28.クラスメイト達は、突然のギャグ展開についていけません!(2)
転校生は胸を持ち手にして凜の体を宙へ投げた。
「え、え」
「えええええええええええっ!?」
凜の体が宙を飛ぶ。くるくると、椅子に座った姿勢のまま回って―――着地。
「――――っし、何とかキャッチ!」
「優香……」
いつの間にやら、凜は優香にお姫様抱っこされていた。胸はさっと、優香のカーディガンで隠す。
凜はその気遣い、かっこよさに、思わずきゅんとした。
「危なかった……キャッチできなかったら、どうしようかと思ったよ……」
優香は安心して、一息ついた。
実はこの女――――ものすごく運動神経がいい。
略歴としては、小学校に入る前までは柔道を、小学校に入ってからはサッカー少年団。
中学では、バレーボール部と硬式テニス部をなんと兼部。
普通に考えれば、バレーボール部とテニス部を兼部することなど不可能。
しかし、実際は顧問に気に入られ、キャプテン・部長を務め、その上、大会優勝は当たり前。
全道大会でも、必ずいい成績を残す。
(尚、柔道は親が経営している柔道場にて、習っていた。今でも、昔と変わらない実力を持っているとか。)
これにはあの龍之介も、凜のガードマン役に納得。
「……優香が、運動神経良くてよかった。じゃなきゃ、私今頃死んでたよ」
凜が言う。
「こっちこそ凜を助けられたなら、いろいろやってて良かったよ。辛い練習も、いい思い出になりそう」
きゃぴきゃぴ、うふふ、と話しているその陰で、体中の血管を浮き上がらせている人物が一人いる。
「ッムキ――――――――ッ!」
「やっぱりユーカは、そのデカπ女が良いアルね! そんなの、球の面積と体積の式で、ぶち犯してやるアルッ!」
と、謎の宣言をされ、さらに宣言は続く。
「八雲 凜! お前の名前は覚えたアル! 絶対に、絶対に、ユーカは渡さないアル!」
「――――ふうん」
「あ、凜」
お姫様抱っこを自分から降りて、凜はその転校生の前に立った。
「もう大丈夫だから」
凜はただ一言、優香に言うと。
「――――アナスタシヤ・ヴェクセリベルク……さんだっけ?」
「……ふん!」
大きな胸と、小さな胸がぶつかり合い、合体する。
「私、そういうのどうでもいいから」
「はあ?」
「優香が欲しいなら、奪えばいいじゃん」
「――勝手にしなよ」
興味なさそうに、凜は言う。
「―――ッム」
「ッムキ―――――――ッ!!」
顔を真っ赤にして、まるで機関車のように煙を上げる転校生、アナスタシヤ。
「なんなんアル!? そのやる気のない覇気のない、言い方は! 許せないアル!」
「私が圧倒的な勝利で優香をゲットして、泣きつかせて見せるアル!」
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