35. 娘は、「ホーイ」おじさんと対峙します!
「――恋に、落ちたアル」
一通り改装を終えたアナスタシヤが言う。
「柔道着の間から見える微かな胸、滴る汗、今よりちょっと長めのボブ! そしてなにより強い~っ!」
思わずアナスタシヤは、スタンディングオベーションをした。
「ユーカは、最高で最強アル!」
ぱちぱちぱち……と、凜が拍手。
「だからこそ――凜は許せないアル!」
「はい?」
初めて会った時のように、指を指すアナスタシヤ。
「凜がどんなにいい奴でも、ユーカは渡さないアル!」
その、真剣な眼差し。
「……すごいね」
凜が思わずつぶやく。
「?」
「好きな人を、好きって言えるの」
それを聞くと、なおのこと「はあ?」という顔をする、アナスタシヤ。
「当たり前アル! 好きな人を好きって言って何が悪いアル!」
「……いやいや、簡単なことじゃないでしょ。好きって言って、もし拒絶されたらどうするの」
「拒絶なんてさせないアル! 好きなら、その思いをそのままになんかしないアル! 一直線に愛を伝えるだけ!」
柔道の構えをアナスタシヤは示す。
「これまでも、これからも――――ずっとずっと、ユーカだけが好きだから!」
にこっと笑って、そう言う。
柔道、拳法、レスリング――――、一直線にぶつかって、自分を伝えるみたく。
「アナスタシヤは、ユーカに好きって言い続けてきたんだね」
「――――? だから言ってるアル! それが当たり前アル!」
「そっか……」
「私も頑張って、思いを伝えるよ」
できるか、わかんないけど。
「そうはさせないアル! ユーカに告白だなんて、絶対させないアル!」
「大丈夫、私が好きなの優香じゃないから」
「へ?」
いい感じに話がまとまった所で。
「じゃ、そろそろお家に帰ってもらおうか」
と、公衆電話へ向かう凜。
「だめ――っ!」
アナスタシヤは、凜の足に引っ付いて歩かせない。
「それだけは、絶対、だめ!」
「はあ、なんでそんなに拒否するのかよくわかんないんだけど――――ん?」
凜はそこで、音に気付いた。電話の音。
「は……はわわ」
しかし凜のスマホは先ほどのアナスタシヤの攻撃により、どこかへ行ってしまった。凜のスマホが鳴っているわけではない。
「アナスタシヤの電話……鳴ってる?」
「っひ、なってない、なってない……アル!」
アナスタシヤは今までにないほど、脅えていた。
凜の足にしがみついて離れない、アナスタシヤ。
ベンチに取り残された鞄――その中には、アナスタシヤのスマホが入っている。
「――チャンス」
凜はアナスタシヤの鞄からスマホを取り出すと、発信者の名前も確認せずに、出た。
「はい、もしもし」
『ホーイ』
はい?
出たのは、声からして男性。誰?
一瞬、やっぱりアナスタシヤに変わろうかと思ったが彼女は電話に出れそうにない。
がたがた震えてしまって、可哀そうな感じになっている。
「あの……誰ですか」
凜が問うと。
『ソチラコソ! ドチラサマデスカ!』
ごもっとも……しかし、一言目が「ホーイ」の方がやばいと思う。
そもそも、何語?
「ええっと……アナスタシヤの友達で……」
『ホーイ、ホーイ』
頷くように、言う。何だか少しムカついた凜は、怒りを声に含ませながら聞く。
「あの、あなたは?」
『ワタクシ、アナスタシヤの婚約者ネ~』
「――――え?」
突然の婚約者の登場。絶えぬギャグ展開。これについていけるのは、きっと一握りだと思います。大丈夫、このキャラはモブだ!すぐ消えます。多分明日になったら消えてます。このおじさんもね、儚い存在なんですよ!はい皆さん、ホーイ。
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