31.娘は、休日に転校生に遭いました!!
『りぃぃぃぃぃぃぃんッ!!!』
音割れした声が、耳元から聞こえてきた。凜の耳がキーンとする。
優香は相当にあせっているようだった。息を切らしながら、走っている音。
「……ほんとに、どうしたの?」
『ナーシャが――――アナスタシヤがいなくなっちゃったのッ!!』
「――――え」
それが、私に何の関係が。ていうか、久々に連絡したと思ったら、それ?
というのが、正直な凜の感想だった。
あんなに強いんだし、いなくなっても大丈夫そうな感じだが。
優しい親友、凜。というイメージからは程遠いコメントかもしれないが。凜としてはその程度だった。
『休日に、ほんとごめんなんだけど、私と一緒に探してくんない?』
「……私、眠いからパス」
『それこそパスパスの、無敵バリアだから!』
今日の優香は、少しも引かない。
『あと、探してくんないんだったら、絶交だかんね!』
「え……」
何故……。
アナスタシヤを探すのは、めんどくさいし嫌だった。自分から、友人を奪い買収した、張本人。いわば、敵。というか、ラスボス。
しかし、絶交は絶対に嫌だ。
「……わかったよ。探す」
『ありがとう~っ!! やっぱり持つべきものは、凜だね!! 今地図送るから、そのエリアを探してくれる?』
「……うん」
半ばあきらめて、凜は頷いた。
冷蔵庫から大事にとっていた二つのプリンのうち一つを手に取って、食べる。
決戦の前に、ご褒美を……。
ぺろりとプリンを間食し、着替え、靴を履いた。
凜は、暗い面持ちで。
「りゅう、ちょっと出かけてくるね」
そう言って、家を出た。
「あ、ああ。行ってらっしゃい……?」
優香に指示されたエリア。
栄えている町エリアではなく、坂の多い住宅街。
優香は人通りが多く、よくアナスタシヤが行くエリアの方を探索しているらしい。
優香曰く『多分そっちの方には、行ってないと思うから会わないと思うから!』。
そして。
『このところ、話せなくてごめん! それには、理由があるから許して!』
とのこと。
「……理由があれば、許してくれるなんて……そんな甘い考え方……」
むっ、と頬を膨らませる。
休日としては、まだまだ朝。ここはすっごい都会というわけではないから、まだこの時間だと老人しかいない。 近くにあるスーパーには、おばさんやおじさんが大きな段ボールに買った物を入れて車まで運んでいたり、また朝から公園でゲームをしている子供たちがいたり。
「すごい、にぎやか」
秋、この寒い時間帯にあまり出かけない凜としては、どれも珍しい光景だった。
「あ、猫……」
ブロック塀の上に寝転がる、黒猫。
だらーんと、腹を剥き出して気持ちよさそうに眠っている。ここまで油断している猫も、なかなか見ない。
「野良猫なんて、久しぶりに見たかも」
めっきり猫を見なくなっていた凜は、久々の猫に癒される。
「……寝てるなら、気づかれないかも」
そおっと、手を伸ばした。
その時。
「「 ! 」」
二つの手が重なりかける。
「あ」
相手を見れば、ブロック塀の上にしゃがむ――――アナスタシヤ。
「っし」
アナスタシヤが言う。
「し?」
「しまったぁぁぁぁぁぁぁああああああッ!」
と言って、アナスタシヤはブロック塀の上を走っていく。
「待っ……て」
足――――速っ!
もうすでに、アナスタシヤの姿は見えない。向かった方向は、この坂エリアの先――――山である。
みなさまこんばんは!!夏神ジンが、やってきましたよ~っ!!今日も投稿失礼いたします!!ここでポイント!優香がたびたびアナスタシヤのことを「ナーシャ」と呼んでいるのは、それが愛称だから!仲がいいことを示そうと考えたものです!多分もっと有名な作品……露紙ででろっとした作品(すみません!著作権を考慮した結果です)みたいなものでも、見られていたと思います!なんかこの最後に小さい「ヤ」が入るのがめちゃくちゃ可愛いですよね……!
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