ワイ、それでもくじけないンゴ
ワイの身体が高出力レーザーで蒸発した――――と思った次の瞬間、ワイは祠の外に立っとった。
チェックポイントに戻ったンゴ。
死ぬのってホンマに一瞬なんやな……なんでそんなに簡単に殺そうとしてくるんや?
人の心とかないんか?
ワイの人権ないんか?
ワイは思い出して汗が滲んで、膝が震えて立ってられなくなったんや。
けど実際には身体ダメージはゼロ。
でも精神はボロッボロや。
「ア、アークたそぉ……!」
ワイは号泣しながらアークたそのほうへよろめき歩いたンゴ。
アークたそは祠の入口から数歩離れた岩の上で飴舐めながら座っとって、ワイを見るなり首をかしげる。
「どうしたの?」
「死んだンゴォォォ!! レーザーが鬼畜すぎるんや!!」
ワイはそれしか言わんかったけど、アークたそはそれからすべてを理解したようだった。
普通、こういう時って話が通じないもんなんやが、アークたそは超存在だからわかってくれたんや。
「どんなのだったの?」
「説明するンゴ! まずな、6つのレーンに分かれとって……」
ワイはぜぇぜぇ息を切らせながら、爆発タイル→レーザーロシアンルーレットの説明を全部した。
アークたそは相変わらずの無表情やけど、ちゃんと聞いとる。
ワイのとっちらかってる説明でもわかってくれたんや。
マジ女神やで。
「6つからひとつ選ぶだけ?」
「選ぶだけやが外したら一瞬で蒸発や!? マジで灰も残らん。絶対殺すマンの殺意やったで!!」
「へぇ……そんなに強いレーザーなんだ。魔法壁でも防げなさそうだね」
あ……そういう考えになるんか。
ワイは魔法が使えないから全くその考えにならんかった。
というか、この祠のコンセプトを考えるとそんなずるい方法は許されない感じがするんやが。
まぁ、今までワイは安価の力で攻略してきたけど。
ワイはすぐにまた祠の試練に挑みたくなくて、わざと膝から崩れ落ちたんや。
心が完全にミンチ状態なのは嘘やない。
でもアークたそに優しくしてほしかったンゴ。
癒してクレメンス。
「アークたそ……ちょっと休ませてクレメンス……」
「いいよ」
その言い方があまりにも優しすぎて、ワイは涙腺崩壊寸前やった。
ワイの意思を尊重してくれとる!
ワイはアークたその隣に座って、必死に涙をこらえながら深呼吸したんや。
「はい、飴」
いつもどおり、アークたそは異空間から飴を出して渡してきたンゴ。
この前異空間にしまったシュールストレミングの臭いがついとるんやないかとちょっと警戒したけど、それはなかった。
飴をくれた瞬間、ワイの心のHPが一気に回復したンゴ。
相変わらずなんとも言えない味の飴や。
棒付き飴やからこれを舐めてる間はお互いに無言になるんやけど、アークたそとのこの無言は全然気まずくないンゴ。
むしろ、沈黙が心地いいくらいやで!
しばらく無言で飴を舐めながら呼吸を整えたあと、ワイは口を開いた。
「アークたそ……祠の試練マジできついで……運なんてワイにはないし……2回も死んで、今心折れとるんや……」
甘えてみるンゴ。
嫁とイチャイチャするのは最高やで。
「大変だったね」
アークたその「大変だったね」は、ほんまに刺さる。
慰めとかやなくて、ただ事実として“受け止めてくれとる”感じやな。
それが逆に救われる感じがするンゴ。
でも、なんか甘えられてる感じやない。
主従関係があるからやろうか?
手……手とか、つないでもええんやろか?
そろそろそういう進展があってもいいんやないかと思ってアークたその手を見たけど、片方は棒付き飴を持ってるし、もう片方はポケットに入れとって隙が全くないンゴ!
普通こういうときって、触れられるところに手があって徐々に手の距離が縮まったりするもんやないんか!?
恋愛アニメの知識、ほんまつっかえ。
そんなことを考えながら、ワイはふと疑問に思ってアークたそに聞いたんや。
「なぁアークたそ……アークたそは魔王倒したら……どうするつもりなんや?」
魔王討伐が終わった後も、ワイと一緒にいてくれるんやろうか……?
「特に考えてないよ」
「えっ、考えてないんか?」
「うん、別に」
えぇ……
英雄になったらなんでもできるんちゃうんか……?
いや、英雄ならんでもアークたそはなんでもできるけど……
でも、その先になにか望んどることとか……ないんか……?
アークたその答えはいつもの調子で淡々としとった。
けどワイの胸の奥で、焦りのような気持ちが生まれた。
アークたそはなんでもできる。
ワイは……なにもできへん。
「ワイは不安なんや。こっちの世界のこと何も分からんし……居場所もないし……アークたそみたいになんでもできる人間やないんや……」
「ふーん。真太郎はこっちの世界に来る前はどんな感じだったの?」
ニートやったで!
って……言ったら格好がつかないンゴ。
とはいえなにしとったかといわれると、何してたかろくに思い出せへん。
「ワイか? ワイはな……基本的に毎日レスバしとった」
「れすば……?」
「せや! ようは口喧嘩で相手を言い負かすんや。罵倒と反論の投げ合いの戦争をしとったんや!」
アークたそに伝えきれんが、即Sがワイの人生そのものやった。
今は安価スレしか立てられないけど、こっちの世界の事とかスレ立てしたくて仕方ないンゴ。
「真太郎、口喧嘩強いんだ?」
「負けへんで! ワイはレスバでは無敵や!」
アークたそはほんの少し、口元を緩めて笑っとった。
「楽しそうだね」
そういわれて「楽しかったんやろか……?」と思った。
煽られたり、罵倒されたり、全然楽しいコンテンツやなかった気がする。
でも、他にすることも特にないしアニメとかゲームとかしながら即Sするのがワイの日課やった。
「た、楽しくなんかなかったで……」
ワイは飴を舐めながら俯いた。
「他にやることなかっただけや……働きたくなかったし……自分の意見押し通して勝った気になっとっただけで……ワイ……誇れるもんなんてなんもないんや」
言えば言うほど情けない。
でも、アークたそは否定もせず、ただ聞いてくれた。
「ワイな……アークたそみたいになりたいんや。強くて、かっこよくて……ワイの憧れや」
本当ならワイ自身がそのポジションを得るはずやった。
せやのに神に呪いかけられて放り出され、この世界で何もかも劣った存在になってもうた。
悔しさが喉の奥でつかえて、言葉が震えた。
「……なんとかならへんのやろか」
「じゃあ、真太郎が私みたいになれたら、そのとき世界がどう見えるか教えてよ」
な、なんでそんなこと言えるんや?
ワイってアークたそから見て伸びしろあるんか?
やっぱり隠された力がこの体に眠ってるんか?
……そんな都合のいいこと、あるわけないンゴ。
もうこの世界にきて、そのくらいは分かっとる。
「そ、そんな未来来るわけないやろ……! なれたらよかったけど」
「諦めるの早いね、真太郎は」
「っ……!」
その言葉が少しだけ痛かった。
なんだかアークたそに見放された気がして、ワイは慌てて言い返す。
「ち、違うで! ワイは諦めへん! 絶対この祠攻略したるからな!!」
「そう。それだけ頑張れるなら、いつか私みたいになれるよ」
アークたその言葉と笑顔で、ワイのHPと心は再度完全回復した。
「よっしゃ……! ワイ、もう一回挑むで!!」
「じゃあ、さっき選んだレーザーの私の思う正解位置、腕に書いてあげる」
左腕には爆発タイルの正解のメモをしとるから、アークたそはワイの右腕を取って、淡々とレーン番号を書き写しとった。
キュウゥウウウウウン!!!
手は繋げなかったけど、アークたそがワイに触れてくれとる!
これは勝ち確定やで!
アークたそのために頑張るンゴ!!
【歓喜】嫁の方からワイにスキンシップとってくれるンゴwww最高wwwww




