45. 娘とママにも、大事な思い出があるんです!
「わ〜っ!」
と大げさな反応で、驚く柊さん。
「……すごい」
俺はそれほど驚きはせず、ただその景色を見上げた。
ビルが立ち並ぶ街に、大きな道。その遠くまで伸びた道沿いに、電飾のついた木々立っている。
空を埋め尽くすした木々が、輝き、とても綺麗だ。
こんなものは見たことがなかった。
「人がいっぱいいますね……」
「東京なんて、そんなものです!」
「今日からなんですよ? 運が良いですよね私たち! 丸の内イルミネーションって言うんですって」
「へえ……」
イルミネーション、なんて久しく見ていなかった。
「龍之介さんっ!」
彼女が俺の名前を呼ぶ。
「もっと、もっとこっちに来てください!」
そう言って、俺の手を引っ張った。
「トナカイや、サンタさんがいますよ!」
きらきら光る中で、ふわふわのマフラーとコートを羽織って纏っている。
その姿は、まさに恋人のようだった。
ただ、あんまりにも引っ張る力が強いから。
「ちょ、ちょっと!?」
俺は転びそうになる。
「あら? 大丈夫ですか? そんなに強く引っ張ったつもりはなかったんですが……」
「強かったですよ! びっくりしたじゃないですか!」
「引っ張ったのが、悪かったんですか?」
「そうです!!」
「――なら、腕を組んで歩きましょう?」
「はあ!?」
「……どうせ、今日だけなんですから」
彼女のなかでは、すでに諦めがついていた――らしい。
「あっ、あっち見てください! クリスマスマーケットですよ!」
歩いていくと、屋台が立ち並ぶエリアが見えてきた。しゃらんしゃらんと、綺麗な音が聞こえてきて、小さなツリーがたくさん売られていた。
ツリーを見た途端、柊さんはその店に走っていきわくわくしながらそれを眺めた。
俺という存在よりも、ツリーが大切だったらしい。
すぐに戻ってくるかな、と思っていたが五分、十分待っても、ツリーを眺めたままだった。
俺の方から、彼女に近寄って。
「ツリー、好きなんですか?」
「え?」
自分では、気づいていないようだ。
「だって、ずっと見てるから」
「……ああ、そんなつもりはなかったんですが……やっぱり思い入れがあるんですかね……」
「それって……」
「龍之介さん、もっと大きなツリーが見れるところに行きたいです。調べてくれませんか?」
「――はいはい、わかりましたよ」
まだ口出しするなって、ことか。クリスマスに関係することなんて――俺達にとっては一つしかない。
「東京駅の方に、大きなツリーがあるみたいですよ。あんまりこういう所には慣れていないので、俺のナビだと迷うと思うんですけど、それでも良ければ」
「もちろんです! 案内して下さい!」
――俺のナビは本当に役立たずで徒歩三分の距離を、三十分かけて到着した。
「……すみません。思ってた以上に時間かかりました」
「いいんです。これも旅の醍醐味ってものでしょう? それに……」
「見事な、クリスマスツリーですね」
高い天井の中に、設置された大きなツリー。
青白い電飾で飾られ、揺らめいて光る。ツリーに巻かれたリボンが、ぴかぴか光る。
間違いなく、今までで最大級のクリスマスツリーだった。
「……なんだか思い出す」
柊さんが、独り言のように呟いた。
「昔、家から一番近い小さなデパートで買い物をしたとき、凜と一緒にクリスマスツリーを見ました。これぐらいの時期だった」
「……へえ」
「……凜の冬靴を、買い忘れていたんです。もう何年も買ってあげていなかった。冬靴って頑丈なはずなのにつま先に穴が開いてて……ふふ、あれはひどかった」
「あの頃は朝から晩まで働き詰めで、凜と一緒に出掛けたのはあれぐらいしかなかった。凜は、覚えているのかしら――いいえ、きっと覚えていないでしょうね」
「……覚えてましたよ」
「――本当、ですか?」
「……昔、話してくれましたよ。一回だけでしたけど。あなたが言う、デパートに凜と一緒に行ったときに」
みなさんこんばんは!屁で夢をこく!夏神ジンでございます!!皆さん元気ですか!?もうすぐクリスマスですね!なぜか、時期が被りそうでぎりぎり被らない本作です!
ぜひぜひブックマーク、コメント、よろしくお願いします!!




