【超絶悲報】初仕事最悪ンゴ!!
ワイは今、下水の中にいる。
もう一回言うで。
ワイは今、下水の中にいるんや。
ギルドから必要最低限の仕事に使う道具を借りて、ワイは掃除をするための下水の現場に来た。
下水はワイが想像してた以上に臭いんや。
地獄みたいな臭いがする(地獄の臭いは知らんけど絶対こんな臭いに決まっとる)。
鼻が死ぬ。
魂も死ぬ。
ワイのプライドも死ぬ。
もうプライドがバキバキや。
なぜワイがこんなことに……
いや、分かっとるんや。
アークたその「頑張ってね」のために来たんや。
それだけでワイは頑張れる―――はずやった。
でも現実は非情や。
この仕事、ほんまにクソきつい。
ほんまに文字通りの糞な仕事や。
あんなに即Sでうんこネタで散々盛り上がってたけど、これはネタでもないし冗談やないで。
これは笑えへん。
ワイはあまりの辛さに、現実逃避するようにナビゲーターに話しかけた。
「なあ、これ安価でなんとかならんやろか?」
『ナビゲーター:「また安価に頼るんかwww 堅実に働けやカスwww」』
「うるさいわ! ワイは自分で考えるより他人に任せるタイプや!」
『ナビゲーター:「好きにしろや」』
【至急】ワイが地下水路の悪臭汚泥を効率的に除去するためのチート級のアイデアを教えろ!
安価>>3
1:名無しより愛をこめて:火属性魔法で爆破
2:名無しより愛をこめて:服を脱ぎ捨てて下水で水遊びしろ
3:名無しより愛をこめて:精神力と物理で頑張れ
結局精神力やんけ!
全然チート違う!
有能レス、ゼロ。
『ナビゲーター:「懲りなくて草」』
「クソ安価ばっかりやんけ!!! 火属性魔法なんて使えへんし、こんな場所で水遊びとか無理や! 結局物理かよ!!!」
ワイは安価に裏切られ、バケツとスコップを握りしめ、地下水路へ突撃したンゴ。
誰もワイを助けてくれんのやな……涙と汗と下水が一緒になって流れていったんや。
『ナビゲーター:「イッチ、仕事進んでへんぞ」』
「わかっとるわァァァァ!!」
結局、ゴールが見えずにワイは必死にスコップで戦った。
下水道は屋内判定やったから、ナビゲーターの爆死カウントを労働時間として使ったんや。
ワイの采配、ナイスやろ?
それから、日が暮れる頃にやっと一通りの作業が終わったんや。
作業が終わったら作業した個所を渡された機械で写真みたいなの撮って、それで作業終了や。
手も服も臭い。
全身べっとべとや。
ギルドで渡された1回だけ身体が綺麗になる魔法が刻まれた石が支給されとったから、それで服と身体を綺麗にしたンゴ。
風呂は嫌いやけど、一刻も早く風呂に入りたいって思ったくらいやった。
それで、ギルドに戻って報告。
ギルド側がワイが撮った写真みたいなの確認して、それに見合った報酬を払ってくれたんや。
「報酬はこちらです」
受け取った報酬袋を見た瞬間、ワイは初めての労働で得た報酬に感動したンゴ。
「うおおおおお! ワイの初給料やああああ!!!」
中を開けると――――銅貨数枚しか入ってなかった。
ファッ……!!? 安っっっっ!!?
『ナビゲーター:「まあ、奴隷仕事の賃金やからな。もらえるだけ温情やで」』
「うるさい! でも……でも、これでアークたそにワイの金で飴買ってあげられるんや!」
ワイはその小さな袋を握りしめて市場へ向かったんや。
***
市場は夕方の賑わいでいっぱいやった。
いろんな種族がその場にたくさんおった。
行ったことないけど、ディスティニーランド並みに混んどったわ。
ワイはその中で飴を探して歩いた。
高級飴は買えないけど、この銅貨で買えるものがあるはずや。
ワイが飴を売ってるところを探しとったとき、人混みの向こうからやけに目立つ一団が歩いてくるのが見えた。
金髪碧眼、白いマント、腰に細身の剣のいけ好かないイケメンがおった。
闘技場で見たアークたそと戦ったアシェルや。
ブス、美人の女たちがイケメンの周りにまとわりついとった。
あんなにワイは女にモテたことないのに、ムカつくわ!
「なんやねんあのイケメン……ほんま、いらつくわ」
『ナビゲーター:「心までイッチの方が醜くて草」』
「黙っとけ!」
ワイはイケメンから視線を逸らして通り過ぎようとしたんや。
まぁ、あのイケメンがどれだけイケメンでもアークたそはワイの方を選んでくれたんや。
アークたそに選ばれたワイの勝ちやで! ざまぁwww ぷぎゃーwwwww
そんなことを考えながらワイはイケメンとすれ違った。
「君、ちょっと待ってくれ」
まさかワイのこととは思わんかったけど、肩に手を置かれて呼び止められたから間違いなくそれはワイやった。
うわぁ、なんでやねん。
こっちはお前に用ないわ!
「……な、なんや?」
ワイは警戒しながらイケメンの方を向いた。
イケメンの取り巻きの女がワイの方を睨んできて、ソッコー目をそらしたンゴ。
女の目、こっわ!
ま、まぁ、アークたその冷たい視線の方が怖いけどな!
お前らなんて全然怖くないんやからな!
「この辺りで“人工の魔物避け”を売っている店を知らないか?」
「し、知らん」
ワイがそう答えると、イケメンは怪訝そうな顔をしてたんや。
「しかし、君の身体から……微かにその匂いがする。魔除けの香だ」
ワイはそれを聞いたときに「臭い」って言われてると思ったんや。
「そんなもんつけてへん!! さっき身体を綺麗にしたばっかりや! 臭くないし!!」
ワイはイケメンに怒ったけど、女たちがイケメンの代わりに甲高い声でワイを責めてきたんや。
「アシェル様、そんな汚いデブ放っておきましょうよ!」
「そうですよ、ただ臭いだけですわ!」
そ……そんなはっきり言わなくてもええやんけ……!
ワイの心がバキッと音を立てた気がした。
もう、言い返す気力もなかったンゴ。
ワイは走ってその場から逃げたんや。
「ま、待って……!」
イケメンはワイを呼んどったが、ワイはもうイケメンの近くに1秒でもいたくないと思って走ったんや。
なんで……なんでワイはこんな惨めな気持ちにならなアカンのや!!
***
夕焼けがやけに眩しくて、それが目にしみて尚更に涙が出た。
アカン、ワイはまた現実を突きつけられた。
イケメンみたいな完璧人間とは、生まれた時点で何もかも違うんや。
どうせいいところの生まれのお坊ちゃんなんやろ。
ワイだってロイヤルニートになりたかったわ!
そしたら働かなくても「働け」って言われ続けなくてもよかったんや。
ワイは生んでくれなんて言ってない!
製造責任とれや!
そう思いながら走った。
ワイがどれだけ足掻いても、アークたそに釣り合うような人間にはなれんのやろか……
ワイはアークたそと泊まってる宿屋について、暗い気持ちのまま扉を開けた。
結局、アークたそにプレゼントするための飴、買えへんかった。
それもこれもあのイケメンのせいや!
ワイ、臭くないし!
心穏やかじゃないまま、ワイはアークたその部屋の扉を軽く叩いた。
すぐにアークたそは扉を開けてくれた。
「おかえり」
ワイはアークたその顔を見ただけで救われた気がした。
「う……うわああああああああん! アークたそぉおおお!」
もう我慢の限界になって、ワイはガッキのように泣きじゃくった。
「ワイ、頑張ったンゴ……でも、誰も……ワイのこと……人間扱いしてくれへんかったンゴ……! 酷すぎるンゴォオオオオオオオオ!!」
ワイが泣きじゃくってる姿を見ても、アークたそは無表情やった。
黙って飴舐めとる。
変な慰めの言葉がないのは逆に良かったかもしれん。
しばらく泣いた後、ワイは報酬の入った袋をアークたそに見せた。
「……働いてきたんや。きつかったけど……一応、給料もらえたで」
これっぽっちじゃ、アークたそに呆れられると思ったけど……
でも、アークたそはそんなワイの事馬鹿にしなかった。
「真面目に働いて偉いよ」
「っ……!」
アカン。
また涙出そうになった。
頑張ったこと褒められるって、こんなに嬉しいことやったんか。
知らんかったわ。
今まで、頑張ったことなんて……なかったからな……
ワイは一瞬、マッマとパッパの顔を思い出したん。
「アークたそ……飴、買ってこようと思ってたんやけど、時間なくて……」
「いいよ。飴はいつでも買えるからさ」
ワイはその言葉を胸に、心の底から思ったんや。
明日も、もう少し頑張ってみてもええかもしれん――――
って。
【感動】ワイ、初めて努力が報われる




