舞い込む便り
エリシアさんは自分を魔術師と名乗り軽やかに地面に着地する。
そうして持っていた傘を閉じトランクに仕舞う。
「魔術師……それって、空を飛んだり……炎を出したり……魔法使いみたいな?」
「まぁ、厳密には違うのだけれど、大まかにはそのイメージで十分よ……まぁ騙して悪かったわ、そのごめんなさい」
「ううん、エリシアさんにも事情があったんだろうし私気にしないよ」
「そうありがとう……。……アレは」
「?」
話の途中上を見上げるエリシアさん。
私もつられて上を見上げると大きく空いた工場の天井、その先の夜空、大きな鳥が甲高い声で鳴きながら空を舞っていた。
「鷹かな……?鷲……トンビ?」
「アレは鷹の使い魔ね」
「使い魔ってあの?」
「えぇ魔法使いが使役する動物とかそういうの。アレは鳴き声の魔力の波長からしてこっちに伝令を出してて……こっちに来るらしいわ」
「え、えと誰が……?」
「安心して、私のいる組織の仲間、現地の魔術師よ」
「この島の……」
「いろんなところにいるの、まずは出ましょう」
そういうと廃工場の壁面にエリシアさんは歩いていく。
トランクから紙が湧き出て壁に引っ付くと勢いよくそこが爆発する。
「ほら、行きましょう」
壊れた壁の先へ進んでいくエリシアさん、私も後を追う。
壁の向こう側、廃工場跡から抜け出すと開けた場所に出る。
周囲には長年使用されてないであろう錆びたクレーンや他の隣接した工場棟跡がありかなり大規模な工場であったことが見て取れた。
かさかさと葉の擦れる音が聞こえ、枯葉が飛んでいく。
「ハルカゼ、こっち」
エリシアさんが工場跡の先で手招きする。
そちらについていき、エリシアさんに並ぶ。
「わぁ」
廃工場の敷地の端。そこから遠く、眼下、一面の田んぼの先に市街地が見えた。
夜の中でも、光が集まり人々の営みが確かに分かる。
どうやら工場跡は小高い台地の上にあったらしい、周囲には林が茂っており、かなり町はずれの位置にあることが分る。
「綺麗だね……」
「そうね……夜景でも見ながら待ちましょう」
少し冷える夜空の下で私たちは夜景を眺める。
そうして数分後。
「お初にお目にかかります、私は館よりこの土地に配属されている魔術師翠と申します」
私たちの前に現れたのは茶黒いローブに身を包んだ涼やかな雰囲気を纏わせた女性。
「この度はロンディニウムの標館よりご足労頂き誠にありがとうございます。それに加えて魔術師崩れの蛮行を自らで退けなさるとは──」
「長ったらしいのはいいわ手早くいきましょう。私はエリシア・ウォルステンホルム。こっちはハルカゼシノ、被害者……兼協力者よ。悪いわね、わざわざここまで。あなた一人? 倒した魔術師崩れはそっちに任せれる? あと隠ぺい工作」
「えぇこの地区で活動している魔術師は現在私一名ですが、問題ありません。他の地区より魔術師を呼び寄せている最中です。処理と隠ぺいはこちらで行います」
「悪いわね……あいつの行為に関してはあなたは認識していたの?」
「……はい、何かしらを企てていることは。他の魔術師崩れの動きも活発で手が回らず」
丁寧な態度を崩さず下手にエリシアさんに接する翠さん。
「……いえ、別に咎めているわけではないのよ? むしろすぐに駆けつけてくれたこと感謝するわ」
「えぇ、ミスウォルステンホルム、こちらこそ感謝します」
「……え、えぇ」
表情崩さず冷ややかな態度の翠さんに対しエリシアさんはどこか気まずそうにエリシアさんは接している。
「協力者の方もご協力感謝します」
「い、いえ……」
こちらにも頭を下げる彼女。私も思わず頭を下げる。
「調査はいつ頃から?」
「明日からでも始めるわ、そのためにこの島に来たんだもの」
調査……。
「それにしても標館より来る客人が事前の通告と異なっていたので驚きました。変更があられたのでしょうか。伺っていた話では大師父様のお付きの教授補佐が来るというお話でしたが……何か事件でも?」
「えぇ、ちょっとゴタついててね。私にお鉢が回ってきたの」
「なるほど、失礼、通信が」
翠さんの片耳のイヤリングが薄く光った後、そう言って彼女は私達から離れ跡地の隅で何かを話し始めた。
独り言を話しているように見えるがきっと魔術で他の魔術師と会話をしているのだろう。
「ねぇ……エリシアさん」
私は気になることがありエリシアさんに話しかける。
「何かしら」
「その何でさっき私の事を協力者って……」
「あぁ、あなたには恩義があるもの。このまま被害者ってことで通したら、記憶処理されて今日の事をさっぱり忘れちゃうもの、それはちょっとね」
「何それ、怖い……」
「まぁ別に現地の協力者ってことで通すわ、心配しないで」
話しているとやがて、通信を終えたらしい翠さんが戻ってきた。
「連絡が付きました。すぐにここに他の魔術師が来ます。先程話した通り男の処分と事件の隠ぺいはこちらで館と連絡を取りつつ対応します。お二方はこちらに任せて今日はどうかお体を休めなさってください。」
「えぇ、ありがとう。そうさせてもらうわ……あぁ後あの男が残した魂喰らいの魔方陣。多分周囲にあるからよろしく、詳細な報告は帰ってからするわ」
「かしこまりました、帰りはどうなされますか?」
「……この時間ならまだバスがあったかも」
「それなら、バスで帰りましょうか……はぁ……荷物あの路地裏に置きっぱなしね、取りにいかないと」
「そうだね…結構帰るの遅くなっちゃうな……」
「もう夜も更けてくるし私のいるホテルに泊まればいいんじゃないかしら?ホテルの方が近いし、服は今度は私が貸してあげるわ」
「そっかそれじゃお言葉に甘えて泊まらせてもらおうかな……ふわぁ」
「それじゃあね翠」「さようなら……翠さん」
「はい、それでは」
軽く会釈をする翠さん。それに対し彼女に私たちは軽く会釈を返すと山を下りていく。
近くの搬入道路を下り、バス停まで行くと、ちょうど市街地行きのバスが来た。
私たちはバスに乗ると、ゆらゆらと揺られながらホテルに帰っていった。
◇◇◇
ダダッと暴力を纏った凄惨な音が鳴り響いていた。
それは銃声だった。
「誰か!」「キャッー!!!助けっ……」
響く悲鳴、落ちる薬莢、叫びと泣き声、何かが弾ける音が確かに聞こえていた。
景色は見えない、だって私は蹲っていたから。
耳を塞いで目を塞いでで何も聞こえないように。
怖い。
「おい!!! 金はやくしろ!!!」
「黙れ今やってんだよ!」「テメェ今何かしようとしたか!?」
怖い、怖い、怖い。
「キ、キミ大丈夫だからもうちょっとこっちに───」
パンッと高らかにまた響く音、隣で何かを言ってくれていた気がする人の声はもうしない。
怖い、怖い、怖い。
震える足にピチャピチャと液体音が鳴り始める。何かが足に付いているのか、生ぬるい温度がした。
浅く繰り返す、呼吸、私はただ、蹲って、早くなる鼓動を何もない暗い世界にただ感じている。
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。
辺りに響く叫び声と暴力的な声が更に浅い呼吸を強めていく。
「はやくしろ!!!」「ハハハハ!!! これだけありゃあ!!!」
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。
声が近づいてくる。
「おい、逃げるぞ!!!」「おい、待て」
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。
「そうだ、おいガキ、テメェも来い」
嫌だ、やめて、何か強い力に私は引っ張られて。
誰か、お願い、怖いよ、誰か、誰か。
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。
「おい、チッ」
そして暗い世界さえも私はいられず、私はただ目の前にある死に直面しようとして───
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。
怖い───
私は、
「おい、もう」「一発喰らわないと分からな───」
私は。
……。
……?
終わった……。
の……?
ただ静まり返っていた。
そして次にピチャピチャと音が聞こえた。
はやる鼓動。
私はどうにか抑えながら、そっと目を開ける。
そこには先程まで凄惨な空間を作った原因の男たちも暴力もなかった。
そこに───
───は。
「え?」
赤い、
何かがあった。
それはよく見ると人間としての表面を表面を何かに全身くまなく切り刻まれた男たちで。
「え、あ…??」
近くにはまた全体をバラバラになるまでスパッと切断されたような銃。
ピチャピチャとなる音。それの正体は男たちから滴っている赤い血。
それが小さい血だまりを作っていた。
男たちは微かに息をしていて、辺りに倒れている。
息が早くなる。
かろうじて、生を留めているかのように見える男たち、そして、その前にいる私。
辺りを見る。
先程まで、叫んでいた女性も泣いていた子供も静かに待っていた男、あの中で生きていた人たちがただ私を見ていた。
驚愕の表情を浮かべながら、私を、あり得ないものを見るかのように私を。
バケモノでも見るかのように私を、じっと見ていて、私は。
私は。
◇◇◇
───いつかの夢を見た気がした。
光景はもう遠く彼方にあり思い出すことも出来ない。
怖い夢を見た気がしたのだけれど……思考を振り払い私はどこかから届いた光の眩しさに目を開ける。
目を開くとそこは知らない天井。格式高そうな装飾が施されている天井面の中央に大きなシャングリラが吊るされていた。
身体を横に動かすと、手触りの良いシーツと身体に掛かった毛布の中、ベットの先に見えるのは、これまた高級そうな壁面に沿って吊るされているカーテン。
その間から光が私に向かっていて零れていた。
私は寝ていた身体を起こす。手をつくと沈み込むような柔らかい感触があった。
スリッパを履き、屈伸しながら立ち上がる。
そして、寝室を抜け、リビングとでもいうのだろうか、これまた広い部屋に入る。
すると、近くにある大きなソファの上。
「……ぐぅ……もう食べられないわ……そう、魔術がなければね……」
寝言を呟く黒髪の少女、エリシアさんが毛布をかぶりパジャマ姿で寝ているのが見えた。
「……現実なんだよね」
昨晩の出来事を思い出しつつ、未だ咀嚼できない現実離れした今。
近くのカーテンをそっと開ける。
大きな窓越しに見える、海まで続く都市の街並み。
薄いもや越しに綺麗な朝日が水面から上がってこようとしているのが見えた。
「……ハルカゼ?」
後ろを振り返ると目をこすりながら上半身を起こしているとても眠そうなエリシアさん。
「あ、ごめん。起こしちゃった……?」
「ううん……なんとなく目が覚めただけよ……ふわぁ」
エリシアさんは目を虚ろに上半身をゆらゆらさせながらあくびをしている。
「ごめんね……その眠たいよね、カーテン閉めるね」
「いいわよ……そろそろ起きる時間だったし……今日もやることはたくさんあるもの……うーん!」
大きく屈伸をするエリシアさん。
「ねぇエリシアさん」
「ん?」
「おはよう」
「……えぇ、おはようハルカゼ」
街がゆっくりと動き出した朝日の中、私たちそんな、おはようの挨拶をかわすのだった。
◇◇◇
「美味しい……」
少し昇った朝日の光が差す都心の高級ホテルのスイートルームの一角。
私は運ばれてきた様々な料理が置かれたテーブルの中、ひと口かじったサンドウィッチの美味しさに感動を漏らす。
「えぇほんと、なかなかいい味してるわ」
テーブルの向こう側、デニッシュをかじったエリシアさんからも同様の感想が出る。
「やっぱりこういうところのご飯って違うんだね……」
部屋に運ばれたモーニングセット、豪勢な皿の数々が小さなテーブルを埋め尽くしていた。
「えぇほんと。昨日のランチもそもそもあんな歩き回らなくても最初からここのホテルのランチに行けばよかったのよ、なんで思いつかなかったのかしら私」
「あはは……私は楽しかったよ?クレープも美味しかったし」
「あんな胡散臭そうなクレープ屋、私はもう結構だわ……これ美味しい、ねぇハルカゼも食べてみない?」
「いいの? なら、ちょっと貰うね」
そうして私たちは朝ごはんを食べていく。
「それにしてもこの感じだと全部食べれそうね……昨日はあの後結局何も食べずに寝ちゃったし」
「そうだね……昨日は大変だったね」
思い返すのは昨晩の廃工場跡での一件。
男が操っていたゴーレムと呼ばれた巨躯の土塊を倒したエリシアさん。そして自ら明かしたエリシアさんの正体。
翠さんと別れた後は荷物を回収してホテルに帰ったわけだけど。
「そういえばちゃんと聞いてなくて聞きたかったんだけれどエリシアさん」
スイートルームから覗く朝日を眺めながら肘をつくエリシアさん。
それを見ながら私はプリンを食べている。
「何かしら?」
エリシアさんは話しながら食べていたイチゴをひょいと口の中に入れ込む。
「エリシアさんはどうしてこの街に来たの? 翠さんは調査って話してたけど……」
「……この島、というか主にこの地区がいろいろきな臭くなってるの」
「きな臭い?」
「えぇ、元々この島は魔術師が時々行方不明になるの。それでそういう所を組織も怪しく見てたんだけど。……最近、この地区の霊脈の動きが活発になりだしてね」
「霊脈?」
「大地には川みたいに星から溢れる魔力が流れる場所があってそれを霊脈って言ってそれを魔術師は活用するんだけど、最近ここの夕凪島地区の霊脈が異常に活発化してるらしくって。何かの大規模な魔術の兆候か、確かめるために組織の派遣で私は来たの。……もしかしたら行方不明の魔術師に何か繋がるかもしれないし」
「そうだったんだ……大変だね」
「まぁ別にいいのよ……いずれこの島に来たかったし」
「……? 観光とか?」
「……まぁ、そんなところよ」
「そっか」
会話を終え、テーブルを見てみるといつの間にかほとんどの皿が空になっている。
二人で全部あのテーブル一面に置かれていた料理の数々を平らげてしまっていたらしい。
「わ、全部食べちゃったんだね私たち」
「あらほんと。結構いけるのね二人だけでも」
ゆったりとした朝の時間。
「美味しかったねエリシアさん、泊まらせてくれてありがとう。……ホテルはもう今日までなんだっけ……もう次のホテルは決めてあるの?」
「えぇ、この近くに、しばらくはこの島にいる予定だもの」
「……あ、でもお金大丈夫?もしよかったら私の部屋でも……」
「ふふ、ありがとう。でも魔術師絡みで何かあったらいけないもの。気持ちだけ受け取っておくわね」
「そっか……それじゃ……」
コンコン。
何かを叩く音が聞こえる。
「ノック? 部屋のじゃないよね、どこから……」
辺りを見回すと私たちのいるテーブルの近くの窓、ベランダへと繋がる
窓の向こうの端。
小さな白いハトがベランダに立ち、ドアをくちばしでつついてるのが見えた。
「……エリシアさん、これって」
「ハルカゼ気にしなくていいわ。ただのハトよあれは、そうただのハト」
「いやでも……」
「いや私には見えないわ何も聞こえない断じてよ」
「エリシアさん……」
目を閉じ耳を手で覆い外界との情報をシャットアウトするエリシアさん。
そんなことは関係なくハトはドアをしきりにつついている。
「……私開けちゃうね?」
私は窓の方に移動しがらりと窓を開ける。
ハトはつつくのをやめるとつぶらな瞳で私を見上げている。
そんなハトに目を引かれていると同時に空の向こうから更に大量の白いハトが飛んでくる。
「わ」
ベランダに向かって飛んできたハトの群れを私は躱す。ハトはバサバサと部屋の中に飛び込んで、エリシアさんめがけて飛んでいく。
「ちょ、まっなにあいたたた、いたっ! なにかついばまれたんだけど私ちょっと! あいた! こら!」
「わ、ごめん! エリシアさん! わ、お願い、エリシアさんから離れて……わわっ!」
ハトをエリシアさんから引っぺがそうとするも、翼にはたかれ上手く掴めない。
ハトに群がられてんやわんやになっているエリシアさん、次第にハトたちがエリシアさんから離れ窓から飛び立ち空に帰っていく。
その後には羽だらけのエリシアさんとハトたちが持ってきたらしき封筒の数々が周りに落ちていた。
そして、エリシアさんが頭を思いっきり降ると羽が部屋の中に舞うのだった。
「ご、ごめん! エリシアさん……私……」
「……いいのよ。こんなことする方が悪いし……そもそも、こんなことをする奴は一人ぐらいしか思い当たらないし!」
バッとエリシアさんは頭の上に置いてある封筒を取る。
「あの女……!」
エリシアさんはビリビリと封筒を破り、中の便箋を開く。
「えぇと……? 誰からなの……?」
「もちろん、私にこんなことをしでかしてくれた奴よ。島に来るはずだった私の上司って言えばいいのかしら」
「なるほど……」
エリシアさんは数枚に分けられた手紙の内容を眺めていく。
「……なるほど……ってそんなこと書かれなくても……」
「……なんて書いてあったの?」
「島の調査内容とそれに関する留意しておくべき情報……と今までの島の調査報告書を同封しますだって……そこらへんに落ちてる封筒ね」
といって傍にある封筒をエリシアさんは拾う。
「そっか、ちょっと待ってね拾うから」
近場の落ちてる羽まみれの封筒をいくつかエリシアさんに渡す。
エリシアさんは中に入っている資料らしきものを開き見ていく。
「はぁ……まずは地区の霊脈の調査からね」
「が、頑張ってね、エリシアさん」
「えぇ……というかハルカゼにも手伝ってほしいのだけれど」
「わ、私? な、何を?」
いきなり私を指名されて私は驚く。
「別に単純よ、ちょっと島の交通網に慣れるまで付き添ってて欲しいの」
納得した。エリシアさんはハイテクな物は苦手と言っていたしいきなりは躓くことも多いのだろう。
それなら。
「うん、そういうことなら手伝うよ。学校が始まるまでかなり時間あるし」
「助かるわ……空を飛んでらくらく解決っていう訳にもいかないし」
そう言われて思い返すのは初めて会った時のこと。
「傘であの時は飛んできたんだよね」
「あれは元々軽い偵察のつもりだったのよ、不幸が重なってあんなことになってたけど」
「災難だったね……最初は声しか聞こえなかったからびっくりしたよ……あれもやっぱり?」
「魔術ね、姿隠しって呼ばれる魔術よ。基本的にはそういう空を飛んだりする時とか目立たないように同時に掛けるの」
「そうなんだ……。確かに飛んでるのがバレたらまずいよね……」
「えぇ魔力も使うし非常時用よ。……最近は赤外線探知とかいろいろあって姿隠しも楽じゃないし……よし、うだうだ言っててもも始まらないわ準備しましょう」
「うん、あ、でも服どうしよう……」
そうして私たちは支度をする。服はエリシアさんのものを借りることになった。
かなり値段の張りそうな服で、私は今日一日はドキドキしっぱなしになりそうだった。




