52.今日も、お義父さんは娘にメロメロです!
腕を離された途端、籠の中の鳥が開放されたように飛び出す、凜。
走ってこちらに駆け寄って、俺も走って駆けつける。
「凜!」
自分より小さな凜の体を、抱きしめる。
「……会いたかった、凜」
「……私も」
俺の背中に腕が伸びて、抱きしめ返された。
そのぬくもりが心地良い。鼻腔をくすぐる髪の匂い、背中に伸びる腕。全てが、嬉しかった。
「あんなこと言って、ごめん」
嫌われたくなかったし、どうせ俺をおいていくならば、早く置いていって忘れてほしかった。
自分の気持ちをはっきり言える自信なんてなかったし。
「あれは全部嘘だから、忘れてくれ。それから……ええっと」
告白――――、ぐっ……なんか急にドキドキしてきた。
さっきまでゼロ距離で抱きしめ合っていた体を、ぐいっと引き離した。
「りゅう?」
「……引いちゃったらごめん。おっさんでごめん。ていうか、義理とはいえお義父さんなのにな……えっと、だから……」
緊張して言い訳を並べていると、凜はふふっと笑った。
「何言っても引いたりしないから、ちゃんとはっきり言って。大丈夫、だいたい予想ついてるから」
「へ!?」
予想ついてる…って、何が!?
「……えっと、その……」
俺がうまくしゃべれないでいても、凜は動じず待ち続ける。
「や、八雲凜さん!」
「はい」
「――あなたのことが、好きです! 僕と付き合ってください!」
まるで学生みたいな告白の仕方。我ながら恥ずかしい。
反応が怖くて、目を瞑ってしまった。
「……」
あれ、無言!? なんでだ!?
目を開こうとしたその時。
「――――っむむ!?」
唇に柔らかい感触。両頬を支える手の平。
キsssssッ――――!!
「りりりりりりりりりりr……んッ!?」
「……ふふ、あはは、あはははははははっ!」
俺がテンパりまくっているというのに、凜は大笑い。
「――私も、八雲龍之介さんが好きです。付き合ってくれますか?」
「――――っ!」
思わぬ返答に、驚き声が出ない。
すると、むっとして凜が言う。
「……返事は?」
「え!? ええっと……」
まさか両思いだと思ってなくて、砕けるだろうなと思っていたから返事なんて考えてなかった。
「えっと、うーんっと……」
「――――」
視線が怖い!
こ、これから二人で幸せになろう??
俺も好きだよ(キメッ)……言ったか。
えっと……えっと……。
「よ、っよろしくおねがいします!!」
俺は元気良くそう言って、お辞儀し、握手を申し込む。
「――――、及第点」
しかしそれに対しては、その一言のみだった。
「まあ、いいけど。10年の恋にしては、ちょっと拍子抜けの返事だったかな」
なんてしれっと言い出す始末。
「……そのくらい許してあげなさい、凜。プロポーズに期待しなきゃ」
「ひ、柊さん」
一部始終を見て、最後に俺から凜を奪う気か……!?
今まで全く口を挟まなかった、柊さん。今度こそ、何をしてくるかわからない。
だが、俺の予想とは打って変わって。
柊さんは俺に向かってお辞儀した。帽子を脱いで深々と、お辞儀をした。
「娘を、よろしくお願いします。色々ご迷惑をおかけしました。アメリカへは、一人で行かせていただきます」
「凜、またいつか」
そう言って、柊さんはスーツケースを引き、ゲートを潜る。
「ママ!」
柊さんは、振り返る。
「ありがとう」
柊さんは、満面の笑みを見せ去っていった。
「おーい!」
遠くから声が聞こえた。優斗くんの声だ。
「突然消えるから、みんな探したぞ!」
「優斗……優香にアナスタスやも。みんな、私のために?」
「当たり前だ! 凜がいなくなるなんて、信じられないからな! 追っかけるに決まってるだろ! お……オト―サンが行かないと言っても、俺一人で行っていたくらいだ!」
――やはり俺のことは敬えないらしい。
「お……」
ズボンのポケットに入れていたスマホが、小さく振動した。スマホを見ると、ちひろちゃんからメッセージが……長かったらしく、省略されている。
「やばい……午後出勤だったのに、もう12時になる……」
この距離だと、完璧に遅刻する。帰りもアナスタシヤちゃんのご厄介になるのは、申し訳ないし……。
ちひろちゃんのメッセージを開くと。
『どうせ、うまくいったんでしょ〜』
と来ていた。
「……っげ」
さすが後輩、よくわかってる。
『先輩のためを思って、今日一日休みにしてあげました! ついでに私も』
『ええ!? どうやって!? ちゃんと上の人には言ってきた!?』
『言ってないです! なんか適当にパソコンいじくったら、なんとか! 最近、ハッカーの勉強していたのでその知識が役立ちました!』
「……はあ、まあいいか。今日くらい」
『今日うちでパーティーするから、ちひろちゃんも来てよ。待ってるから』
『やったぁぁぁぁぁぁあああああ! 飲むぞ〜! じゃんじゃか飲んじゃうぞ〜!!』
その日の夜。
空港からゆっくり帰ってきて、そのままみんなでパーティーの準備をした。
やってきたちひろちゃんは、案の定……。
「しゃらくせえ! 飲んでますか、八雲さん〜」
しっかり出来上がっていた。
凜が戻ってきた記念会としてパーティーを楽しみつつ、久々にお酒を飲みつつ――みんなで楽しい時間を過ごす。相変わらず優斗くんは僕に敵意むき出しで、優香ちゃんとアナスタシヤちゃんは仲よさげ。
時間があっという間に過ぎて、そして、一人また一人、帰っていく中。
「帰りませんよ、八雲さん! どうせ私が帰ったら、二人でいちゃいちゃらぶらぶするんでしょ〜!? そんなの、私が帰ってどうするってんです! しゃらくさいですよ〜っ、八雲さん!」
「もう何言ってんのか全然わかんないよ、ちひろちゃん。帰った、帰った」
無理やり玄関へ放りだし、帰らせた。
「さてと……ようやくゆっくりできるね」
一息つく、俺。
「ごめん、凜。帰ってきてそうそう、パーティーなんか開いちゃって。みんなにいっぱいお世話になったから、どうにかして返したく、て」
後ろから抱きつかれ、びっくりする。
「全然だいじょうぶ。そういうところも、好きだから」
「――――ッ!」
告白した瞬間に、ぐっと距離が近くなったような気がする。
「……凜」
「ねえ……しちゃう?」
は……はい?
「しちゃうとは……どういう……」
「いちゃいちゃ、らぶらぶ?」
なんで疑問形!! 破廉恥な、想像しかできない!!
そんな突然にいいのか!? 一日目だぞ!?
そんなことを思いつつも、凜の様々な部分が体に密着し、当たり……。
やっちゃうか!?
やっちゃわないのか!?
どうする……どうする、八雲龍之介ッ!
「ねえ……りゅう?」
甘い声で囁かれ――――俺の脳は破裂した。
「……だ」
「だ?」
「やっぱりだめだ!! こんなことッ!!!」
凜の体を突っぱねて、俺は走り出す。
「……お義父さんなのに、お義父さんなのに……お義父さんなのに……!」
部屋の隅っこに座り込み、念ずる。
「……娘が、娘なのに、俺はこんなに……ああ! うわあああああ!!」
「はあ――――まだまだ先は長いね」
凜はそう、呟いた。
今日も、娘はお義父さんにメロメロです! が、お義父さんは娘よりももっともっと!
娘にメロメロでしたッ!!!
ラストシーンでなんじゃこりゃ、ってなった方多数いると思われます。すみません!細かい後書きは、明日投稿される活動報告にて!次回作は、なんと……スポ根。なぜ?詳しくは、ウェブで。更に言うならば、明日投稿される活動報告で!
この作品が良いと思った方……ご慈悲をお与えください! ぜひ!!!




