完全に攻略ルート入ったやろwww
白いマントのいけ好かないイケメンが登場した瞬間、闘技場の空気が変わったんや。
絶対、この男の勝ち確定って感じの空気や。
ワイは納得できへん。
アークたその方が絶対強いはずや。
観客の黄色い声が鳴り響いとる。
なんや、イケメンってだけでこんなに盛り上がるんか?
ほんま、世の中顔やな。
こんなポリコレ棒に殴られたような世界でもやっぱり美男美女は贔屓されるんか。
『ナビゲーター:「嫉妬で震えてるでイッチ」』
「うるさいわ……!」
アークたそもそこに立っとる。
アークたそは仮面もしとるし服装も地味やし、美女には見えないけど、あそこで仮面が取れたら「美男美女」って持てはやされるんやろか……
アカン、そんなことよりも試合に集中せな。
ワイが応援せんで誰が応援するんや。
闘技場の中央でアークたそは仮面をつけて、髪を後ろでまとめて、黒い軽装に身を包んどる。
ほんまに“戦士”って感じやった。
アークたそってジョブ的にはなんなんやろか?
剣は使えるみたいやが、魔法も使えるし、回復魔法だって使える。
主人公キャラっぽいけど、言動が王道じゃないンゴ。
ワイが考えとったら、審判の声が響いたんや。
「第四戦――――聖痕のアシェル対、仮面の剣士! 始め!」
歓声が響いたのと同時に、シャリシャリ……と金属の擦れる音と同時に、闘技場の空気が張りつめた感じがした。
アークたそが地面に剣を引きずる音がやけに鮮明に聞こえるような気がするンゴ。
アークたそは、いつものように軽く剣を構えていた。
一方、アシェルは重厚な剣を両手で持っとる。
あんなもの振り下ろされたら死んでしまうんやないんか?
アークたそ……大丈夫なんか?
「名を聞いても?」
イケメンはアークたそに簡単に名前を聞いたんや。
おい! ワイの嫁に馴れ馴れしいやで!
ワイが憤慨してると、アークたそは静かに返事をした。
「必要ない」
さっきまでのデートの時の柔らかい声とはまるで違う冷たい声やった。
そして、アークたそが踏み出したンゴ。
バチィッ!!!
剣と剣がぶつかる瞬間、耳をつんざくような音が響いたんや。
なんでや!?
普通の模擬戦用の剣やろ!?
そんなことにならないやろ!?
観客席もどよめいとった。
音も凄かったけど、アークたそもイケメンも動きが早すぎて目で追えんかった。
相手の動きに合わせて剣を振るっとるみたいやが、ワイには到底理解できんかったで。
あんなん、一瞬でも読み負けたらすぐに死んでまうで!?
「流石アシェル……! 凄い! カッコイイ!!」
「速すぎて見えねぇ!」
「仮面の女も凄いぞ!」
イケメンの一撃はかなり重そうやった。
でも、アークたそは防御を最小限にして受け流しとった。
力に力で応戦しない頭のいい女やで。
でも……アークたそは手加減してるんやないんかと思ったんや。
力に力で返してもアークたそは負けへんと思う。
『ナビゲーター:「アーク、技のキレ全部殺しとるな」』
「なんでやろ?」
『ナビゲーター:「1位になる気がないんやろ」』
「力の信仰があるなら1位の方がええやん」
『ナビゲーター:「本人に理由聞いてみろや」』
イケメンは何度も斬りかかっとるが、そのたびにアークたそは紙一重でかわして受け流し、倒そうと思えば倒せる隙を何度も作ってた。
せやけど、攻めに転じなかったんや。
観客にはそれが互角の戦いに見えたやろう。
でも、普段アークたそを見とるワイには分かったンゴ。
暫くそれが続いた後、イケメンの動きが一度止まったんや。
息が上がっとるように見えた。
本気で打ち込んでもアークたそが軽く流すからやりづらいんやろうなと思う。
アークたそは逆に、まったく乱れてないンゴ。
「……貴女、どこで剣を学んだ? 自信をなくしてしまうな」
「独学」
ど、独学なんか?
それはそれで凄すぎるンゴ。
ええで、アークたそ! イケメンの心をへし折ってやれぇえええええ!!
それだけのやり取りで、イケメンは何かを感じ取ったように目を細めた。
次の瞬間――――わざとアークたそがほんの一瞬だけ、重心を外したんや。
絶対わざとやと思う。
それを見逃さなかったイケメンの剣が、その隙を正確に突いたンゴ。
ガキィィィンッ!!!
アークたそが剣で逸らしたとはいえ、アークたその肩に浅い傷がついたんや。
それからそのまま倒れ込み、審判に左手を上げて……
「降参する」
ファッ!?!!?
降参するんか!!?
観客は「おおおおお!!!」と歓声を上げとる。
ワイは真っ青になったんや。
あのアークたそに傷をつけるなんて!? 許せんンゴ!!
降参する程の怪我を負ったんか!?
イケメンはアークたその降参を受けて剣を止めた。
「…………」
その瞳が、アークたそをまっすぐに見つめていたンゴ。
なんや?
なにワイの嫁を凝視しとるねん。
オォン!?
イケメンは小さく息を吐いた。
「お嬢さん、こんなことを聞くのは失礼かと思うが――――何か香水のようなものをつけているか?」
ファッ!?
何匂いなんて聞いとるんや!!?
それってセクハラやろ!?
こんな公然の面前で!!!
「魔物避けの安い香料を少々」
「魔物避けの……」
その瞬間、イケメンはわずかに安堵したように笑ったんや。
その爽やかな笑顔で観客の女たちからは黄色い叫び声が上がった。
「そうか……人工の香料か。気のせいだった。失礼なことを聞いて済まない」
アークたそは軽く剣を下げて、静かに退場していったンゴ。
勝敗は――――アシェルの勝ち。
けど、それは“アークがそうしたかった”だけや。
控え室に駆け寄ると、アークたそは傷一つ気にしてなかった。
さっきの肩の傷も、もう血が止まっとる。
なんで回復魔法で全部治さないんや?
「アークたそ、大丈夫なんか……?」
「平気」
それだけ言うと、軽装の上にいつものワイシャツを着て、仮面を外して――――
飴を口にポイッと入れた。
シュッと結んだ髪の毛のまま、飴を舐めるアークたそ。
……いや、なんやその破壊力。
髪まとめただけでめっちゃ美人やんけ。
「帰ろう。もう十分楽しんだから」
「楽しかったんか? なら良かったやで」
アークたそはさっさと控室を出て行ったんや。
ワイもそれに続いて出ていく。
出た後、あのいけ好かないイケメンがやってきたンゴ。
なんやキョロキョロしてなんか探しとるようやった。
チッ!
なんやねん、周りに女はべらし腐って。
ほんまに嫌いやで!
「先ほどの仮面の女性はいますか? 賞金受け取ってないようですが」
ワイは思わずヒッて声出たンゴ。
なんやこのイケメン、まるで乙女ゲームの攻略対象やんけ!
キッショ!
死ねや!
「アークたそ、あいつがなんか探しとるみたいやで……?」
アークたそがあのイケメンとの恋愛フラグが立ったらどうしよ……と不安やったけど、アークたそはちらりともイケメンの方を見なかった。
「面倒だから帰るよ」
そっけなさMAX。
ワイは思わず「やっぱり、アークたそはあんなイケメンに興味ないんや!」と心の中でガッツポーズした。
「お、おかのした」
ワイはアークたそについて宿へ戻った。
***
宿に戻ると、ワイはアークたその部屋に入った。
「どうしたの、真太郎」
ワイはしばらく黙っとったけど、勇気を振り絞って口を開いた。
「あ……あの……その……今日のデート、ど……どうやった?」
「今日のデート?」
「ワイ、デートって初めてで……ワイはめっちゃ楽しかったンゴ! アークたそはどうやった……かなと思って」
アークたそは飴を舐めながら、ちょっとだけ目線を上げてワイの方を赤い瞳で見つめてきたんや。
めっちゃ美人や!
見る度にキュンキュンするで!
「うん、楽しかったよ。普段行かない場所に行けたし」
ワイ、それを聞いた瞬間、もう心の中で花火上がった感じがしたンゴ。
楽しかったって……!! ワイ史上、最高の言葉や!
「この飴、ありがと」
アークはポケットから飴の包みを取り出して、ちょっとだけ微笑んだ。
笑顔見た瞬間、ワイの魂が昇天しかけたわ。
でも、自分で働いて買った飴じゃないんや……
それを考えるとなんか胸の奥がチクッとしたんや。
盗んだ財布から出した汚い金で買ったんじゃ、なんか違う感じがするンゴ。
でも、働きたくないし……アークたそは玉の輿やし……
ワイはとにかく働きたくなかったけど、でも、アークたそのためならちょっとくらい働くのも悪くないかもしれへんと思った。
「あ……あの……また、デート行ってクレメンス」
アークは飴を転がしながら、軽く頷いた。
「いいよ、また行こうか」
それを聞いてワイ、完全に有頂天。
神よ、今ワイは生きててよかったって本気で思ってるで!
明日死んでもええレベルや!
『ナビゲーター:「はい死亡フラグで草」』
「うるさいわ!!!」
【大成功】ワイ、アークたそとのデートで好感度爆上がり




