36.ホーイおじさんは、娘の華麗なる攻撃により撃退しました!!
『ワタクシ、アナスタシヤの婚約者ネ~』
「――――え」
『ホントのことネ~』
「……は、はあ」
アナスタシヤの方を見て確認する。
こくり、と頷いているから嘘ではないらしい。
『お金持ちネ~』
「――そうですか」
『一応これでも、親公認ネ~』
「――――」
ちょっと話についていけなくなってきたかもしれない、凜。
「それで、何の御用で」
『今日、アナスタシヤ逃げたネ~。お見合いだったネ~』
「ああ……なるほど」
だから逃げていたのか。耳からスマホを離して、凜はアナスタシヤだけに言う。
「優香が好きなので、結婚できませんって言えばいいじゃん」
「……むりアル! そいつ、私のこと監禁しようとした……強い、強い! ロシアナンバーワンプロレスラーっ!」
「……いやいや」
さすがに、嘘では? それが顔に出ていたのか、アナスタシヤは必死になって言う。
「……一週間もずっと、追いかけてたアル! 学校にも来たアル! ずっと怖かったアル!」
「――――優香がアナスタシヤにつきっきりだったのも、それ関係してる?」
うんうんっと頭をボンバーする。
「凜……電話切ってっ、凜、凜……っ!」
潤んだ瞳で訴えかける。ロシア系美少女の、ラブラブビーム。
そんなものは、はなから凜には効かないが。
電話を切れ、と言うがその程度で引き下がるだろうか。また電話をかけてきたり、ストーカーをされると、面倒事がこっちに……、いやなんでもない。
「ええっと……」
なんて言えば、引き下がってくれるんだろ……。
『ホーイ?』
だからなんなの、その「ホーイ」って。
「だから、えっと……」
『ホーイ、ホーイ!』
「――あの、本人嫌がってますよね」
『……そんなことないネ~! 愛し合ってるネ~! 運命のつがいダネ~!』
「何か証拠出して下さいよ」
『うーん電話じゃ何も出せないネ~』
「本人、貴方のことストーカーって言ってますけど」
『……そんなことないネ~』
「……語彙無くなってますけど」
『――あはははァ!』
「あの、もういいですか」
『ホーイ?』
「――――ロリコンは気持ち悪いから切っていいですかって、聞いてんだよ。ホーイ野郎」
学校、いや日本一可愛い女子高生の、ドスの効いた声。
『――――うるさいネ』ブチッ。
相手から切られた。
「り……」
「りぃぃぃぃぃぃんっ!」
涙を流し、鼻水を凜のニーハイに擦り付ける、アナスタシヤ。
一体全体、本当に。
「どこのギャグ漫画なんだろう」
凜は、夕陽が沈んでいくのを眺めながらそうつぶやいた。
「ユーカ~、一緒に帰るアル!」
いつもの放課後、優香の腕に胸を当て誘惑する、アナスタシヤ。
凜は、優香の後ろの席に座ってスクバに荷物を詰めていた。
その様子を見た、アナスタシヤ。
「凜も!」
「凜も一緒に帰るアル!」
「へ?」
何か微妙に短くなってしまいましたが、良いところで切ると2500字ぐらいまで行きそうだったので切りました!予想通り、「ホーイ」は消えました。突然のアナスタシヤ登場によるギャグ展開もこれで落ち着くんじゃないかなと思います。どうもすみませんでした!
大丈夫……こっから先は、えっちとシリアスしかないですぜ。では、これから先も完結までよろしくお願いします!!




