中で石の床の僅かなズレを見て、心臓が止まりそうになったンゴ。
いや、爆死したら問答無用で心臓止まるんやが。
止まるっていうか、止まる心臓自体がなくなるんやが。
何回も死んだ記憶が脳裏をよぎって、手も足もが震えたンゴ。
あかん……分かっとっても怖い……
でも引き返す道はもうないんや。
祠の中に入った時点で屋内判定やし、祠に1回入るともう出られないし。
なんかあれやな、返しのついた刃物みたいに殺意高いわ。
絶対逃さないっていう殺意しか感じない。
ワイは唾を飲み込みながら、足を前へ出したンゴ。
――ピシャッ……
タイルがほんの僅かに沈むような感触があったんや。
それで血の気が引いた。
ああああああかん!!!!
間違えたンゴ!!?!?
死ぬンゴォオオオオオオオオ!!!
でも爆発せんかった。
ワイはその緊張感で腰抜かすかと思った。
「し、死ぬかと思ったンゴ……!」
膝をガクガクに震わせながら、慎重にルートを進んだんや。
一歩、また一歩。
そして──――……
「ぬ、抜けたぁあああああああああ!!!」
2回目やが、ワイは本気で叫んでしまった。
祠全体に響き渡るレベルの歓喜やった。
アークたそに聞こえてたら恥ずかしいけど、そんなことどうでもええわ。
ワイはやったんや……!
最初の殺意区間を突破したんや!!
***
次は問題のレーザー地帯や。
6つのレーンがワイの前に立ちはだかる。
そのうち安全なのは最初は3つ、次は2つ、最後は1つ。
「はぁ……はぁ……」
やるしかない……進むしかないんや。
めっちゃ怖いンゴ。
今回は運の試練やから安価は絶対なんて使ったら大変な事になるわ。
これはアークたそを全面的に信じるしかない。
右腕のアークたそのメモを見ながら、ワイは安全なレーンを選んでいった。
アークたその“感覚”やから絶対ではないかもしれへんけど、でもワイは……その感覚を信じる以外にない。
何十回も何百回もこんなの続けてたらワイの精神が持たないわ!
「アークたそ……頼むで……」
発射数秒前……ほんまに怖くて目を強く閉じた。
シュオオオオオオオッ!!!
恐るべき光線が発射された。
ワイの横1メートルの位置をレーザーが通り抜け、隣に漂ってた塵みたいなんが一瞬で蒸発した。
ヒエッ……!!
でも、ワイは生きとった!!
「うおおおおお生きてるうぅぅぅぅ!!!」
もう立つのさえキツいンゴ。
足が震えてまともに歩けへん。
当たり前やろ!?
間違えたら一瞬で死ぬんやで!?
いける……アークたそが書いたんや……外れるわけない……!
そう信じてレーン1へ足を踏み出した。
白い光で一瞬で視界が飛んだ。
それから遅れて音――――
ドシュウウウウウウッ!!!
ワイの隣りのレーンが一瞬で焼き切られた。
セーフ……!!
「アークたそぉおおおおおお!!」
ワイは床にへたり込み号泣した。
本気で泣いたで。
この試練がヤバすぎて涙が止まらんのや。
なんでワイ、こんなことしてるんやっけ?
恐怖に支配されて分からなくなるンゴ。
前世でこんなこと絶対なかったからな。
こんなんカ〇ジとかでしか見たことないわ!
人間の命を軽視しすぎやろボケェ!
「うぅ……あと1回……あと1回や……!」
そして最後の選択や。
安全レーンは1つのみ。
頼む……頼むで……アークたそ……
ワイが移動し終わった後に装置が白く光り始める。
レーザーが──――光った。
シュバアアアアアアアッッ!!
ワイの左右5本すべてにレーザーが走り、ワイの選んだレーンだけが無傷やった。
ほんまにアークたその最強の運がなかったらここは突破できんかったわ!
アークたそ最強や!
ワイは両手を上げてガッツポーズだけにした。
***
ワイはレーザーの試練を超えた先に進んだ。
これで終わりよな?
これ以上あったらもう絶対に生き残れないで??
生かしたまま返す気0よな??
と、思いながら進むと次の試練っぽいのがあった。
嘘やろ!?
冗談キツイわ!
笑えないで!!?
「え……まだあんの……?」
『ナビゲーター:「まだあるで。次が最後みたいやな」』
「ほんまか……ありえんやろ」
これ、またワイ1回は死ぬやつやん。
今度はどんな死に方するんや……?
痛いのは嫌や、せめて一瞬で殺してクレメンス……優しく殺してクレメンス!
部屋の中央には巨大な金の賽が浮遊しとる。
コアみたいなもんやろか。
そのコアの手前に、2つの巨大な石造りのスイッチが並んどる。
左のスイッチには「運命を委ねる」と刻まれとる。
右のスイッチには「運命を確定する」と刻まれとる。
なんや?
これどっちか選べばええんか?
ここにきて2分の1なんか?
2分の1って事は50%ってことやで!?
めっちゃ優しいやんけ!
『ナビゲーター:「どっちを選ぶんや?」』
「うーん……ワイ的には運命を委ねる方やけどな」
『ナビゲーター:「深読みしてそう言ってるなら説得力あるのに、何も考えてなくて草」』
意味なんて考えたって分からへんやんけ。
ここまで運任せやったし、ここは運の祠なんやろ?
やったら運命を委ねるのが普通やろ。
でも、ワイはアークたその力で運命を確定してきたンゴ。
どっちが正解なんやろか。
あ、でも分かった気がするンゴ。
ワイが選んだ方が爆発するなら、ワイが選ばない方を選べばええんやないか?
やったら、運命にゆだねる方じゃなくて、運命を確定する方を選べばええんちゃうか?
ふふん、ワイ、名探偵すぎるで!
ワイは右のスイッチの「運命を確定する」の方を選んで押したンゴ。
で、でも……やっぱり怖いンゴォオオオオオオオオ!!
ワイは目を硬く瞑ったけど、いつまで経ってもワイは死ななかったんや。
それだけやなくて、なんか前の方から「ゴゴゴゴゴゴゴ……」って音が聞こえてきたンゴ。
あれ? 正解したんか……?
ワイがうっすら目を開けて目の前を見たら、祠が既に崩壊し始めていたンゴ。
「ファッ……!?」
『ナビゲーター:「これは逃げんと押しつぶされるな」』
「成功しても結局この展開やんけ!?」
ワイの後頭部にゴンッ! と岩が当たって、ワイは気絶したんや。
【達成】4つ目の祠、クリアやで! でも、結局絶対絶命ンゴゴゴゴwww




